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女性の薄毛

女性の薄毛とは

女性に起こりうる薄毛としては、円形脱毛症、女性型脱毛症、休止期脱毛(急性、慢性)、牽引性脱毛症、真菌による脱毛症、瘢痕性脱毛症などあらゆる脱毛症がありますが、一般的に女性の薄毛といった場合は
・女性型脱毛症
・慢性休止期脱毛症
を指すことが多いです。
厳密には慢性休止期脱毛は男性にも起こりうるのですが、女性の方に圧倒的に多く見られます。特に原因不明の慢性休止期脱毛に関しては女性の薄毛に含まれることが多いです。

女性の薄毛について動画で解説しております

女性型脱毛症

以前は女性の男性型脱毛症と呼ぼれていることもありました。男性型脱毛症(AGA)とよく似た特徴があります。

AGAとの共通点

30代以降に、頭頂部、前頭部に軟毛化(髪の毛のコシがなくなり、髪のが細くなること)が見られ、徐々に髪の毛が抜け落ちていきます。
髪の生えげぎわが広がってくるように感じられることが多いです。
男性型脱毛症と同様に、側頭部や後頭部には症状はあまり目立ちません。

AGAとの違い

額の生え際の後退は目立ちません。
AGAよりも広範囲に症状が現れることが多いです。
初期より比較的広範囲に軟毛化が見られるのが女性型脱毛症の特徴です。
またAGAは男性ホルモンの影響であることがはっきりと分かっていますが、女性型脱毛症に関しては原因ははっきりしません。少なくとも男性ホルモンの影響だけではないことは明らかで、それゆえ、男性型脱毛症で高い効果が見られるフィナステリド、デュタステリドといった薬剤は無効です。

分類

進行度Ludwig分類がよく使われます。

TypeⅠ

TypeⅡ

TypeⅢ

女性型脱毛症の原因

遺伝的な原因が考えられています。女性型脱毛症の患者のうち40-54%ほどは家族歴があるとされており、若くて発症した人には家族歴が多く見られる傾向にあります。
ホルモンの変化、男性ホルモンの影響、甲状腺異常、鉄欠乏性貧血などとの関連が考えられていますが、現時点では不明です。

慢性休止期脱毛症

休止期脱毛症は成長期毛が何らかのきっかけで、通常よりも多くの毛包が休止期に入ることで脱毛が起こる疾患です。
急性に起こるものを急性休止期脱毛症、6ヶ月以上続くものを慢性休止期脱毛症と呼びます。

急性休止期脱毛症は急速に髪の毛が抜け始めます。特に頭頂部、前頭部などの区別はなく、頭部全体に影響を及ぼすのが特徴です。

休止期脱毛症の原因

急性休止期脱毛症には以下のような原因が知られていますが、原因が不明な場合もあります。

・薬剤性
・膠原病(SLEなど)
・感染症(梅毒、HIV)
・甲状腺異常
・栄養失調(急速なダイエット)
・出産
・鉄欠乏性貧血

慢性休止期脱毛症は急性休止期脱毛症から続くものもあれば、なんとなく髪が薄くなってきて、気がつけば慢性休止期脱毛症であったという場合もあります。後者の原因不明の特発性慢性休止期脱毛症が大部分をしめます。

治療法総論

女性型脱毛症は根本的な原因がわからず、決定的な治療法はありません。ミノキシジル外用薬やHARG療法(https://tokyo-agaclinic.com/harg/)にて治療を行います。

急性休止期脱毛症は病歴の問診、及び採血検査などにより原因を検索します。
原因が見つかれば、その治療を行うことで改善が見られる場合多いです。ただしその改善には長時間かかる場合が多いです。原病の治療と並行してミノキシジル外用薬、パントガールによる治療が行われます。

慢性休止期脱毛症も同様に原因の検索を行いますが、原因がはっきりしないことが多いです。

原因不明の慢性休止期脱毛症は決定的な治療はなく、女性型脱毛症と同様にミノキシジル外用薬やHARG療法(https://tokyo-agaclinic.com/harg/)にて治療を行います。補助的にパントガールも使用されることもあります。

