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酒さの全身治療

酒さの全身治療 (内服療法)

今回は、酒さの全身治療についてお話ししたいと思います。
酒さも軽症の段階であれば、習慣性変化、日光(紫外線)などの発症の誘因となり得る環境を控え、食生活を注意することや付け薬による治療が中心となります。

酒さが中等度以上、進行した段階、または酒さの特殊な形状を呈している場合は、上記のような対策、治療では不十分であり、経口/全身薬が必要となります。

酒さの原因で述べた通り酒さの悪化要因とされるのは

  • ・血管系の障害
  • ・先天性免疫不全 – カテリシジン代謝の障害
  • ・活性酸素不安定 – いわゆる酸化ストレス
  • ・Proteases組織障害 – カリクレイン5の活性化による
  • ・細菌感染 – 主にニキビダニによるもの
  • ・環境的誘因

などです。

酒さの原因がますます明らかになり、病因及びそれ関連した臨床症状のそれぞれを標的とした薬材が見つかり、治療の可能性がますます高ってきています。

現在、使用可能な薬剤は、テトラサイクリン、特にドキシサイクリン(ビブラマイシン)、マクロライド、経口メトロニダゾールおよびイソトレチノインです。
時にはダブソン(DDS)、β―ブロッカー、イベルメクチンまたはグルココルチコイドが必要になることがあります。
しかし、欧米先進国でもドキシサイクリンのみが正式に酒さの治療法として承認されており、上記に挙げた他のすべての薬剤は”off label”(承認適応症外)として使用されています。

テトラサイクリン

テトラサイクリンは日本でも比較的使い易い薬剤です。
テトラサイクリン系の抗生物質は1950年代以降、特に酒さの丘疹と膿疱に対して第一選択肢として用いられており、ゴールドスタンダードとしての地位を獲得しております。現在では、臨床的に使用される主要なテトラサイクリン誘導体は3つあります。テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリンです。

これらは、もともと抗生物質として殺菌効果を期待して作られた薬剤ですが、殺菌効果を達成するための用量よりも低い用量(subantimicrobial)において炎症を抑える効果が備わっていることがわかっています。
漫然とした抗生剤の投与は耐性菌の発生に注意が必要です。そのため低用量での抗生物質の使用が注目されています。

これらの抗生物質が酒さに効く理由

生活指導、スキンケア管理をすることが、フラッシングの再燃を抑えることにつながります。
頻繁にフラッシュする患者様または酒さの家族歴を持っている患者様は、慢性的な顔の赤らみを増悪させる可能性があり、下記のような生理的および環境刺激を避けることをお勧めします。

  • 1.環境刺激:極端な温度への曝露(熱いまたは冷たい)、寒い環境から温かいまたは熱い環境に移動し、冷たい風、日光および重度の日焼けをします。
  • 2.感情的刺激:ストレスや不安
  • 3.生理的刺激:いくつかの食品や飲料、アルコール、カフェイン、辛い食べ物、そして激しい運動など
  • 4.外的刺激:皮膚剥離術(日本ではあまり行われていません)、ケミカルピーリング、およびアルコール、メントール、ペパーミント、ユーカリ、クローブ油、および他の刺激物を含む製品

カテリシジン

カテリシジンは、酒さの皮膚の炎症に関連されている前炎症性ペプチドです。
最近では、ドキシサイクリン(商品名ビブラマイシン)は、活性化カテリシジンを生成する役割を持つカリクライン5酵素プロテシスの活性を減少させることがわかりました。
加えて、酒さにおける低用量ドキシサイクリンの投与は、好中球浸潤に寄与する炎症性サイトカインをダウンレギュレートし、結合組織を破壊するROSのレベルを低下させ、一酸化窒素の発生を阻害することで血管拡張を抑えることが示されています。

