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化膿性汗腺炎の病因

化膿性汗腺炎はかつて膿皮症と呼ばれていた疾患です。化膿性汗腺炎の病因は、毛孔の閉塞、毛包破裂、およびその後の変化につながる二次的な炎症です。化膿性汗腺炎は、遺伝的、物理的刺激、ホルモン、およびその他の影響を受けます。いくつかの仮説があり、中にはまだ証明されていないものありますが、以下のような順序で病状が進行して行くと考えられています。化膿性汗腺炎の患者は、皮脂腺と毛孔の管の接合部で弱い構造支持の領域で最初にトラブルが起こると考えられています。ホルモンによる刺激で管のケラチノサイトの生産が過剰に促進されると、ダクト内で表皮層が分厚くなり、毛包が閉塞するようになります。この領域に圧力がかけられ、ダクトの壁が破れ、横に破裂し、内容物が真皮層深くにばら撒かれます。
毛包の内容物が皮内、皮下に漏れると、自然免疫系を刺激し、炎症が起こります。治癒過程は、毛包ユニットの正常な解剖学を修復しようとします。修復が失敗した場合、壊れた毛包ユニットは3つの反応を引き起こします。

・最初の反応は、自然免疫系によって引き起こされる炎症反応です。これは 化膿(かのう)および組織の破壊を引き起こします。
 それは異物の反応および広汎な瘢痕に繋がります。
・第二に、破壊を生き残った幹細胞により瘻孔(トンネル状の構造物)が作られ、皮肉なことに瘻孔があるせいでさらに感染と炎
 症が繰り返されます。
・第三に、ほとんどの場合、炎症細胞と上述の化膿した分子を包埋(ほうまい)したゲル(増殖性ゼラチン状の塊)が生成されま
 す。

増悪を促進するホルモンが増えると、第三で作られた増殖性ゼラチン状の塊があるせいで瘻孔および炎症を永続させ、悪循環のようにこの塊の容積を増加させます。真皮と皮下の炎症は、この物質が除去されるまで落ち着くことはありません。
通常の病変のごく初期の病変は、全く瘢痕を残すことなく完治する可能性があります。化膿性汗腺炎は無秩序に分布する小さく、赤い、硬結性の丘疹、膿疱、または結節として発生します。数週間または数ヶ月に渡り軽度~中等度の痛みに漠然としたかゆみを引き起こします。急性、重度の、深刻な症状は、より広範囲に及ぶ、深い、痛みを伴う病変を示し、活動を制限することがあります。これらは一般的に間擦(かんさつ)部であり、腋窩(えきか)、鼠径部(そけいぶ)、内股(うちまた)、肛門と会陰領域、乳房(ちぶさ)と乳房領域、臀部(でんぶ)、恥骨、陰嚢(いんのう)、外陰部、胸部、頭皮、および耳介後部領域を含みます。女性は脚の付け根、腋窩、乳房の下に発症しやすく、男性は腋窩、鼠径部、肛門領域に発症しやすいです。

結節は、排膿され、痛みが落ち着くまでに7から15日程度かかります。患者様は、ある領域(例えば鼠径部)のアクティブな丘疹、結節、および排膿される瘻孔を提示し、別の時期には他の場所(胸やお尻の周り)にも丘疹、膿疱を提示されます。これらの病変が行き来します。
やや重症化すると、これらの症状が持続的に続くようになります。浸出液が続く瘻孔およびゲル用の増殖病変が皮下に作られ、横方向へ広がります。時に臭気のある、漿液性もしくは化膿したもの、時に血膿が排出されます。そうなると更なる慢性の瘻孔の形成につながる可能性があります。
長く続く潰瘍、赤色肉芽組織が、瘻孔開口部を囲むことがあります。治癒した後も、肥厚性瘢痕と、密なロープのような線維質の組織が作られるようになります。瘻孔からは漿液性の液体を慢性的に排出され、時に炎症を起こし腫れ、排膿し、痛みを伴う非常に炎症の強い複雑な構造物となります。
さらに時間が経つと、異常治癒が見られ、小さな窪み、瘢痕、痛みを伴わない嚢胞、時に肥大し、線維に囲まれたが出来上がります。厚いロープのような細長い帯状の構造物が皮下に認められることもあります。これらは、拘縮、リンパ管閉塞、リンパ管拡張、リンパ浮腫をもたらします。(注:日本人ではここまで悪化することは少ない)。

臨床経過

発症の平均年齢は22.1才です。症状は約19年続き、妊娠と授乳期は完全に又は部分的に症状が消失するが、その後はまた不安定になります。化膿性汗腺炎の多くは、良性、軽度、慢性的だが断続的に痛みを伴う疾患であり、急性増悪、月経前の急性増悪、閉経後の消散、数週間の寛解、または連続/断続的な急性増悪が見られます。結節、瘻孔、および傷痕の硬い瘢痕、臭い分泌物、痛み、萎縮、拘縮が混ざった病変を形成します。新しい皮下の痛みを伴う結節は、10~30日間続きます。日常の運動に大なり小なり支障をきたし、マイナーな痛みから痛みなしに歩行や座ることができないという状態にもなり得ます。排膿の臭気は顕著であり、おむつが必要となることがあります。これは社会的な引きこもり、うつおよび生活の機能不全を引き起こすリスクがあります。

