慢性的な心理的ストレスは多くの皮膚疾患の発症、増悪に関与しております。
本日はそれについて総論的なまとめをしたいと思います。(各論はいずれ書きたいと思います。)
代表的なものだけでも、蕁麻疹、(大人の)にきび、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、尋常性白斑、尋常性乾癬などが挙げられます。
慢性的な心理的ストレスにより皮膚疾患が発症もしくは増悪するメカニズムは
1.免疫に影響を与える。(ヘルパーT細胞のTh1/Th2バランスを崩してしまうなど)
2.ホルモンに影響を与える。(グルココルチコステロイドの分泌量を増やしてしまうなど)
3.行動に影響を与える。(掻破行動を助長してしまうなど)
の3つが挙げられます。
疾患によって、そのいずれか、もしくは複数が影響を与えています。
例えばアトピー性皮膚炎だと1と3、にきびだと2と3の影響が強いと考えています。
1と2の詳しいメカニズムを調べる非常に面白いのですが、少し専門的になってしまうので、今日は3について補足したいと思います。
ストレス、不安がたまると、無意識のうちに肌を掻いてしまう人は意外の多いのです。ストレスがたまるとかゆみが誘発されますから、そのために掻いてしまう場合もあるのですが、かゆみがなくても、掻いてしまう方もおられます。ストレス、不安があると爪を噛んでしまう子どもがいますが、それと似ているのかもしれません。仕事中にストレスがたまると、ニキビが気になって、ニキビを引っ掻いてしまい、結果的にニキビを増悪させてしまう方もいらっしゃいます。お子さんの場合は、両親の関心を得るために掻破行動をすることもあります。
肌は掻くと、バリア機能が破壊され、湿疹の原因になります。また毛穴が傷つけられ、吹き出物の原因になります。
もしそのような状況に気が付いたら、「掻いてはいけない」と自身に禁止するだけでは良くなりません。かえって気になってしまい、掻いてしまうでしょう。もしくは掻かないことが新たなストレスとなってしまうのです。
もしそのようの状況に気付いた場合は、まずはご自身がストレス下にある状況をしっかり認め、何がストレスの原因なのかよく見極めることが重要です。そしてそのストレス状況を改善するために、何かを変える、行動することが良いとされています。
水虫は皮膚科においてありふれた病気で、当院にも多くの水虫の患者さまが来院されます。
皮膚科外来で、患者さまからお叱りをいただくことの多い疾患が、意外にも水虫についてだったりします。
水虫について詳しく知りたい方は当院のホームページ、水虫について、をご参照ください。https://mitakahifu.com/tinea/
お叱りをいただく一番の理由は「かゆみが取れない」ということです。
水虫=白癬症=皮膚糸状菌の一種の感染症ですが、湿疹も合併していることがかなり多く、皮膚糸状菌を顕微鏡で検出したとしても、まずはステロイド外用薬にて湿疹の治療を先行させなければならないケースが時にあります。
水虫治療薬には湿疹を治す作用は弱く、なおかつかぶれやすいものもありますので、いくら付けても湿疹が良くならず、かゆみが残ってしまうからです。逆にまずはステロイド外用薬にて一週間程度、治療を行うとかゆみは劇的に改善することが多いのです。
ただ、その場合、患者さまに薬を切り替えていただくタイミングを詳しくお教えするか、もしくは頻繁に来院していただく必要があります。さらに患者さまに「なぜ水虫にステロイドを出すのか?」と思われてしますことがあり、やや処方する方としては心理的なハードルが高くなってしまいます。そのため、いきなり水虫治療薬を処方してしまうことが多いのです。(もちろんほとんどのケースではそれで良くなります。)
ちなみに、水虫には薬剤耐性水虫菌は報告されておらず、適切な水虫治療薬にて治療すれば基本的には菌量は減っていくはずであり、水虫治療薬が効いていないということはないはずです。かゆみが改善しないとすれば、湿疹の要素が強かったか、もしくは水虫治療薬にかぶれたということになります。(余談ですが、水虫治療薬によるかぶれは事前に予見することは出来ないので、かぶれてしまったら、謝ることしかできません。。。)
以上を踏まえ、当院では水虫の患者さまで、湿疹の要素の強い方には、まずはステロイド外用薬を一週間程度使用していただき、その後に水虫治療薬を塗布することを標準治療の一つとしています。
水イボの治療について少し述べたいと思います。
