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酒さのレーザー治療

酒さの治療は様々あり、付け薬、内服薬に加え、ボツリヌス毒素注射、皮膚削皮術、並びにレーザーや光線療法のような様々な治療法が開発されました。ここでは主に、レーザー治療の種類、メカニズム、メリットとデメリット、そして違いについてお話しします。下記のレーザー治療が酒さに使用されることがあります。

  • ・アルゴンレーザー
  • ・PDL レーザー(色素レーザー)
  • ・Long pulsed ND: YAG レーザー (Neodymium-doped Yttrium Aluminum Garnet)
  • ・KTP レーザー – potassium-titanyl phosphate (532 nm)
  • ・Intensed pulse light (IPL)
  • ・Copper Bromide レーザー
  • ・Krypton レーザー
  • ・CO2 レーザー – for phymatous rosacea (鼻瘤向け)
  • ・Er:YAGレーザー (Erbium:yttrium aluminium garnet)(鼻瘤向け)

レーザーの目的は、主に酒さにおいての血管変化の治療です。例えば、酒さ患者における毛細血管拡張症です。顔面毛細血管拡張症は、肌表面からわずかに隆起した細かい血管が異常に広がることで、目に見える状態となります。これらの血管は、直径(0,1-3mm)、部位、色、及びパターンが病変により異なります。

では、どうしてレーザー治療が効果的なのでしょうか。
通常、レーザー治療の標的となる物質は、メラニン、ヘモグロビンおよびシトクロムなどの発色団です。発色団とは光を吸収する粒子です。これらは、異なる組織、深さに、異なる大きさ及びそれぞれの光吸収スペクトルを持っています。治療を成功させるために、波長, パルス長、スポットサイズなどのレーザーのパラメーターを調整し、ターゲットとなる発色団に効率よく吸収されるように調整しないといけません。
酒さによる毛細血管拡張及び紅斑の治療において標的発色団は、血管内にあるヘモグロビンです。ヘモグロビンは、可視光線のスペクトルにおいて吸収されやすい波長が2つあります(542nm及び 577nm)。レーザー光線はヘモグロビンで吸収されます。それによってエネルギー保存の法則に従い熱が発生し、血管の壁が可逆性損傷することによって、破壊されます。

標的に合った正しい波長を選ぶことで、レーザー光線はターゲットで最大限に吸収され、周辺構造では最小限しか吸収されないように調整することで副作用を減らすことが出来ます。それによりターゲットとなった病変のみを破壊し、周囲の組織損傷を減らし、瘢痕形成のリスクを減らします。

アルゴン(Argon)レーザー

アルゴン(Argon)レーザーは、皮膚の血管病変や鼻瘤の治療に使用されていました。
酒さに伴う異常肥大結合組織(主に鼻瘤)の焼灼、並びに鼻の赤みを引き起こす毛細血管に対する治療効果が考えられていました。レーザーの488nm及び514nmの比較的に短い波長は、より深く浸透するために高エネルギーフルエンスが必要とされ、非特異性の熱損傷を招くという欠点があります。すなわち病変ではない組織まで破壊してしまうリスクがかなり高いということになります。さらにアルゴンレーザーはメラニンに対して高親和性を有し、必要以上にメラニン色素を破壊してしまうので、色素脱失(白斑)のリスクもあります。

これらの副作用があるため、現在はより優れたレーザーの登場によりArgonレーザーはほとんど使用されなくなりました。

カッパーブロマイドレーザー

皮膚の処置に使われる様々なレーザーの中でカッパーブロミドレーザーは、顔面、毛細血管拡張症の治療において、安全で効果が高く、十分な安全域を有した治療です。このレーザーの波長は、511nm及び578nmです。パルス状の黄色い及び緑光を使用しています。それによって、カッパーブロミドレーザーは、患部を判別しながら破壊することが出来、覆っている皮膚にはほとんど損傷を与えません。私の知る限り酒さに対してはあまり日本では使われていません。

クリプトンレーザー

クリプトンレーザーは、520nm及び530nmの波長の緑光、並びに568nmの黄色い光を発します。治療を受けた患者のアンケートにおいて、クリプトンレーザーは、カッパーブロミドレーザーと同じぐらい効果的であるとの結果を得られています。このアンケートによって、これらのレーザーを使用した64%の患者は、顔面毛細血管拡張の全体又は大幅な減少が報告されました。私の知る限り酒さに対してはあまり日本では使われていません。

パルス色素[ダイ]レーザー (PDL)