女性型脱毛症、慢性休止期脱毛症も低容量ミノキシジル内服療法を行うことがあります。

治療法各論

ミノキシジル外用薬

毛包の血流改善、及び毛包に成長因子を誘導することで毛包を成長期に導きます。
女性型脱毛症、慢性休止期脱毛症に対して高いエビデンス(医学的根拠)があります。

一般的にはミノキシジル外用薬の1%、2%、5%が販売されていますが、女性の場合は2%が選択されることが多いです。
ミノキシジル外用薬5%を使用するとややかぶれのリスクが増えますが、ミノキシジル外用薬2%で効果が十分でない方は5%をトライしてもいいでしょう。

 

パントガール

急性休止期脱毛症の治療に用いられることが多い内服薬です。

・チアミン(ビタミンB1)60mg
・パントテン酸カルシウム(ビタミンB5)60mg
・活性酵母100mg
・シスチン(アミノ酸の一種でケラチンにたくさん含まれており、頭髪の重要な要素です)20mg
・ケラチン(毛髪の大部分を占めるタンパク質です)20mg
・p-アミノ安息香酸(ビタミンB複合体の一つ)20mg

が含まれています。
特に分娩後脱毛症(出産後脱毛症)の治療には高いエビデンスが報告されています。

女性型脱毛症、慢性休止期脱毛症の治療にも補助的に使われます。

副作用:腹痛、下痢、めまい、頭痛、動悸、胸やけ

HARG療法

HARG療法(https://tokyo-agaclinic.com/harg/
ヒト脂肪幹細胞を培養し、その幹細胞より放出されたサイトカイン、成長因子などのタンパク質を製剤化したものです。
それらのタンパク質を直接薄毛の気になる部分に注射します。

※院によって注入方法が異なりますので各院にお問い合わせください。

料金:1回88,000円(税込)

低容量ミノキシジル内服薬

薄毛外用薬として有名なミノキシジルですが、元々は高血圧の治療の内服薬として開発された薬です。内服により髪の毛が生えてくるという効果は高いのですが、その他、ムダ毛も濃くなってしまうという副作用があります。
その他、むくみや立ちくらみといった副作用があり、慎重に処方されています。近年、海外から低容量ミノキシジル内服療法の効果と安全を示すエビデンスが見られるようになってきました。他の治療で反応が乏しい場合はこの治療を検討してもいいと思われます。

 

▶詳細はこちらのページをご覧ください。

症例写真

症例1

HARG療法10回終了後の70代の患者様です。
施術の説明:HARG療法(ハーグ療法)とは、AAPEパウダーを溶解したものを頭皮に直接注入する治療法です。

料金:1回88,000円(税込)
主な副作用:頭皮の内出血、一時的な痛み、麻酔薬に対するアレルギー

症例2

HARG治療6回終了後の30代女性の患者様です。
施術の説明:HARG療法(ハーグ療法)とは、AAPEパウダーを溶解したものを頭皮に直接注入する治療法です。

料金:1回88,000円(税込)
主な副作用:頭皮の内出血、一時的な痛み、麻酔薬に対するアレルギー

HARG+について

【未承認機器・医薬品等】
この治療で使用されるのは医薬品医療機器等法上の承認を得ていない未承認医薬品です。
日本では、未承認医薬品・医療機器を医師の責任において使用することができます。

【入手経路】
メトラス株式会社より個人輸入しております。

【国内の承認医薬品の有無】
国内においては承認されている医薬品はありません。

【諸外国における安全性に係る情報】
リスクとしては熱感、発赤、かゆみなどが報告されています。

よくあるQ&A

Q.女性型脱毛症は男性型脱毛症(AGA)の女性版なのでしょうか?