化膿性汗腺炎はハーレーの臨床ステージングを使用して分類することができます。

ハーレーのステージ

Revuzらは、68.2%の患者がハーレーのステージI、27.6%がハーレーのステージ II、そして3.9%がハーレーのステージ IIIであると記載しています。
ハーレーのステージ分類

  • 1.ステージ I-一つもしくは数個の膿瘍形成、瘻孔なし、瘢痕化
  • 2.ステージ II-複数の再発性膿瘍との瘻孔と瘢痕化
  • 3.ステージ III-広範囲におよぶ膿瘍形成が瘻孔にて交通している状態

    罹患率・生活の質

    化膿性汗腺炎(膿皮症)という疾患名を聞いたことがないかたも多いと思いますが、可能性汗腺炎の患者様は、患者の身体的、社会的、経済的生活に非常に悪影響を及ぼし、(欧米では)蕁麻疹(じんましん)、神経線維腫症、乾癬(かんせん)、重度のアトピー性皮膚炎、軽度から中等度の乾癬、または脱毛症よりも高い罹患率があります。日本での罹患率は欧米よりは高くないかもしれませんが、膨大な患者さまがいることは間違いないです。日本ではニキビ、おでき、せつ、よう、粉瘤などと誤診されていることがほとんどです。多くは社会的に隔離されるか、孤立します。これは痛み、悪臭の排出、性器の発疹、誤診による不適当な医療、多数の損傷、長く連続的な持続期間および臀部の痛みにより座れないことの関与によります。化膿性汗腺炎の患者、特に女性は、そのせいで年間あたり平均2〜7日、仕事を休まざるを得ないという報告もあります。

    関連疾患

    化膿性汗腺炎は、重度のにきび(にきび性)、蜂巣炎、および炎症性粉瘤、毛巣洞に関連付けられています。慢性的な炎症は、SAPHO(滑膜炎、にきび、膿疱症、および骨化症、骨炎の症候群)を引き起こす可能性があります。潰瘍性大腸炎とクローン病も化膿性汗腺炎と関連づけられています。クローン病は、重症の化膿性汗腺炎の外観と似て、肛門直腸瘻、その周囲に膿瘍を形成します。
    化膿性汗腺炎は他にも多数の疾患と関連があります。化膿性汗腺炎は、炎症性腸疾患、脊椎関節症、上皮系腫瘍、膿疱症とも関連付けられています。炎症性腸疾患と脊椎関節症は、最も頻繁に関連している、合併していると報告されており、共有病因が何かあるのではないか、との疑いを提起しました。実はその共通病因は腫瘍壊死因子-α(TNF-α)で、実際にTNF-α阻害剤にていずれの疾患も治療する事ができます。

    化膿性汗腺炎の患者は非メラノーマ系の皮膚癌になる可能性が、そうでない人と比べ50%上昇する事がわかっています。また、化膿性汗腺炎の患者様は口腔粘膜の癌、肝癌を発症する可能性が高い事が分かっていますが、化膿性汗腺炎そのものというよりタバコやお酒の影響でしょう。

    その他、HSは壊疽性膿皮症との関連を示し、サイトカイン不全を含む病因を共有することが示されています。

    合併症

    上記通り化膿性汗腺炎と痔瘻と肛門直腸瘻と関節症などは関連がある事がわかっています。化膿性汗腺炎により発症したリンパ浮腫がリンパ管拡張症までに進行し得ます。蜂巣炎の繰り返しはまれであり、敗血症は特にまれであり、骨髄炎は例外的です。稀に大規模な性器浮腫、代謝合併症、貧血、低タンパク血、アミロイドーシスが発生する可能性があります。

    合併症:

    • ・尿道、膀胱、直腸瘻
    • ・関節症
    • ・感染症、蜂巣炎、腰硬膜外膿瘍、仙骨の細菌性骨髄炎
    • ・リンパ浮腫
    • ・慢性炎症性疾患からの合併症
    • ・アミロイドーシス
    • ・皮膚癌(主に扁平上皮癌)
    • ・拘縮と四肢の運動の制限
    • ・倦怠感、うつ、自殺

    上記通り、化膿性汗腺炎のある部位では、皮膚癌(主に扁平上皮癌)が発生しやすいことはよく知られていますが、化膿性汗腺炎から発生したお尻と会陰の扁平上皮癌は幸い進行が遅いのが特徴です。理由ははっきりしませんが、化膿性皮膚癌は男性に顕著です。診断の遅れは予後不良に至ります。化膿性汗腺炎患者様は、頬粘膜の癌と原発性肝悪性腫瘍の発生率が高いことわかっています。これは喫煙や飲酒というライフスタイルによって説明されます。

    そのほかにも化膿性汗腺炎の患者様の腋窩と鼠径部では、厚いプラークとロープのような傷跡ができ、四肢の動きを束縛、制限されてしまうことがあります。会陰の瘢痕化は、肛門、尿道、直腸狭窄を引き起こす可能性があります。そのような患者はネガティブになり、頻繁にうつ状態となり、自殺の危険性があります。

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