パルス色素レーザーは、酒さの血管変化において効果的な治療の一つです。
PDLの波長は、酸化ヘモグロビンの吸収が最も良い585nm〜595nmのスペクトルの間に調整されています。それによって毛細血管を効率よく破壊することが出来ます。研究では、中等度以上の患者の血管変化が85%までに低下したという良い結果が見られました。
0,45–1,5ミリ秒の短いパルス時間のPDL治療における主な副作用は、内出血です。治療後に7〜14日までに内出血が目立つことが多いです。一般的には、内出血を避けるためには長いパルス時間が必要になります。現在の新しいパルス色素レーザーは、より長いパルス時間(40-50ミリ秒)によって内出血を避けて酒さの改善を図ることが出来ます。

PDLの内出血以外の問題は、レーザーの浸透力です。フラッシュランプ色素レーザー使った研究では、直径0,2mm以上の血管は、一度のレーザー治療では十分な効果が得られず、複数回の処置が必要とされます。さらに直径0,4mm以上の血管は、あまり効果を期待することはできません。

PDLの深達度における最大限の浸透力は1,2mmなのでもっと深い血管にはあまり効果がありません。

PDLによってフラッシング(顔が一時的に赤くなること)の出現が低下するのではないか、と言われていましたが、現在のところ十分なエビデンスはありません。さらに、PDLによる処置は丘疹膿疱酒さを改善するということが、いくつかの研究で示されました。ヒリヒリ感、刺すような痛み、かゆみ及びむくみなど他の症状も、PDL治療によって緩和しました。

PDL治療の副作用として、炎症後色素沈着が15%から40%の患者に起こります。また、逆に色素脱失もあり得る副作用です。

Nd:YAG-レーザー

ND:YAGレーザーの波長のスペクトルは、1064nmです。毛細血管拡張並びに紅斑に対して効果的な治療です。丘疹膿疱性酒さ及び毛細血管拡張性酒さの被験者66名の研究では、患者の50%で酒さの症状の改善が示されました。しかし、66名のうち二人の患者では萎縮性瘢痕を生じました。皮膚の瘢痕は、ND:YAGレーザーの主な問題で、強すぎるNd:YAGレーザーの照射は皮膚の瘢痕を招きます。

KTP-レーザー

Nd:YAGレーザーの仲間に属しています。KTP結晶によってNd:YAGレーザーの元々の波長が半分になり、532nm波長の緑光を発します。Nd:YAGレーザーと比較すると主に毛細血管拡張性酒さにおける毛細血管拡張症に対し、より良い影響を与えるようです。KTPレーザーは安全性の高い治療ですが、治療直後2、3時間は皮膚に発赤が出ることがあります。

Intense Pulsed Light (IPL,フォト治療)

Intense Pulsed Lightとは、いわゆるフォト治療で、レーザー同様に酒さの治療に安全で効果的に使用されています。IPLは様々な波長を含む光線を、フィルターを通じて波長を調整することで様々な治療に使われています。酒さにおける血管病変に影響を与えるフィルターは、510nmから590nmです。いくつか研究によると、IPL治療後に83%患者で赤みの減少、75%患者でフラッシング(一時的な顔の赤み)の減少及び64%の患者でニキビ様病変の減少が示されました。安全性が高いこと、酒さの様々な症状に対して治療可能な点、ダウンタイムが少ないのが特徴です。

レーザーの比較

IPLとレーザー治療、レーザー治療同士の比較に関して、多くの研究が発表されており、効果性、安全性、副作用及び患者の満足度について比較検討されました。

IPL(フォト) 対 PDL

IPL(560nmフィルタ)のフォト治療とPDLの比較試験において、どちらも紅斑及び毛細血管拡張が改善されましたが、PDL(6msec)の方がよりヘモグロビンに対する選択性が高いことがわかっています。比較研究によると毛細血管拡張症に対して、PDLの改善確率(46%)がIPLの改善確率(28%)よりも高く有意でした。

Nd:YAG 対 IPL

酒さの治療を評価するためにNd:YAGとIPLの比較は稀にありますが、存在します。
ある前向き研究の一つによると、毛細血管拡張、下肢静脈瘤又は単純性血管腫を持つ患者を対象とした比較試験が行われています。血管病変が1mmより小さい患者はIPL治療に満足しましたが、血管が1mmより大きい患者は、Nd:YAGによる治療に満足度が高いことが明らかになりました。その反面Nd:YAGレーザー治療はIPLよりも痛み強いことがわかりました。

PDL 対 Nd:YAG

PDLとNd:YAG比較する研究では、肌の明るい患者においてPDLレーザーがNd:YAGレーザーより効果が高いのですが、全体的にNd:YAGレーザー治療の方が、苦痛がより少ないことが示されました。

