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ボーエン病

ボーエン病は表皮内有棘細胞癌です。
Dr. John T. Bowenという米国人医師にちなんで命名された疾患です。
中年以降、主に60歳以上の男女に見られます。
表皮全層に異型細胞が認められます。

症状

境界明瞭な鱗屑を伴う紅斑(0.5cm~数cm程度)が様々な部位で見られます。その紅斑が数ヶ月から数年以上続きます。 欧米では紫外線による影響で露出部に出ることが多いのですが、日本ではそれほど露出部に集中しているわけではありません。 陰部に症状が見られることもあります。
男性の陰茎亀頭部にできたものはケイラー紅色肥厚症と呼ぶこともあります。ケイラー紅色肥厚症は陰茎亀頭部に紅斑ができます。かさぶた、潰瘍を伴うことあれば、表面がスムーズなこともあります。

原因

紫外線

欧米では紫外線が最も大きな原因です。日本人では欧米ほどは紫外線は効いていないようです。

慢性ヒ素中毒

例えばかつてヒ素を使う工場で働いていた、またはヒ素を多く含む井戸水を飲んでいたなどが原因となります。またヒ素が薬や農薬に含まれていたこともありました。
ヒ素に接触後、10年以上経過してボーエン病が発症することが多いです。ヒ素及びそれの代謝による酸化物質がDNAを損傷するためと言われています。

免疫抑制状態

AIDSを発症している、免疫抑制剤を長期で内服している、といった方に発症しやすいことがわかっています。

HPVウイルス

ボーエン様丘疹症の所で解説したとおり、ある種のHPVウイルス(ヒトパピローマウイルス)の感染でボーエン病を発症しやすいことがわかっております。有名なのはボーエン様丘疹症を引き起こすHPV16ですが、その他にもHPV 2, 18, 31,
33, 54, 56, 61, 62, 73なども関与している可能性があります。

 X線などの放射線

現在では放射線治療後の慢性放射線皮膚炎にボーエン病を発症することがしばしば報告さています。

 外傷

外傷がきっかけとなりボーエン病を発症することがあります。特に傷がジュクジュクして長く治らない、という場合に多く見られます。

 その他

ケロイド、広範囲の瘢痕、慢性炎症のある皮膚からボーエン病が出現することがあります。 ちなみに内臓がんが原因という説があり、まだその記載が見られるものもありますが、現在では否定されています。

診断

比較的境界明瞭な楕円形、もしくはいびつな形の紅斑が半年~数年以上続きます。
湿疹などと間違えられることがよくありますが、かゆみがないことやステロイドに反応しない(わずかに反応するので注意が必要)ことがポイントとなります。

確定診断は生検をとって少し皮膚を切り取って病理検査を行います。
表皮層の全層に異型細胞が見られますが、真皮層にまでは及んでいません。

ダーモスコピー(虫眼鏡を高性能にしたものと思うとイメージしやすいです)による診断方法もありますが、やや専門的になりますので、ここでは割愛させていただきます。

治療法

外科的切除、レーザーによる焼灼術、冷凍凝固術、冷凍凝固術、5-FU、イミキモドクリームなどがあります。

外科的切除

日本では伝統的に手術療法が優先されます。最も確実で、病理検査を行えるからです。
ボーエン病は進展すると有棘細胞癌という非常により危険な病気になります。皮膚生検を行い診断を行っても、その他の部位が本当にボーエン病で止まっているのかわかりません。それゆえ、病変をすべて取り切り、病変をすべて病理検査を行うというのは合理的な判断である、と思われます。
実際典型的なボーエン病と思われる病変の3~5%は真皮まで病変が到達しており、ケイラー紅色肥厚症も10%ほどが真皮まで病変が到達しているため手術以外の方法では治療できない、ということになります。
上記の理由から、当院でも手術療法を優先させていただきます。
ボーエン病を肉眼的に見て何mm離して切除するか、というのは大きな問題となる点です。一般的には1~4mm離して切除する、とされています。再発率がかなり高いこと(数%~19,4%)、肉眼的な病変よりも実際には病変が大きいということがしばしばあり、4mm離して切除するのが妥当です。

冷凍凝固術

液体窒素による冷凍凝固術です。これを数週間開けて1~3回程度行います。
ここでよく勘違いされていることが、冷凍凝固術の意味で、日本では2、3秒ほど液体窒素を押し当てる方法がとられているのですが、欧米では20~30秒ほど液体窒素を押し当てる方法で治療がされているということです。
20~30秒液体窒素を押し付けると完全に表皮は剥がれ、場合によっては真皮まで損傷され、潰瘍になるのは間違いありません。傷跡が残ることも十分考えれます。傷跡が治るまでに平均46日間かかったという報告もあります。
これらのことを考えると、医者にとっては簡単でも、患者様にとってはそれほど簡単な治療ととはいえず、むしろかなり厳しい治療と言えるでしょう。

Photo dynamic therapy(PDT)

Photo dynamic therapy、すなわち光線力学療法は、腫瘍に取り込まれやすい光感受性物質を摂取してから特定の波長を持つ光を当て、皮膚表面の異型細胞を死滅させる治療です。冷凍凝固術や5-FUの治療と比べて、効果もよく副作用も少なく良い治療なので、欧米では第一選択肢の一つとされています。日本では保険適応がなく行うことができません。

5-FU軟膏

5-FU軟膏(フルオロウラシル軟膏)による治療は、欧米ではボーエン病によく用いられ治療法です。1日1、2回、病変部に塗布し、3~4週行います。必要であればそれを繰り返します。1クールの治療治る可能性は48-83%程度で幅があります。恐らく、つけ方による大きな差が出るのでしょうが、それが問題点といえば問題点かと思います。
傷跡が残るリスクがかなりあり、効果の不安定さと相まって、あまり日本ではおこなれていないと思います。

イミキモド

冷凍凝固術や5-FU軟膏に比べて遜色ないのですが、日本では保険適応がないので、イミキモドを使った治療は行うことができません。

レーザー治療

まだ十分なデータは蓄積されておらず、現状では強くは勧めにくい治療法です。
毛穴のあたりの深い病変を取りきれない可能性があるようです。

上記治療の組み合わせで治療を行う場合もあります。

ボーエン病の予後

ボーエン病そのもので生命予後に影響することはありませんが、放置した場合、表皮にとどまっているがん細胞が下層の真皮に浸潤し、有棘細胞癌となる可能性は十分にあります。
生命予後に影響のないボーエン病のうちに確実に取りきっておくことが重要です。
ボーエン病は十分に余裕(サージカルマージン)を確保して切除しても5%程度の再発がありますので、5年程度の定期的なフォローが必要となります。
その他の治療を行った場合はなおさら定期的なフォローが望まれます。

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