A.以前は女性型脱毛症はAGAの女性版と考えられており、女性のAGAなどと呼ばれていることもありました。AGAは男性ホルモンが毛包に作用し、その成長期を短縮させることで発症しますが、女性型脱毛症も同様の機序であると考えられていたわけです。
しかし近年ではそれだけで説明できない現象が多く、AGAとは異なる疾患であることがわかっています。

Q.自分でケアすることはできますか?

A.女性型脱毛症、慢性休止期脱毛症どちらも、生活習慣の改善やご自身で改善させる方法はわかっていません。鉄欠乏性貧血がベースにある場合は、その治療を行うことで薄毛を改善させられる可能性があります。

Q.遺伝しますか?

A. 女性型脱毛症、慢性休止期脱毛症どちらもご家族で同様の症状が頻繁に見られることがよく知られています。そういった意味では遺伝しやすいとも言えますが、おそらく多数の遺伝子が複雑に関与しており、単純な遺伝形式ではないと考えられています。

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AGA

AGA

脱毛症、または抜け毛とは、本人が生えることを期待していた毛髪(主に過去に生えていた箇所の毛)が生えなくなった状態、あるいは抜けてしまった状態のことです。通俗的には“薄毛、ハゲ”と言われる状態です。

女性よりも主に30~50代の成人男性にみられる症状になります。
2005年のデータによると、本邦において薄毛を認識している男性は1,260万人におよび、薄毛を気にしている男性は 800万人、薄毛への対処をしたことがある男性は 650万人、現在薄毛への対処をしている男性は 500 万人と推計されました。

脱毛症の類型は

  • ・男性型脱毛症
  • ・脂漏性脱毛症
  • ・老人性脱毛症
  • ・円形脱毛症
  • ・抗癌剤の投与などが原因の薬剤性脱毛症
  • ・瘢痕性脱毛症
  • ・出産後に起こる産後脱毛症
  • ・精神疾患に伴う脱毛症
  • ・女性型脱毛症
  • ・老人性脱毛症

などがあります。

今回、男性型脱毛症の病態生理学に関与している5α-還元酵素(5アルファ-レダクターゼ)と、それを阻害する薬剤であるフィナステリド(プロペシア)について述べさせていただきたいと思います。

男性型脱毛症(Androgenetic Alopecia: AGA)

男性型脱毛症とは、80歳までの間に男性の80%に影響を及ぼす極めて一般的な疾患、もしくは状態です。

遺伝的背景を持つ男性が思春期以降に経験するとされており、初期段階では、前頭部から頭頂部にかけて毛包がミニチュア化し、太く長い硬毛が、細く短い軟毛に変化してきます。すなわち、ヘアサイクルの過程で成長期が短縮するため、短く小さな色素の少ない軟毛が形成されるようになります。最終的には、休止期に対する成長期の毛包数が減少し、視認可能な軟毛の数も減少し、薄毛、禿と認識されるようになります。

AGAは、ハミルトン・ノーウッド分類で進行度を分類し、9つのステージに分けられています。AGAの発症には、遺伝的因子および、ホルモン因子が関与するとされていますが、毛包のミニチュア化の正確なメカニズムは特定されていません。

男性型脱毛症の進行度

進行度は、「ハミルトン・ノーウッド分類(N-H分類)」によって、下記の型に分類されています。

【1型】
初期の症状で、髪の生え際が少しM字状に後退し始めている状態。この時点で対策をとると、進行を止められる可能性が高い。通常は気付かない人の方が多い、軽度なレベル。