テトラサイクリン

テトラサイクリンは50年以上も酒さの全身治療薬として使用されてきたが、
低用量で丘疹膿疱性酒さ(PPR)の治療薬として、2006年にFDA(米国の厚労省に相当する機関)により正式に承認されました。
この承認の前に、抗菌作用のある容量(50-200mg/日)及び低用量(<50 mg /日)の両方でドキシサイクリンは丘疹膿疱性酒さのために使われていました。 ドキシサイクリンの抗菌作用のある容量(50-200mg/日)での投与は酒さの炎症性病変の数を減少させることが示されていますが、丘疹膿疱性酒さでは明確な細菌のターゲットが同定されていないので、その必要性が疑問視されていました。 それ以来、複数の研究では、丘疹膿疱性酒さの症状を改善するには低用量でのドキシサイクリンの臨床的有効性を示されてきました。 現在、米国では3〜6ヶ月の期間にわたって1日量40mgのドキシサイクリン(30mgの即時放出および10mg遅延放出)を投与することは、標準的な治療です。ドキシサイクリンの副作用は、胃腸障害、吐き気、嘔吐、下痢、嚥下障害, 過敏性反応、光毒性反応、膣カンジダ症などです。これらの副作用は、40mgの低用量処方によって減少させることができます。

ミノサイクリン投与では、皮膚、粘膜及び歯の過剰色素沈着させる可能性があり、ドキシサイクリンに比べて、薬疹、神経疾患、呼吸器疾患、好酸球の自己免疫疾患及びDRESS症候群(好酸球増多症と薬疹そして全身症状)といった重篤な副作用が多いため、ドキシサイクリンが第一選択肢となります。
日本でも比較的使い易い薬剤です。

マクロライド

マクロライドは日本でも比較的使い易い薬剤です。
テトラサイクリン系抗生物質で深刻な副作用があった方、または禁忌の方には代替的に
マクロライド系抗生物質(エリスロマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン)が用いられることがあります。

アジスロマイシン及びクラリスロマイシンは、古いエリスロマイシンよりも化学的に安定であり、より広く用いられています。
内服は、8歳未満のお子様でも可能です。アジスロマイシンは、より長い半減期を持つので、より少ない頻度の内服で治療可能です。
アジスロマイシンは、炎症組織に対する親和性を示し、他のマクロライド系抗生物質と比較して他剤との薬物相互作用が数なく他の薬剤を飲んでいる人にも使い易いという特徴があります。

マクロライド系の抗生物質は、好中球の活性化、及び好酸球活性化を阻害し、好中球遊走を抑制し活性酸素の放出及び炎症誘発性サイトカインの生成を抑制することで抗炎症作用します。

日本でも比較的使い易い薬剤です。

メトロニダゾール

メトロニダゾールは日本でも比較的使い易い薬剤です。
メトロニダゾールは、酒さに対して付け薬としてだけでなく内服しても効果的な治療薬です。
特に、デモデックス(ニキビダニ)が関与している丘疹膿疱性酒さで良好な効果を示します。
治療の副作用として、頻度は少ないのですが脳症、神経障害やけいれんの発症が報告されています。
アルコールと一緒に摂取すると頭痛の危険性もあります。メトロニダゾールを服用中の患者は、厳密には、アルコールを避ける必要があります。

日本はフラジールという薬剤で販売されており、比較的使い易い薬剤です。

レチノイド – イソトレチノイン

イソトレチノインは、主に、尋常性座瘡(acne vulgaris)の経口治療のために使用されるビタミンA酸(レチノール)の合成誘導体です。
この薬剤は、皮脂腺や皮脂生産のサイズを小さくするだけでなく、抗炎症作用、及び免疫調節機能を持っています。
イソトレチノインは、培養ケラチノサイトにおいて、単球のTLR-2の発現を著しく低下させることで、抗炎症効果を発揮しているものと考えられています。それにより酒さを改善させているものと考えれています。
イソトレチノインは、酒さの治療に関連して、紅斑、丘疹及び膿疱の有意な減少、ならびに結合組織、皮脂腺の過形成(phymas)を軽減させることは、いくつかの研究でも示されています。

特に、鼻瘤、電撃型酒さ、ステロイドが原因の酒さのようないくつかのサブタイプでの投与がお勧めます。

日本では薬事承認が降りておらず、使用しづらい薬剤です。

ダプソン

ダプソン(DDS)は日本でも比較的使い易い薬剤です。
もともとはハンセン病を治療するために開発された薬ですが、現在では難治性の皮膚疾患に使われることが多くなっています。
ダブソンは組織への好中球遊走を阻止することにより、その抗炎症効果を発揮し、好中球の細胞傷害性酸化物質の放出を抑制します。
ダプソンは、主に水疱性皮膚疾患の治療に使用されているが、今は肉芽腫酒さと電撃型酒さにも有効であると報告されています。

