基底細胞癌とは、皮膚の表皮細胞より発生する皮膚悪性腫瘍です。皮膚悪性腫瘍の中では最多です。典型的には黒い結節となることが多いので黒子(母斑細胞母斑)と間違えられることがよくあります。癌、と名前がつきますが、あまり転移することはなく、基底細胞癌の患者様のうち、きちんと治療すればこれにより死亡する可能性は0.1%以下です。
■基底細胞癌の臨床所見 ■臨床病理学的分類 |
黒い、一見、ホクロに似た形、色をしています。中心がくぼんでいることと独特の真珠様の光沢、半透明な膜に覆われた印象があります。
よく見ると毛細血管の拡張が見えるかもしれません。
大きくなるにつれて中心部が潰瘍化してくることもあります。
60%以上が結節潰瘍型です。日本人ではもっと割合が高いかもしれません。
隣接を伴う黒褐色斑です。赤っぽく見えることもあります。辺縁が濃く、盛り上がっているように見えることがしばしばあります。肩や体幹に見られることが多いです。
そもそもモルフィアとは・・・
強皮症の皮膚限局型で、皮膚の一部にのみ皮膚硬化がみられ、内臓病変を伴わない病型です。
モルフィア型の基底細胞癌とは上記のような傷跡、瘢痕のように見える基底細胞癌のことです。
現に、傷跡と誤診されることが多いです。
モルフィア型の基底細胞癌はアクレッシブなことで知られており、コラーゲンに染み込むように病変が拡大していることがあります。治療する際に特に取り残さないように注意が必要です。
後述しますが十分なサージカルマージン(肉眼的所見からの余裕域)を確保し治療する必要があります。
日本人では少なく、欧米人に見られることがあります。臨床的には赤く盛り上がった結節で多発することもあります。
病理学的な分類です。真皮のコラーゲンに染み込むように広がるタイプの基底細胞癌でアグレッシブな事が知られています。特に取り扱いに注意が必要な基底細胞癌です。アメリカではモーズ法といって、病変を切り出しては癌が残っているかどうか確認するという作業を繰り返しながら手術を行い、確実に取り切ります。日本ではモーズ法が行われていないので、十分すぎるほど病変より離して拡大切除するしかありません。
こちらも病理学的な分類です。文字どおり塊ではなく微小な病変が深部、側面に飛び散るように分布しており、安易な手術では再発するリスクがあります。
病変の肉眼所見、ダーモスコピーによる診断を行います。ダーモスコピーというのは高性能な虫眼鏡をイメージして頂けばと思います。
ダーモスコピーの所見によりほぼ診断することが可能でやや専門的になりますので極めて簡単に述べておくと
色素ネットワークがなく
[1]ulceration(潰瘍化)、[2]large blue-gray ovoid nests(灰青色類円形大型胞巣)、[3]multiple blue-gray globules(多発灰青色小球)、 [4]multiple leaf like areas (多発葉状領域)、 [5]spoke wheel areas(車軸状領域)、[6]arborizing teleangiectasia(vessels)(樹枝状血管拡張)といった所見が見られます。これらの所見が見られた場合、90%以上の可能性で基底細胞癌であると言われ、非常に診断的価値が高いです。
確定診断は生検を行いますが、診断に関してはダーモスコピーの所見で十分といったところでしょう。
外科的手術法、モーズ手術、放射線治療、冷凍凝固術、5-FU軟膏、インターフェロンα-2b局注療法などあります。これらの中で最も確実かつ保険適応なのは、手術療法ですので日本では現実的に手術療法が第一選択となります。
モーズ手術は海外で行われている手術法で、病変の取り残しがないか確認しながら手術を行う方法で、理論的には最も優れていると思われますが、日本では保険適応がなく、設備も不十分なためおこなれておりません。
手術療法は、肉眼的な基底細胞癌から4~10mm離して切除します。肉眼的な病変より、実際にはもっと広がっていることが多いからです。確実に乗り切るためには4-10mmの余裕が必要ということになります。
切除した標本病変は病理検査を行い、確実に癌が取りきれているか検査します。
もし、病変が取りきれていない場合や、ギリギリの場合は追加で手術を行うこともあります。
基底細胞癌の中で、病変の広がりが予想される臨床形(巨大である、モルフィア型である)など、そもそも巨大な場合はより十分なマージン(手術的な余裕域)を確保する必要があるとされています。
口唇,鼻,鼻周囲,眼瞼周 囲,耳,被覆頭部 などは高リスク群とされており、より確実な手術が求められます。
特にこれらの部位場合は十分なマージンを確保しにくいという問題もあります。
顔などで十分な余裕を確保できない場合が問題となりますので、より慎重な治療が求められます。
外科的手術療法は他のうち両方法より優れているので手術療法を第一選択していいのですが、何らかの理由で手術を受けられない場合は他の治療を行います。
巨大になりすぎている場合は放射線治療などがいいでしょう。
表在型の場合は、冷凍凝固術、5-FU軟膏の治療も選択肢に上がります。
基底細胞癌はきちんと治療すれば再発する可能性は極めて低い(0.1%以下)ですが、放置すると基底細胞癌による局所破壊が進行していきます。
手術を行った場合でも1%程度の再発率があり、定期的なフォローアップが必要です。
基底細胞癌の患者様は、欧米では他の部位に基底細胞癌ができやすことが報告されておりますので、それにも注意が必要です。
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