PDLとNd:YAGの組み合わせ

酒さにおける毛細血管拡張の治療としてPDL(595nm)とNd:YAG(1064nm)を組み合わせて使用することが出来ます。このコンビネーションセラピーは、個々に治療するよりもっと効果的なので、個々の治療に抵抗性の患者様に使用することが望ましいです。

PDL 対 KTP

酒さの顔面毛細血管拡張の治療法に関する比較試験は、KTPレーザー及びPDLレーザーどちらもが酒さを改善させることが出来ます。KTPは、副作用が少なく、一方ではPDLレーザーは、成功率がより高いことが分かっています。PDLはダウンタイムが10日程あって、その間の痛みが多いという側面もわかりました。

PDL 紅斑, 毛細血管拡張 メリット IPLより血管を選択的な治療することができる。
Nd:YAGより効果的。
ディメリット 短いパルス時間で内出血のリスクが高く、炎症後色素沈着、および色素脱失のリスクあり。
KTPレーザー 毛細血管拡張(紅斑) メリット ダウンタイムが短い、安全性が良好瘢痕化するリスクが低い、紅斑よりも毛細血管拡張に効果が高い。
ディメリット 日本ではあまり普及していない。
Nd:YAGレーザー 紅斑, 毛細血管拡張 メリット PDLより痛みが少ない。治療抵抗性の場合、PDLと
組み合わせの治療もあり。
ディメリット 萎縮性瘢痕のリスクあり。
IPL 紅斑, 毛細血管拡張丘疹/膿疱 メリット 安全性が高く、ダウンタイムが短い。様々な症状を
治療可能。
ディメリット 選択性が低い、血管病変に関してはPDLに効果が劣る。

上記より、当院では安全性が高く、ダウンタイムが少なく、様々な酒さの症状に対応可能なためIPL治療(フォト治療)を第一選択としてお勧めしております。
当院のIPL治療について詳しく知りたい方はこちらをご参照くださいませ。

鼻瘤 (団子鼻) のレーザー治療

酒さのサブタイプ、鼻瘤(団子鼻)は主に男性に発症します。
鼻瘤は鼻の外観を損なう状態です。鼻瘤の主な病態は皮膚肥厚及び皮脂腺の肥大です。鼻の閉塞の可能性もあります。肌の余分な層を除去するために、外科的治療の選択肢に加えて、CO2レーザーとEr:YAGレーザーが適応されます。

炭酸ガスレーザー(CO2 レーザー)

炭酸ガスレーザー(CO2 レーザー)とは、通常、黒子やいぼの治療、止血に使われるレーザーです。現在、炭酸ガスレーザーによる鼻瘤の治療が一般的に行われております。皮膚肥厚、肥大した皮脂腺の除去の治療において最も一般的に使用されるレーザーです。

炭酸ガスレーザーは細胞内及び細胞外の液体を標的とする10600nmのスペクトルの赤外線の一種を放射しています。レーザーの吸収により組織の蒸散、除去を行います。CO2 レーザーは焦点モード及び非焦点モードがあります。光線と皮膚の表面の間の距離に応じた焦点モードは、組織の切開機能を持ち、非焦点モードは、組織の蒸発を引き起こします。また、直径0,5mm以下の血管に対して凝固を引き起こします。美容上より効果的な結果を得るためには、非焦点モードにて創縁部をよりスムーズにすることができます。

CO2レーザーで鼻瘤の過剰な組織をレーザーで除去した後、傷が上皮化するまで2週間ほどかかる場合があります。副作用は、治療部位の赤み、色素沈着が含まれます。傷の深さ次第で傷の治った後の赤み、色素沈着は4週間から6ヶ月をかかってしまいます。

Erbium:yttrium aluminium garnet (Er:YAG) lasers

Er:YAG レーザーとは、2940nm波長の光線を放射するフラッシュランプ色素レーザーです。液体で吸収されやすく、すなわち組織の蒸散及び焼灼に使われます。CO2レーザーと比較すると、組織の破壊及び損傷の深さをより良く制御することができ、治癒にかかる時間を短縮することができるとされています。傷の治癒後の赤みは1週間から4週間程度と炭酸ガスレーザーと比較すると短縮されます。Er:YAGでも術後の瘢痕形成、及び色素沈着のような副作用が見られます。

上記よりEr:YAGの方がメリットが高いように思えますが、Er:YAGは日本では保険適応がなく、薬事承認も降りていないことがほとんどですので、現実的にはよく普及し、保険適応、薬事承認を通過している炭酸ガスレーザーによる治療がメインとなります。
当院でも鼻瘤の治療は炭酸ガスレーザーによる治療を第一選択としております。

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