欧米先進国では酒さに関する研究が過去数十年にわたって行われ多様な異なる原因と要因が多数報告されました。
その中で、酒さを異なる段階およびサブタイプに分類することは重要で、可能な限り正確に分類することに力を注いで参りました。しかし、多くの患者は同時に複数のサブタイプの特性を経験し、そしてサブタイプは、しばしば連続して起こることがあります。酒さは、一サブタイプから他のサブタイプに進行することがあり、個々の兆候や症状が、軽度、中等度、重度と増悪することがあります。 したがって、早期診断と治療が重要となります、 現在、酒さには決定的な治療法はなく、軽度の段階にとどめておくことが強く推奨されます。
そのための主な3つの管理の種類として:生活指導(刺激回避)、スキンケアおよび薬物療法があります。
生活指導、スキンケア管理をすることが、フラッシングの再燃を抑えることにつながります。
頻繁にフラッシュする患者様または酒さの家族歴を持っている患者様は、慢性的な顔の赤らみを増悪させる可能性があり、下記のような生理的および環境刺激を避けることをお勧めします。
酒さの症状を緩和し寛解を維持するためには、適切なスキンケアと化粧品を選択することが不可欠です。メイク落としが必要なカバー力の高いファンデーションや基礎化粧品は避けるべきです。ウォータープルーフ化粧品と過剰なメイクアップが好ましく、太陽光から保護し、炎症を抑える成分を含有する化粧品をお勧めします。
とにかく、紫外線を遮断することが重要です。日焼け止めは、(例えば、LL-37カテリシジンの活性型)抗菌ペプチド及び酒さを引き起こす反応性活性酸素種(ROS)の生産を減少させます。また、低アレルギー化粧品を使用する必要があります。酒さの患者様の皮膚は経表皮水分蒸発量が高いので、保湿剤は酒さの治療の側面からも重要と言えます。
スキンケアと悪化となる特定の誘因を回避することに加えて、付け薬による治療は酒さの治療において重要な役割を果たします。数ある病因の中で、ROS(活性酸素種)、KLK5(カリクレイン5)及びToll様受容体2(TLR2)は、酒さの発症において重要な役割を果たします。
1.ROS
活性酸素種は、酸化ストレスとして知られて、細胞の損傷を誘導するものです。
2.KLK5(カリクレイン5 )
酒さの患者様では自然免疫系で大きな役割を果たしている抗菌ペプチド・カセリサイディンの発現が増加していることが知られています。カテリシジンを切断し、活性化させるタンパク分解酵素セリンプロテアーゼの一つであるKLK5(カリクレイン5 )は酒さ治療において重要なターゲットとなりえます。
3.Toll様受容体2(TLR2)
免疫細胞の壁に位置するタンパク質のクラス。これら受容体の活性化は、炎症反応を引き起こします。
4.ニキビダニ
顔の毛穴に寄生するニキビダニが、皮膚の過剰な免疫反応を引き起こすことが酒さの原因の一つと考えられています。
下記の薬剤は、影響を与えるターゲットに応じて分類されます。のちに詳細に説明したいと思います。
いずれの薬剤も、日本では酒さに対しては、保険適応はありません。
日本で比較的使いやすいのは
です。
メトロニダゾールは、安全で忍容性が良い医薬品です。これは、何十年も酒さのための局所治療薬として使用され、“ゴールドスタンダード:gold standard”とも呼ばれます。メトロニダゾールは、病変(丘疹、膿疱、皮膚浸潤)及び赤みを有意に減少させます。しかし、毛細血管拡張症への効果は低い、または存在しないとみなされます。
正確な機序は知られていませんが、メトロニダソールの効果は、酸化防止(活性酸素種ROSの減少)、抗炎症及び免疫抑制作用、ニキビダニを減少させる作用に基づいていると考えられています。1日1回塗布したときに紅斑、丘疹、膿疱に有効であることが証明されました。
また、治療の中止後に寛解を維持することが示されています。通常、使用後3週間ほどで効果がみられます。
メトロニダゾールの過敏症がある場合には使用は禁忌です。
起こりうる副作用は、過敏性反応、皮膚刺激、皮膚の乾燥、発赤、皮膚病変の悪化、ピリピリ感など希少な局所反応が含まれます。メトロニダゾールの全身的な副作用は通常発症しないが、金属味、吐き気、四肢のしびれなどの症状がごくまれに見られます。
