粉瘤腫とは、結節又は腫瘤として見られている進行の遅い、良性の皮膚病変です。病変は、先天性のことも後天性のこともありますがほとんどは好転的なものです。粉瘤は、体のどの領域にも発症します。大体の粉瘤は毛包漏斗部から由来し、嚢胞性拡張症(初めは小さかった袋も内容物がたまるにつれ徐々に大きくなっていく)の結果です。
他の病気と区別する最も重要な要因
Branchial Cleft Cystと呼ばれている嚢胞は、胚発生における第二鰓裂(さいれつ)の閉塞の障害首の側部に現れる先天的な上皮性嚢胞です。これらは、頸部腫瘤の中で最も一般的な先天的な疾患です。Branchial Cleft Cystの2~3%は、左右対称です。Branchial Cleft Cystは、先天的な性質のものですが、通常は青年になるまで臨床的な症状を示しません。鰓裂嚢胞の多くは無症状です。また、柔らかい、増大、又は炎症を起こすことがあり、特に上気道感染の期間中、膿瘍を発症する可能性もあります。嚢胞の解剖学的な拡張により、嚥下障害、発声障害、呼吸困難、喘鳴のような局所症状を発症する可能性があります。
皮膚石灰沈着症とは、文字通りカルシウムが皮膚内に沈着する疾患です。この病気は、原因に応じて4つの主なタイプに分類されます。組織損傷にもとずくジストロフィー、カルシウム、りんの代謝異常にもとずく転移性、医原性及び原因不明の特発性です。
皮膚石灰沈着症の全てのケースにおいて、局所もしくは全身的な原因によって、不溶性のカルシウムが皮膚内に沈着します。原因となっているカルシウム塩は、主にヒドロキシアパタイト結晶又は非晶質リン酸カルシウムです。
Calcinosis Cutisの病因は、完全には解明されていません。上述した通りの多様な原因は、異なる臨床的な経過を示します。
予後は、基礎疾患のそれによって決定されます。Calcinosis Cutis一人では通常、良性と重篤な合併症はまれです。
病変により、痛み、隣接関節の可動性の制限、又は隣接する神経構造の圧縮を起こす可能性があります。潰瘍形成、二次感染が発生する可能性もあります。稀ですが血管の石灰化は、影響を受けた臓器の虚血及び壊死をもたらす場合もあります。
ガードナー症候群とは、家族性大腸腺腫症の類の一つであり、胃腸の多発ポリープ・複数の骨腫・皮膚及び軟部腫瘍により特徴付けられた常染色体優性疾患です。皮膚の所見は、粉瘤、デスモイド腫瘍やその他の良性腫瘍を含見ます。ガードナー症候群の方のポリープは、いずれ悪性化しますのでGardner症候群の早期診断は極めて重要です。粉瘤はGardner症候群患者において最も一般的な皮膚の所見(50~65%)で、それを発見する意義は大きいです。
脂肪腫は、成熟した脂肪細胞で構成されている良性腫瘍です。最も一般的な良性間葉系腫瘍です。これらは、皮下組織に発生します。ほとんどのケースは、診断が簡単です。
脂肪腫は、胴体又は近位の四肢の皮下組織において典型的に弾性軟の塊として発症します。これらは通常、数センチ(時に数十センチまで多きくなることもあります)大きさで、外科的切除にて除去します。また脂肪吸引によって除去することもありますが、まだそれほど一般的ではありません。
脂肪腫は、前駆細胞の多数の存在、及びリポタンパク質リパーゼが増加している点で通常の脂肪と異なります。
脂肪腫の発生率は千人に一人です。何歳でも発生しますが、通常は成人に発生します。稀に幼年期や幼児期に発症することもあります。脂肪腫は外から触ると柔らかく感じますが、脂肪腫の亜型である血管脂肪腫はしばしば固く感じる事もあります。
稗粒腫とは、良性なよくある角質で満たされ多発傾向の小嚢胞です。一次的な稗粒腫は、主として乳児によく見られ、幼児や大人にも起こり得ます。稗粒腫は、小さいが粉瘤と構造はほとんど同じです。この嚢胞は、毛嚢脂腺の毛包から由来している可能性があります。
