HOME > ブログ > 診療 > なかなか治らない手湿疹の原因について
pagetop

なかなか治らない手湿疹の原因について

 手湿疹は多くの場合、水仕事を長く行う方に出来やすく、洗剤などで手の皮脂膜や角質の保湿成分が洗い流されることで、皮膚のバリア機能が低下することにより発症します。
 また、美容師さんなど化学薬品をたくさん扱う方の場合は、薬品にかぶれて手湿疹を発症することがあります。
 しかし中には「水仕事はしない」、「化学薬品を扱わない」のに、手湿疹を発症し、なかなか治らない方もおられます。その場合の考えられる原因については以下の物質についてのかぶれが疑われます。
 ニッケル(ドアノブ、はさみ、調理器具、髪留めなどに使われています。)
 重クロム酸カリウム(セメント、革製品などに使われていましたが、最近はあまり使われていないとのこと。)
 ゴム(ゴム手袋、ホース、ベルト、コードなどに使われています。)
 香料(化粧品、石鹸、市販の塗り薬などに使われています。)
 ホルムアルデヒド(接着剤、防腐剤、建築機材などに使われています。)
 ラノリン(皮膚のクリーム、潤滑剤、プラスチックなどに使われています。)
  
頻度的にはそれほど多くはないのですが、難治性の手湿疹で原因がはっきりしない場合は上記の物質などでかぶれている可能性を考え、検査をし原因を追究していったほうがいいと考えています。

理事長ブログ | 診療 | comments(0) | trackbaks(0)

ニキビと食事の関係について

 「どのような物を食べるとニキビになりやすいのか?」とよく聞かれるのですが、なかなか一筋縄ではいかない問題です。
 当院のQ&Aでは「食品添加物を多く含むもの、動物性脂肪を多量に含むものは避けた方が良いという説があります。そのほか糖分を多く含むお菓子などもニキビを悪化させるという説もあります。」と書かせていただいています。
 CLINICAL DERMATOLOGY(Thomas P. Habit著)という本を読んでいたら興味深いことが書かれていたので紹介させていただきます。
 「西洋化されていない、パプアニューギニアのキラバン島に住む方々や、パラグアイの狩猟・採取して生活されている方々はニキビができないという事実があります。
 この事実により、西洋化された食事、特にすぐに糖に分解される炭水化物(ベーグル、ドーナッツ、クラッカー、キャンディー、ケーキ、ポテトチップス)の多量摂取がニキビの原因になりうることが示唆されます。つまり血中の糖の濃度が急速に上がるとインスリンの分泌が増え、そのほかのホルモンに影響を与え、皮膚に過剰な油分が増えニキビが増える可能性があります」
 と書かれています。一時低インスリン食がもてはやされましたが、低インスリン食はニキビにもいいということが言えるかもしれません。
 西洋化されていない食事というと玄米や野菜、海藻、根菜類を中心とした伝統的な和食が思いつきますが、それはニキビの改善につながるかもしれません。

理事長ブログ | にきび | comments(0) | trackbaks(0)

掻くことによる皮膚の影響

 外来中、患者様には「皮膚を掻かないでください、擦らないでください」とよくご説明させていただいておりますが、その理論的根拠を少し述べたいと思います。
 まず掻くことにより角質層が痛み、アレルゲン(アレルギーの原因物質)、微生物の通過を許してしまうことが一つあげられます。それについては何度か書いたことがあるので、今回は割愛させていただきます。
 そのほかにも、掻くことで表皮細胞が傷害され、サイトカインと呼ばれる伝達物質が放出されます。サイトカインによってさまざまな免疫細胞が寄ってきて炎症が起こり、皮膚炎が増悪してしまいます。
 そのほかにも、掻くことにより、末梢神経の求心性C線維と呼ばれる部位からサブスタンスPと呼ばれる物質が放出され、マスト細胞に作用し、ヒスタミンが分泌されます。その結果かゆみが増してしまいます。さらにサブスタンスPは血管拡張作用、血管透過性亢進作用もあり、炎症を悪化させてしまいます。
 それが、よく言われている「掻くことにより痒みが悪化する」ことの病態を表していると思います。
 どうしてもかゆいときは、掻かずに、保冷材などで30秒ほど冷やしていただきたいと思います。そうすればたいていのかゆみは一時的に収まると思います。
 余談になりますが最近、サブスタンスPはストレスにより放出されやすくなるのではないか?といわれるようになりました。それが正しいとすると、「ストレスにより、掻く行動が助長され、結果的に皮膚炎を増悪させる」ことの病態の理解につながります。(もちろんストレスが皮膚に与える影響は、ホルモンの変化など様々な角度から分析しなければならないのですが)。

理事長ブログ | 診療 | comments(0) | trackbaks(0)