【2型】
1型が進行して、剃り込み部分がより後退している状態で、多くの人が気付くレベル。治療をすれば改善しやすい。

【2頭頂部型】
1型が進行して、剃り込み部分がより後退している状態で、頭頂部がO型に薄くなっている状態。治療をすれば改善しやすい。

【3型】
2型がさらに進行し、前頭部がしっかりとM字状態になっている状態。髪全体のボリュームが少なくなっている。

【3頭頂部型】
3型と同時に、頭頂部がO型に薄くなっている状態。

【4型】
3型からさらに前頭部の後退が進行、同時に頭頂部がO型に薄くなってきた状態。

【5型】
4型がさらに進み、前頭部の後退がより一層増し、すでにM字ではないほど薄毛になっている状態。前頭部と頭頂部の脱毛部分が繋がりそうな段階。

【6型】
5型からより薄毛が広がり、頭頂部の後退が後頭部にまで達している状態。

【7型】
6型が進行して側頭部の毛も減った、薄毛として一番進行した状態。

5α-還元酵素(5α-R)とは

5α-還元酵素とは、ステロイドの代謝に関与する酵素の一つです。

5α-R には、2つの異なる遺伝子によりコードされたアイソザイムI型(5α-R1)および、II型(5α-R2)が存在することが報告されています。Ⅲ型(5α-R3)も存在するが、男性型脱毛症の治療において役割を果たしていません。
5α-R1は、大部分の皮膚の脂腺に多く発現しており、5α-R2は、毛包、前立腺、精嚢および精巣上体に発現しています。これらは胆汁酸合成、アンドロゲンおよびエストロゲン代謝の3物質の代謝経路に関与しています。男性型脱毛症においては、アンドロゲンの1種であるテストステロン(T)をジヒドロテストステロン(DHT)へ変換させるという大きな役割を担っています。

DHTは男性型脱毛症(AGA)の主な原因として知られており、したがって、DHTの生成を阻害することでAGAを改善できると推測されました。

また、AGA男性の頭皮では、DHT濃度が増加することや、遺伝的5α-R2欠損症の男性では脱毛が生じないことから、AGAの発症に5α-R2が関与していることが示唆されていました。

この発見が5α-R2阻害薬、すなわちフィナステリド(プロペシア)の開発につながりました。

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デュタステリド

デュタステリド

5α-還元酵素阻害薬として、5α-還元酵素II型を抑制するフィナステリド(プロペシア)の他にいくつか知られていますが、5α-還元酵素I型とII型の両方を抑制するデュタステリド(dutasteride)という薬剤があります。
この薬剤は、2002年に症候性前立腺肥大症(BPH)の治療のために、オーストラリアの医薬品行政局(TGA)によって承認されました。その後、2009年に、デュタステリド0.5mgが、プラセボと比して、毛髪成長の有意な増加を示した6ヶ月のフェーズIIIの研究の結果に基づいて、男性型脱毛症(AGA)の治療のために、まず韓国で承認されました。その後、世界中で男性型脱毛症の認可を取得しております。

デュタステリドの作用のメカニズム

デュタステリドは、フィナステリドよりも、5α -還元酵素Ⅱ型を約3倍阻害し、5α -還元酵素Ⅰ型を100倍以上、強力に阻害します。

デュタステリドの使用方法

男性成人には、通常、デュタステリド0.1mgを1日1回経口投与します。なお、必要に応じて0.5mgを1日1回経口投与します。

デュタステリドの使えない方

デュタステリドの成分および他の5α-還元酵素阻害薬に対し、過敏症の既往歴のある患者、女性および小児への投与は禁忌です。なお、重度の肝機能障害のある患者さまも禁忌です。

デュタステリドの代謝

デュタステリドは、肝臓におけるCYP3A4 ⁄ CYP3A5によって水酸化され、消失すると考えられています。半減期は約3~5週間とかなり長いです。
肝機能障害が高度である場合は、血中濃度が上昇するおそれがあるため禁忌です。
CYP3A4阻害作用を有する薬剤、リトナビル等は併用に注意する必要があります。

使用上の注意

使用上の注意について、男性における男性型脱毛症のみの適応であり、他の脱毛症、および20歳未満の患者(安全性および有効性が確立されていないため)に対する適応はありません。

>デュタステリドの副作用について

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フィナステリド

フィナステリド(プロペシア)

1960年代に男性型脱毛症とDHT(ジヒドロテストステロン)の関係が示され、テストステロンからDHTへ変換する5α-還元酵素阻害剤の探索が行われました。その結果、1983年に米国メルク社により5α-還元酵素阻害薬としてフィナステリドが合成され、1992年に前立腺肥大症(BPH)の治療薬として5mg錠が、1997年に男性型脱毛症の治療薬として1mg錠がFDAに認可されました。現在、フィナステリド1mg錠は世界60ヵ国以上で男性型脱毛症の治療薬として承認、発売されています。