新生児に起こる稗粒腫は頻繁にあるので、病的意義はなく正常として考えられています(新生児の50%)。多発発疹性稗粒腫とMilia en plaqueは、稀な疾患です。原発性稗粒腫と二次的稗粒腫いずれも発症率において性差はありません。発疹性稗粒腫とMilia en plaqueは、女性に多く見られます。
予後:乳児に見られる稗粒腫は、生後数週間以内に消える傾向があるが、子どもと大人において、年齢が高いほど存続する傾向が
あります。外傷生じる二次的稗粒腫は自然に消えることは稀です。
1873年にJamiesonによって初めて述べられ、1899年にPringleによって造語された多発性脂腺のう腫は、皮脂で満たされた嚢胞が多発する疾患です。多くは3~30mm程度の大きさで腋窩、首、前胸部、上肢、鼠径部などに好発する肌色から淡黄色の半球状に隆起したやや固く感じる腫瘍です。数十~数百個できる事もあります。遺伝的な素因により発症します。多くは思春期ごろに臨床的に目立つようになります。先天性厚硬爪甲症の患者様が本症を高頻度に発症することが分かっており、ケラチン17の遺伝子変異が原因であるとされています。遺伝形式は常染色体優性のこともありますし、散発的に起こることもあります。多発性脂腺のう腫は、上述の通り思春期に臨床的に発症することが多いですので、おそらく脂腺を成長、活性化させるホルモンが発症のトリガーとしての役割を果たしているようです。
多発性脂腺のう腫はそれほど多くはない疾患ですが、真の有病率は不明です。皮膚科外来においては特に珍しくはありません。
発症率に性差はありません。平均的には26歳で顕在化してきます。一度多発性脂腺囊腫になると完治しない病気で、治療法は手術しかありません。
約90%が頭部に生じます。臨床所見は粉瘤と類似し、見た目では区別はできません。粉瘤も外毛根鞘のう腫も毛包由来ですが粉瘤が毛包漏斗部由来なのに対し外毛根鞘のう腫は毛包峡部由来と考えられ、病理組織学的には上皮細胞からなるのう腫壁をもち、顆粒層を形成することなく角化を起こします〔外毛根鞘性角化(trichilemmal keratinization)〕。角化細胞の一部に核の遺残がみられる場合があります。
外毛根鞘のう腫は、皮内もしくは皮下の嚢胞としてよくある、人口の5~10%の方に生涯に一度は発生しうるいわゆる‘ありふれた疾患’の一つです。90%以上が頭皮に起こり、頭皮においては最も一般的な嚢胞性皮膚腫瘍です。
外毛根鞘のう腫は、ほとんどの場合、良性です。家族歴がなく散発的に見られる場合と常染色体劣性遺伝による遺伝形式を取る場合があります。嚢胞の内部にはケラチンとその分解産物を含有し、嚢胞の壁は髪の外毛根鞘に似ています。外毛根鞘のう腫は、男性よりも女性により多く見られ、若い人よりも中年で発症しやすいです。外毛根鞘のう腫は基本的には良性ですが、外毛根鞘のう腫の2%では、単一・もしくは複数の増殖細胞の病巣が現れ、増殖性外毛根鞘のう腫というやや危険性の高い腫瘍に繋がります。それらは、次第に拡大し(時には直径25センチまで)、中心部に潰瘍を生じさせることもあります。基本的には良性だが局所の破壊力は強いです。
頻度は高くはないが、悪性化し再発と転移が観察されています。
化膿性汗腺炎は実際的には最も粉瘤と誤診されやすい疾患かもしれません。炎症性粉瘤と化膿性汗腺炎は経過も臨床像も似ており、実際に切開してみないとわからない、という場合もあります。専門医ですら間違える可能性が大いにあります。
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