酒さの患者様は、セリンプロテアーゼKLK5の高いレベルを有します。KLK5は、カテリシジン前駆体をその活性形態(LL-37)に変換します。KLK5の異常な高いレベルがLL-37を増加させ、酒さの病因となると考えられています。それゆえ、KLK5を抑制することは、酒さの治療に役立ちます。15%アゼライン酸ゲルは病変酒さの皮膚にKLK5及びLL-37の出現を減少させると研究で確認されています。
アゼライン酸ゲルは、15%(及び20%)が使用可能であり、軽度から中等度の酒さの炎症性丘疹および膿疱の局所治療に適用します。アゼライン酸はやや深刻な副作用を及ぼす可能性があるので、付け薬としては第2選択肢となります(第一選択肢は上記メトロニダゾール)。
アゼライン酸は、ケラチノサイトの増殖を阻害し、弱い抗炎症作用を有します。この抗炎症効果は、上記KLK5及びカテリシジンを抑制することに基づいています。1日に1回のアゼライン酸の塗布を病変部に塗布します。過去にアゼライン酸の過敏症のあった方、妊娠中、授乳中は禁忌です。
治療の最初の4週間以内に、ヒリヒリ感、刺すような感覚が現れる可能性があります。時としてこの感覚は持続し、治療の期間中消失することがありません。
しばしば、かゆみ、発赤、乾燥や落屑などの皮膚の局所炎症が観られますが、これらの症状は主に、治療の開始時に発症します。
メトロニダゾール対アゼライン酸
三つの研究において、アゼライン酸対メトロニダゾールの有効性を評価しました。医師評価結果において、アゼライン酸は、メトロニダゾールよりも効果的であることが示唆されますが、患者の評価としては有意差が見られませんでした。
アゼライン酸は乾燥、刺すような、落屑、かゆみ、およびヒリヒリなどの有害事象の発症率が高いことを示しました。副作用はいずれの群においても軽度から中程度、ならびに一過性でした。メトロニダゾールおよびアゼライン酸はいずれも、毛細血管拡張に対して効果がないことが判明しました。
局所レチノイドは、結合組織の修復を促進することにより、光損傷から皮膚を修復に導くことが示されています。したがって、レチノイドは、酒さの病因である紫外線のダメージを軽減させることで酒さの症状を減少させるのに有効である可能性があります。
またオールトランスレチノイン酸のトレチノインは、実験室レベルでのヒト単球においてToll様受容体2(TLR2)の発現を抑制することが示されています。TLR2の過剰な活性化は酒さの大きな要因の一つと思われています。
したがって、トレチノインによる酒さの治療は、TLR2の発現のダウンレギュレーション(抑制)によるものと考えられています。トレチノイン単剤療法として、または他の局所薬との組み合わせとしてのトレチノイン外用療法は、複数の研究で紅斑、丘疹や膿疱、毛細血管拡張症を減少することが報告されています。
トレチノインは日本でもよく使われる薬剤で入手しやすいと思います。
局所カルシニューリン阻害剤(日本ではほぼプロトピック:タクロリムス)は、炎症性のサイトカインの放出を防止します。それによってT細胞活性化を阻害し酒さの症状を低減できるもの仮定されています。
局所カルシニューリン阻害剤は、丘疹膿疱性酒さと紅斑を治療するために使用されています。様々な研究において、紅斑の有意な改善につながっています。
ピメクロリムス(日本では使用不可)およびタクロリムスは両方とも血管拡張型酒さと丘疹膿疱型酒さを治療するために使用されています。軽度から中等度の炎症性酒さ患者様のための有効かつ安全性の高い治療です。
タクロリムスは日本でもアトピーに使用され、おなじみの薬であり使用しやすいと思われます。
この記事では、主に酒さの初期の段階における生活指導、外用療法について解説いたしました、重症の場合、局所治療のみでは不十分となる可能性があります。その場合、局所および全身治療の組み合わせが適応となり、毛細血管拡張症や鼻瘤の治療に対してレーザーまたは光線療法などの治療が必要となります。
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