本邦において、フィナステリド(0.2mgおよび1mg)は、2005年10月に初めて内服薬として男性型脱毛症の治療薬として、厚労省より承認され、同年12月に発売された薬です。

※フィナステリドが最初に商品化された時の商品名がプロペシアです

(プロペシアの薬効成分がフィナステリドと言い換えてもいいでしょう)。

フィナステリド(プロペシア)の効果

フィナステリド(プロペシア)は、ステロイド骨格を有するが、それ自体にステロイドとしての働きはありません。フィナステリドの薬理作用は、5α-還元酵素II型の働きを抑制し、結果的に頭皮において、テストステロンからDHTへの変換を抑制します。それによりDHTが減り、男性型脱毛が改善されます。

フィナステリドは、5α-還元酵素I型よりもII型に、約100倍親和性が高いことが分かっていますので、5α-還元酵素I型よりもII型を抑制する薬剤と考えていいです。

フィナステリド自体はあくまで、DHTの産生を邪魔するだけで、それ自体には、ホルモンとしての作用はありません。

フィナステリド5mg錠は、男性型脱毛症治療薬としてだけではなく、前立腺肥大症の治療薬として、世界100ヵ国以上で承認、発売されており、10年を超える安全性データから高い安全性が証明され、データにより裏付けられています。

フィナステリド(プロペシア)の効果②

3ヵ月の連日投与により効果が発現する場合もありますが、効果が確認できるまで通常6ヵ月の連日投与が必要です。また、効果を持続させるためには継続的に服用する必要があります。
なお、服薬量の増量による効果の増強は確認されていないため、上限でも1日1mgの投与で十分です。フィナステリドを6ヵ月以上投与しても男性型脱毛症の改善がみられない場合には投薬を中止します。また、6ヵ月以上投与する場合であっても、定期的に効果を確認し、継続投与の必要性について検討する必要があります。

本邦で実施した男性におけるAGAを対象とした臨床試験の結果から、フィナステリド(0.2 mgおよび1mg)はプラセボと比べて有意に脱毛の進行を遅延し、さらに十分な安全性を示しました。外国で実施された男性におけるAGAを対象とした臨床試験において、フィナステリド1mgは5年間にわたり高い安全性を示し、頭髪の持続的な改善および脱毛の進行遅延効果、前頭部、頭頂部のAGAに対する有効性、およびヘアサイクルの改善を示しました。

フィナステリド(プロペシア)の長期成績に関して

フィナステリド(プロペシア)は男性型脱毛症(以下AGA)の治療、予防薬として最も重要な薬剤です。

毛包においてテストステロン(男性ホルモン)がジヒドロテストステロン(活性型男性ホルモン)に変換されるのを防ぎ、AGAの治療、予防につながります。治療効果に関しては、AGAの患者様のうち少なくとも40%以上の患者様で増毛が見られ、少なくとも85%以上の患者様で薄毛の進行が防がれることがわかっています。

では、それを例えば5年以上ずっと飲み続けるとどうなるのか?ということが次のテーマとなります。
ずっと飲み続けると髪が増え続けるのか、それともある程度で効果は頭打ちになるのか、それとも効果がピークになった後、またAGAが進行していくか?
という点です。

データ①

A. ROSSIらによる、フィナステリド内服10年経過を論文を紹介します。

Finasteride, 1 mg daily administration on male androgenetic alopecia in different age groups: 10‐year follow‐up

Dermatol Ther. 2011 Jul-Aug;24(4):455-61.

