炎症性粉瘤とは、粉瘤に炎症が起こり、急速に大きくなり、腫れて痛くなった状態のことです。熱感も伴うことが多いです。
炎症を伴って初めて粉瘤があったと気がつくこともあります。
身体中、どこにでも出来得ます。
炎症、感染に伴い、膿が溜まることもよくあります。放置すれば自壊し、破裂します。
症状が強い場合は、発熱、倦怠感などが出現することもあります。
以前は粉瘤に細菌が感染することが原因と考えられていたのですが、現在では細菌感染が原因の頻度は高くなく、粉瘤が割れ、内容物が皮内に漏れ出し、異物反応を起こしていることがほとんどの原因であるということがわかっています。
すなわち粉瘤が圧迫、摩擦などがきっかけで破裂し、粉瘤の内容物(垢や皮脂)が皮膚の中でばらまかれ、炎症(痛み、腫れ、熱)を引き起こす、ということです(図)。
圧が発生しやすいお尻や背中などに比較的頻度が高いです。
その他、全身、どこにでも起こりえます。
上記原因で説明した通り細菌感染が原因である可能性はそれほど高くなく、異物反応が原因であるため抗生剤の投与による効果は限定的で、根治的な治療からは程遠いです。
(ただし抗生剤投与を否定しているわけではなく、感染の可能性は10%程ありますし、放置した場合、感染の確率はもっと高まりますので抗生剤の投与は必要です。ただし抗生剤投与のみの治療は十分ではないという意味です。)
抗生剤投与は、あくまで感染の予防、感染拡大の予防ということになります。
前述の通り、炎症の原因のほとんどは異物反応ですので、粉瘤の内容物、粉瘤の袋そのものを取り除くことこそが、本質的な治療法と言えるでしょう。
現在、日本でよく行われている炎症性治療法は
の3種類です。
くり抜き法とは粉瘤に小さな穴をあけ、そこから炎症性粉瘤の内容物(垢、皮脂、膿)を完全に抜き取り、さらに粉瘤を構成している壁まで全て抜き取ることを目標とした治療です。
炎症がある段階で、くり抜き法にて粉瘤を完全に取りきります。
縫合する必要がなく、炎症があっても問題なく手術可能です。
全ての粉瘤の構成要因をすべて取り切ると、炎症の引きが早く、回復も極めて早いです。
通常1−2週間で傷が塞がります。
炎症性粉瘤にメスで切開を加え、中に溜まった膿や皮脂、垢などを排出する方法です。
切開法を行い、内部を清潔に洗浄することで徐々に炎症は治っていきます。
ただし粉瘤の壁(袋の成分)は残ったままなので、いずれは再手術を行うのが前提となります。
また粉瘤の壁が残っていれば異物反応が続きますので、痛みが引く、落ち着くまでに時間(最低でも2週間以上)がかかってしまいます。
古典的には日本で最もよく行われている治療法ですが、上記通り、治療に非常に長い時間と手間がかかります。
可能なら、くり抜き法一回で済ませる方がいいと言えるでしょう。
抗生物質、痛み止めの処方のみにて様子を見る方法です。
こちらの治療は、ある意味、姑息的治療で、本質的な治療ではないことが多いです。
というのも、上記の通り、炎症性粉瘤は細菌感染症が原因である可能性が低いからです。よって抗生物質のみによる治療というのは感染の予防、感染拡大の予防という意味でしかありません。
炎症が軽度な場合は、保存的治療でも炎症が治まることがありますが、炎症が中等度以上の場合はほとんど効果がなく、痛みや炎症が持続し、最終的に炎症性粉瘤が自壊、破裂するまで痛みや腫れが続きます。
自壊した後、しばらくして(数ヶ月)、炎症が落ちついたところで手術し、粉瘤を取り除く、ということになります。
患者様の苦痛が長く続きますので、あまりお勧めをしない治療法です。
※掲載内容・料金は更新時点での情報の場合がございます。最新の内容、料金は各院へお問合せください。