肝斑に対する考察

 肝斑にお悩みの方は非常に多いと思われます。
 当院にもシミの治療を希望されて多くの方がいらっしゃいますが、肝斑を合併している率が非常に高くなっています。
 ご存知の方も多いと思いますが、肝斑にはレーザー治療は禁忌であり、かえってシミが増悪してしまいますので、慎重に診断を付けなければいけません。
 肝斑は女性ホルモンとの関係が指摘されていますが、そのほかに面白い説を提唱している先生がおられますのでご紹介したいと思います。葛西形成外科の葛西先生の「シミの治療」という本には、肝斑とは慢性的な摩擦、化粧品などによる刺激によるバリア破壊による炎症後色素沈着なのではないか?と提唱されております。
 この説は非常に鋭い説で、我々皮膚科医にとって、深く考えさせられるものです。
 葛西先生は、肝斑の治療中は、化粧品の使用をなるべく避け、皮膚を触る回数を減らすように指導されているそうです。
 肝斑の治療においては、保湿剤の使用も中止を指示することもあるそうです。
 その理由は、優れた保湿剤を使うと、皮膚がしっとりとし、皮膚のバリア機能が破壊されていることに気付かないからだそうです。それを気付かせるために時に保湿剤の使用もやめさせるそうです。それでなるべく擦らない、なるべく何もつけないように指導されるそうです。そうすると、多くの患者様は14日ほどで皮膚のバリア機能は再生し、乾燥を訴えなくなるそうです。
 その上でトラネキサム酸(トランサミン)を内服することで非常に高い効果を得られると述べておられます。 
 やはり保湿が必要な患者様は一定の数いらっしゃいますので、それも禁止するのはなかなか勇気がいりますが、もし肝斑をお持ちの方で、顔にのみ乾燥が強くて、毎日化粧をしている方がおられましたら、なるべく化粧品の数を減らし、ごく優しく洗顔をし(けしてごしごし洗ってはいけません)、なるべ顔をこする回数を減らすように工夫することをお勧めしたいと思います。肝斑がなくとも、なんとなく顔がひりひりする、いっぱい化粧品を持っているが、どれも徐々に合わなくなってきた、一日でも保湿を忘れると、顔が突っ張って仕方ないなどの症状の方がおられましたら、化粧品の塗布の際の摩擦、化粧品自体の刺激、洗顔のし過ぎにより皮膚のバリア機能が低下しているのかもしれません。
 
誤解の無いように一つ補足しておきますが、保湿が絶対的に必要な方もいらっしゃいますので(フィラグリン異常の方など)、必ずしも全員保湿をやめる必要はありません。
 皮膚をできるだけ擦らないように、触る回数をなるべく減らすように工夫することが大事ということです。

シミについて詳しく知りたい方はこちらをご参照ください。

理事長ブログ | しみ | comments(0) | trackbaks(0)

かぶれ療法について

 本日はかぶれ療法について少し述べたいと思います。
 かぶれ療法とは人工的にかぶれを起こすことにより、疾患の治癒を促す方法です。「皮膚科医はかぶれを治すのが仕事ではないか?」と訝しがられることがあるのですが、うまく使えば、かなり優れた治療効果が得られます。
  かぶれ療法を行うのは
尋常性疣贅(いぼ)
円形脱毛症
の二つです。
 いぼのかぶれ療法については以前、SADBE療法の項で述べたのですが、要約すると、かぶれを起こすことで、免疫細胞をいぼの周囲にたくさん寄ってこさせ、いぼウイルスを駆除させる、ということになります。
 では円形脱毛症にはどのように作用するのでしょうか?
 円形脱毛症は、自身の免疫細胞が、毛根を攻撃することにより発症すると考えられていますが、そこにかぶれを起こすことで、さらにたくさん免疫細胞が寄ってきます。
 免疫反応が起これば、その免疫細胞の中に、制御性T細胞(Treg)もたくさん含まれており、いずれ免疫反応を鎮静化させてくれます。その際に、毛根を攻撃していた免疫細胞も同時に鎮静化させているのではないか?と考えられています。
 ちなみにCinical dermatology fifth editionという米国の教科書には、かぶれ療法は、難治性の円形脱毛症に対しては、最も有効な治療法と記載されております。日本では保険適応でないのが残念なのですが、当院では保険適応の治療でどうしても反応しない患者様においては、かぶれ療法を行うことができます。(かぶれ物質は無料で提供させていただきます)。

理事長ブログ | 診療 | comments(0) | trackbaks(0)
病気から選ぶ
  • おおしま皮膚科
  • 小島内科クリニック

※掲載内容・料金は更新時点での情報の場合がございます。最新の内容、料金は各院へお問合せください。