これによると

  • ・治療効果はフィナステリド内服1年で予測可能(すなわち、内服1年で効果が見られた場合は、その後の経過も良好だが、内服1年で十分な効果が見られない場合は、その後の経過も芳しくない)
  • ・20代は30−60代と比べて改善が乏しく、20代は42.8%でフィナステリドを10年内服しても改善が見らなかった。
  • ・フィナステリドの効果は減弱せず、21%の治験者で5年後からさらに改善が見られた。
  • ・6%の方で副作用が見られたが、軽微であり、薬を中止するほどではなかった。

と報告しています。

データ②

Jung‐Won Shinによる韓国のデータを紹介したいと思います。

Evaluation of long‐term efficacy of finasteride in Korean men with androgenetic alopecia using the basic and specific classification system
J Dermatol. 2019 Feb; 46(2): 139–143.

まずこの論文ではBASCという方法でAGAを分類しています。

生え際から薄くなってくるベーシックタイプ、その他をスペシフィックタイプとし頭頂部から薄くなっていくV型(カッパ型)、生え際は変わらないもの前頭部が薄くなっていくF型(バーコード型)に分類されます。欧米ではベーシック型が多いのですが、アジア人ではV型、F型がかなり多いのが特徴です。後述しますが、ベーシック型とV型、F型はかなり治療に対する反応が異なります。すなわち欧米のデータだけ見ていては、分からないことも多いということになります。

・全体的な傾向

こちらを見ると、全体の傾向として、フィナステリドは2年ほどで効果のピークに達し、その後は頭打ちになるのわかります。

・分類別に傾向

より詳細にAGAのタイプにより経過が見ていくと少し違った傾向が見られます。

それぞれのタイプ別の経過です。

  • ・生え際から薄くなってくるベーシックタイプでは、フィナステリドの効果は2年で頭打ちとなり、5年内服しても40%程度の方でしか改善が見らない。
  • ・頭頂部から薄くなっていくV型ではフィナステリドを5年内服しても改善する人は増え続け、最終的には90%の方で改善が見られる。
  • ・前頭部から薄くなっていくF型ではその中間で、フィナステリドの効果は2年ほどで頭打ちとなりますが、5年の内服で60%の方に改善が見られる。

・効果の減弱の予測

長期で内服した場合も効果は持続が減弱してくる場合があるのか、という点ですが、

  • ・生え際から薄くなってくるベーシックタイプでは効果が減弱することはない。
  • ・頭頂部から薄くなっていくV型ではフィナステリドを5年内服で一旦、髪の毛が増えてもピークアウトし再び髪が減ってくるケースは10%
  • ・前頭部から薄くなっていくF型ではフィナステリドを5年内服で一旦、髪の毛が増えてもピークアウトし再び髪が減ってくるケースは16%程度

と報告しています。

ただし減弱効果は少なく、全体的には良い結果が続きます。

・副作用

副作用に関して9.5%の患者で見られ、うち7.9%は男性機能の関係するもの、1%は肝機能障害であったと報告しており、これまでの報告で変わりありません。

まとめ

フィナステリドの効果は2年ほどで頭打ちになる場合が多いが、例外的にV型(頭頂部が薄くなるバターン)のみ改善傾向が長期的に続きます。
全体的にはフィナステリドを長期内服した場合でも良い結果は続きます(効果がピークアウトすることはあるが、減弱はしにくい)。
長期で内服した場合でもこれまで知られていた副作用以外の新たな副作用は見られませんでした。

フィナステリド(プロペシア)の代謝

フィナステリドの代謝には、肝臓のチトクロムP450(CYP3A4)が関与しているが、明らかな薬物相互作用を示す薬剤は知られておらず他の薬剤との併用に関しても安全性は高いものと推測されています。

しかし、肝機能障害のある患者への安全性は確認されていないため、慎重に投与する必要があります。フィナステリドは、39%が尿中に、57%が便中に排泄されるため、重度の腎機能障害のある患者や高齢者でも用量を調整する必要はありません。

フィナステリドの使えない方

この薬剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者、妊婦または妊娠している可能性のある女性、および授乳中の女性へ投与は禁忌です。