水イボの治療について一般的なことを知りたい方は当院ホームページの水イボについてhttps://mitakahifu.com/molluscum/
をご参照下さい。
当院では小さなお子様には、水イボをいきなりピンセットで摘除することはありません。鋭い痛みが伴うからです。当院では硝酸銀を塗布する、もしくは表面麻酔のテープを貼付してから水イボを摘除する方法をとっています。
これは、小さなお子様に必要以上の苦痛を与えないためという意味もありますが、それ以上にお子様に病院が嫌いになってほしくないためでもあります。
病院が嫌いになれば、早期に治療が必要な疾患の治療が遅れることになりかねません。アトピー性皮膚炎などは早期に皮膚科医が介入し治療を開始しなければならないことを以前のブログでご紹介しました。現在でも、病院に来なかったり、民間療法で治療される方が後を絶ちません。日本では成人になっても治りきらないアトピー性皮膚炎の方が諸外国に比べて多いとされていますが、その一因に病院できちんと治療しないことにあるのではないか、との説があります。
なぜきちんと病院で治療しないかというと、潜在的な病院嫌いがあるのかもしれません。
そうならないように、水イボの治療の治療などでは無痛治療を心がけています。少なくとも「大して痛くないよ。」といってすごく痛いことをする、といったことはありません。小さなお子様を潜在的な医療不信にしないためです。
化粧品の分析をする前に少し述べておきたいところがあります。
以下の質問のうち何個が正解だとおもいますか?
1.石油から作られた油分(鉱物性)は肌に負担をかける。
2.植物から作られている成分は安心である。
3.合成界面活性剤は皮膚に悪い。
4.防腐剤は入っていないものの方が安全だ。
私の見解ではいずれも正しいとは言えません。
1. 石油から精製される精度の高い白色ワセリンなどは皮膚の保護材、保湿剤として昔から安全に使われてきました。
2. 植物でかぶれてしまう人はたくさんいます。(漆、マンゴー、サクラ草、キク、ユリ等)
3. 合成界面活性剤もなるべく皮膚に刺激が少なく、皮膚に残らないものが開発されつつあります。
4. 防腐剤の入っていないものはむしろ、衛生面の問題があります。防腐剤の中にはかぶれの原因になりやすいものがあるのは事実ですが、理想的にはかぶれない防腐剤が使われていることと考えます。
もちろん、正解は人それぞれの肌質によって異なってくると思います。敏感肌の方は、防腐剤には十分に、注意を払った方が良いでしょう。(特定の防腐剤にかぶれることが分かっていれば、それを避ける必要があります。)
ただ、なんとなくのイメージのまま鉱物油はダメ、合成界面活性剤はダメ、防腐剤はダメ、自然から作られているものは安全、と考えるのはかなり大雑把な考え方で、もう少し詳しく見ていく必要がありますので、あえてこのように述べさせていただきました。
当院ホームページにニキビ治療の一般的なことが書かれていますが、少し補足したいと思います。
ニキビ治療というとピーリングを思い浮かべる方が多いと思いますが、当院ではニキビ治療の第一選択としてピーリングを選択することはあまりありません。
というのは、以前は、ニキビ治療に対して抗菌薬の外用や抗菌薬の内服しか有効な治療は無く、毛穴の閉塞を解除するためにはピーリングを行うしかなかったのですが、現在では保険適応内で、アダパレン(ディフェリン)の処方が可能となったからです。ディフェリンはピーリング同様毛穴の閉塞を解除してくれる作用があります。
もちろんピーリングを行ってもいいのですが、ピーリングは保険外治療で、保険治療と同時に行うことが出来ません。国が禁止している混合診療となってしまうからです。
そのため当院では、ニキビ治療の第一選択は保険治療とし、どうしても治療に反応しない場合、保険外治療行う方針としています。(大部分の症例では、保険治療内で十分な効果を上げていますので、保険外治療を行うことはあまりありません。)
ではピーリングはダメかというと、そんなことはありません。当院で採用しているGAによるピーリングは、角質を溶かす作用は弱いのですが、表皮細胞に存在する受容体に作用し、細胞の増殖や分化を促進し、皮膚を若返らせる作用があることが分かってきました。
当院ではその作用に注目し、むしろニキビ痕の治療や、くすみ、小じわの治療にピーリングを活用しています。
ニキビについてもっと知りたい方はこちらをご参照ください。
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