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化膿性汗腺炎の手術および実験的治療

外科的切除法

何十年もの間、HSの標準的な外科的管理は、広範囲の切除からなります。悪性腫瘍と同じようにマージン(病変の何mm外側まで切除するか、ということ。取り残しを防ぐために病変より広めにとる場合に使われる用語)を確保し、完全に切除する事が肝心です。マージンは術前に推定し、幅と奥行きはケースによって異なります。結果的に術後の皮膚欠損が大きくなり、単純に縫い合わせるということが困難となります。皮弁、植皮、または二期的な方法で傷を閉鎖します。軟膏処置にて1~数ヶ月かけて傷を上皮化させて行く方法もあります。通常、外科的な完全切除は、化膿性汗腺炎が薬物療法の範囲を超えているハーレーのステージIIIに制限されています。

Unroofing(天井開放術)

Unroofingは簡単な手術法であり、古い技法です。何年も見落とされていましたが、近年復活し、大いに見直されている治療です。広く使用される価値がある治療法です。手技的にも容易で、安全性も高く、筆者自身、最も良い治療法と考えています。これは、ステージIの初期の炎症性の結節からステージIIIの複雑に瘻孔が形成された病変まで適応する事ができます。早期病変を除去し、化膿性汗腺炎の深い瘻孔の上の部分を切開し、開放するだけでも非常に重要でかつ効果的です。メスと剪刀だけで簡単に治療を行えます。また、アメリカなどではレーザーが使用されている事が多いです。Unroofingは、長引く抗生物質や抗炎症療法よりもはるかに効果的です。

Unroofingは技術的には困難ではなく、局所麻酔下で外来で行うことも可能です。この技術は、化膿性汗腺炎の皮下にたまったゲル状の塊を取り出し、完全に瘻孔を解放する技術で、従来の切開とドレナージとは別物の治療です。これは、優れた排膿、排液と痛みの抑制効果があります。切開とドレナージは一時的な「解決」であるが、unroofingはほとんどの場合永続的な効果があります。また、術後のドレッシング(ガーゼなどで保護すること)も非常に簡単で、術後の痛み非常に管理が容易です。エピネフリンを含むリドカイン1〜2%の麻酔が使用されます。
単一の炎症性毛包ユニットは、緊急のミニunroofingを必要とします。適切な直径(5〜8ミリメートル)の生検パンチは、関連するFPSUを中心にして使用し、周囲も含めて損傷された皮膚をくり抜きます。そして周囲の組織を綺麗に洗浄します。
皮下のゲル状の病変の固まりはまず切開した後にすぐに、圧力を減らすために排出します。その後、十分に切開を広げ、傷口の中をガーゼでごしごし洗い、壊死組織を綺麗に取り除きます。
すべての深さとマージンは、デジタルで、もしくは視覚的に、ゾンデやはさみで探ります。あらゆる線維組織は、洞(瘻孔)として疑われ、削除されるべきです。交通する瘻孔は一度検出されたら開放すべきです。これらは驚くほど広範なことがありますが、怖がらずに完全に開放する必要があります。アクティブな病気に関与しているあるいは、陳旧性の病変もすべての組織は取り除くべきです。取り残された場合、治癒を妨げることになるでしょう。電気メスやレーザーが必要になることはほとんどありません。傷跡は、通常、切開開放したラインよりもはるかに小さく収縮し、柔らかくなり、患者も非常に受けやすいかと思います。

術後、傷はシンプルにワセリンを集めに塗布し、ガーゼで保護します。閉鎖療法はあまり良くないでしょう。流水と通常の石鹸のみで、よく洗浄します。抗菌石鹸、手拭いは使用しない方がいいでしょう。綿または柔らかいガーゼにワセリンの厚く塗布し毎日1回または2回、創部に貼付します。患者(もしくは創傷ケアスタッフ)は傷を余る強くこすらないようにした方がいいです。これらの処置で傷がふさがらない場合のみ、植皮などの外科的な治療を検討すると良いでしょう。化膿性汗腺炎はきちんと開放し、壊死した組織や線維化した組織を取り除いておけば、簡単な抗生剤を数日処方するだけで十分で、長期間の抗生剤の治療を行う必要はありません。感染は壊死した組織や線維化した組織によって引き起こされるからです。抗生剤の投与は酵母や耐性菌の増殖を最小限に抑えるために避けた方がいいです。重度の患者では、すべての領域をクリアするために数度の手術が必要です。

その他の実験的治療

ここからは、標準療法ではない実験的に行われている治療について解説したいと思います。

メトホルミン

メトホルミン(糖尿病の薬としてよく使われる)は有用であると報告されています。メトホルミンは、インスリンの末梢細胞の感度を向上させ、個々の細胞にグルコースの通過を高め、血漿グルコースレベルを低下させ、循環インスリンのレベルを低減させます。これは、アンドロゲン受容体の感作を減少させる効果があります。メトホルミンは、代謝制御プログラムの重要な一部であり、化膿性汗腺炎の管理に不可欠な部分です。

亜鉛

亜鉛は抗炎症作用と抗アンドロゲン作用の両方があり、5α還元酵素の両方のアイソエンザイムを阻害します。とある報告ではグルコン酸亜鉛90 mg/dayの投与により、22名の患者のうち、8名は完全な寛解を、14名には部分寛解をもたらしたとされています。

光線力学的療法(フォトダイナミックセラピー)

Manuel Ángel Rodríguez-Prietoらは、病変部にファイバーを挿入し、そこから光線を照射するフォトダイナミックセラピーで瘻孔を含む病変の治療に成功下との報告もあるが、現状では症例報告レベルに留まります。

ボツリヌス毒素

これを勧める証拠が不足しています。

X 線放射線治療

X線放射は早期病変に有用であると考えられていたが、今は使用されていません。

凍結手術

瘻孔内への液体窒素の繰り返し吸入する方法は古典的な方法で炎症を起こし、瘻孔を癒着閉鎖させるという方法ですが、効果が不安定で現在ではまず行われていない方法だと思います。

まとめ

化膿性汗腺炎は、原因・病因が理解されつつあり、欧米では費用対効果の高い治療法が患者様にもたらされつつあります。日本ではまだ、化膿性汗腺炎という言葉が紹介されてたばかりで、十分に理解されているとは言えません。今後、日本でも病名が広がるとともに、体系的な治療が行われるようになっていくでしょう。この病気は「ある事を他の後で試みること」は許されません。効果的な管理には、次の3つの領域を同時に行っていく必要があります。

  1. 1. 栄養管理を含むホルモン管理
  2. 2. 毛包閉塞の抑制
  3. 3. 炎症制御

HS患者は、現実的な期待を高めるためにおよび最良の結果のために、この病気を理解する必要があります。HSは伝染でも不衛生によるものでもありません。栄養管理は手術よりも貴重なものを証明するかもしれません。ホルモンコントロールは抗生物質よりも貴重です。患者様におかれましては手術をできるだけ早く引き受けてる必要があります。手術は高価でもそれほど大変でもありません。化膿性汗腺炎は確かに簡単ではありませんが、管理することができます。現在では「完治」という言葉も、もはや手の届かない範囲ではありません。

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