フィナステリドの注意点

フィナステリドを使用する際は、男性における男性型脱毛症のみの適応であることに注意が必要です。他の脱毛症、20歳未満の患者、または女性に対する適応はありません。海外で実施した閉経後の女性の男性型脱毛症を対象とした12ヵ月間のプラセボ対照二重盲検比較試験(n=137)において、フィナステリドの有効性は認められていません。
妊婦に投与するとフィナステリドの薬理作用(DHT低下作用)により、男子胎児の生殖器官などの正常発育に影響を及ぼす恐れがあります。

フィナステリド(プロペシア)とデュタステリド(ザガーロ)の副作用

フィナステリド(プロペシア)、デュタステリド(ザガーロ)という両方の薬剤は、テストステロンをジヒドロテストステロン(DHT)へ変換する経路をブロックします。従って、血清DHT値が変わるため、ほぼ同じ副作用が見られます。
大きく分けて、性的、精神的、物理的、その他、起こりうる副作用があります。

性的な副作用

性欲減退、勃起不全、射精障害など。陰茎収縮および感覚変化、並びに陰嚢収縮および感覚の変化も報告されています。

フィナステリドと性欲減退との関係

2009年に東京メモリアルクリニック平山で実施した3177名の男性における臨床試験の結果から、フィナステリド1mgは、高い効果を示した一方、副作用は被験者の0.7%(23/3177)にみられました。副作用は性欲減退が最も多いのですが、プラセボ(偽薬)と比べて性欲減退は優位とは言えません。すなわちフィナステリドと制欲減退の因果関係は明らかではありません。

精神的な副作用

現在では、プラセボ(偽薬)より精神的な副作用がある、というエビデンスはありません。

物理的な副作用

女性化乳房、乳房組織の拡大は、フィナステリド治療を受ける男性で報告された副作用です。男性乳癌はフィナステリド(5mg)を、女性化乳房はフィナステリド(1mgと5mg)およびデュタステリド(0.5mg)を用いた場合に注目されていましたが、いずれも偽薬でも報告されており因果関係は不明です。

その他の副作用

いくつかの研究では、AGAのためフィナステリドを投与した男性の疲労、無気力、だるさの報告の報告あります。フィナステリドとの因果関係は不明です。
また別の研究によると、皮膚の変化、最も一般的なものとしては乾燥肌が見られてきました。DHTは皮脂の産生を刺激することが知られており、フィナステリドは血清DHT値を下げるため、それにより皮脂の産生が落ちると、乾燥肌を引き起こす可能性がありますが、因果関係は不明です。

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フィナステリドとデュタステリドの副作用

フィナステリド(プロペシア)とデュタステリド(ザガーロ)の副作用

フィナステリド(プロペシア)、デュタステリド(ザガーロ)という両方の薬剤は、テストステロンをジヒドロテストステロン(DHT)へ変換する経路をブロックします。従って、血清DHT値が変わるため、ほぼ同じ副作用が見られます。
大きく分けて、性的、精神的、物理的、その他、起こりうる副作用があります。

性的な副作用

性欲減退、勃起不全、射精障害など。陰茎収縮および感覚変化、並びに陰嚢収縮および感覚の変化も報告されています。

精神的な副作用

現在では、プラセボ(偽薬)より精神的な副作用がある、というエビデンスはありません。

物理的な副作用

女性化乳房、乳房組織の拡大は、フィナステリド治療を受ける男性で報告された副作用です。男性乳癌はフィナステリド(5mg)を、女性化乳房はフィナステリド(1mgと5mg)およびデュタステリド(0.5mg)を用いた場合に注目されていましたが、いずれも偽薬でも報告されており因果関係は不明です。

その他の副作用

いくつかの研究では、AGAのためフィナステリドを投与した男性の疲労、無気力、だるさの報告の報告あります。フィナステリドとの因果関係は不明です。

また別の研究によると、皮膚の変化、最も一般的なものとしては乾燥肌が見られてきました。DHTは皮脂の産生を刺激することが知られており、フィナステリドは血清DHT値を下げるため、それにより皮脂の産生が落ちると、乾燥肌を引き起こす可能性がありますが、因果関係は不明です。

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