日本でも比較的使い易い薬剤です。日本ではレクチゾールという薬剤に相当します。

β―ブロッカー

例えばプロプラノロール(非選択的β―受容体遮断薬)、またはカルベジロール(α1拮抗活性を有する非選択的β―受容体遮断薬)のようなβ遮断薬は、典型的には動脈性高血圧症、冠動脈心疾患、狭心症及び頻脈性不整脈の治療のために使用されます。

β―遮断薬は血管収縮を引き起こす皮膚の血管平滑筋に作用し、それが弛緩することを妨げます。
それにより酒さのホットフラッシュを改善させる効果が期待できます。

カルベジロールのような新しい非選択的β遮断薬は、酒さで効果の期待できる抗酸化作用および抗炎症作用を示しました。
β遮断薬を用いた治療の一般的な副作用は、低血圧、口腔乾燥症、胃腸障害、並びにトリガー又は乾癬の悪化です。
気管支喘息、重度の低血圧および徐脈、重度の心疾患および末梢循環障害をお持ちの方には、β遮断薬の投与は禁忌です。
現状、β遮断薬の使用に関しては十分なエビデンスがなく、どれほど推奨できるか分からない状態ですが、
紅斑、ホットフラッシュなど他に改善が見込めない状態であれば、使用を検討してもいいかと思います。
ただし日本では保険適応はなく、使いづらいでしょう。

イベルメクチン

毛包中(デモデックス)の増加傾向にある丘疹膿疱生酒さに対してイベルメクチンの内服療法の有効性が確認されています。
イベルメクチンは5%クリームとして局所治療としてもよく使われています。
日本では疥癬などに保険適応がありますが、やや使いにくい薬かと思われます。

抗ヒスタミン薬

抗ヒスタミン薬は日本でも比較的使い易い薬剤です。
抗ヒスタミン薬のターゲットとなりうるマスト細胞(肥満細胞)は、カテリシジン(LL-37)、MMP類(Matrix Metallo Proteases)および炎症性サイトカイン(27,28)を放出することによって酒さの発症、及び増悪において重要なカテリシジン誘発性炎症を仲介する役割を果たしていることが示唆されています。
マスト細胞の脱顆粒を抑制することは、酒さにおける潜在的な治療標的であると推測されます。
この仮説をもとに古典的な抗ヒスタミン薬、クロモリンナトリウム(日本名:インタール)を使用した小さな、無作為化比較試験が行われました。8週間後、クロモリンナトリウムを処方された群では顔面紅斑およびMMP、カテリシジン、及びKLK5レベルが対照群と比べ優位に減少しました。
将来的に大きな試験が必要とされていますが、これらの知見は、紅斑性酒さを治療するためにクロモリンナトリウムが有用であり得ることを示唆しています。
抗ヒスタミン薬は日本でも使いやすいでしょう。

酒さの全身治療のための他の薬剤

ケトコナゾール、酢酸シプロテロン、スピロノラクトンおよびコトリモキサゾール、クリンダマイシン、クロラムフェニコールおよびアンピシリンのような抗生物質の効力することについて個々の報告があります。
しかし十分なエビデンスがあるとはいえず、現状では酒さの治療で用いるには抵抗があります。

酒さの特別な型の全身治療

古典的な酒さ型(毛細血管拡張性酒さ、丘疹膿疱性酒さ)に加えて、他の全身療法を必要とするいくつかのサブタイプが存在します。

電撃性酒さ

日本ではほとんど見られませんが、急激な増悪を特徴とする酒さです。
この症状に対しては、数週間にわたって0.5mg/kgプレドニゾロン(ステロイド)の投与量で全身治療が適しています。
炎症反応の寛解後、低用量イソトレチノイン、またはイソトレチノインが禁忌の場合ドキシサイクリン、及びマクロライドを用いた治療を開始します。

ルポイド(肉芽腫)酒さ

ルポイド酒さでもプレドニゾロン(ステロイド)の投与がしばしば行われます。テトラサイクリン(ミノサイクリンまたはドキシサイクリン)または低用量イソトレチノインも投与可能です。

ステロイド酒さ(酒さ様皮膚炎)

原因となっている局所性または全身性ステロイドは完全にやめるべきです。カルシニューリン阻害剤(プロトピック)の局所療法に加えて、低用量イソトレチノイン、または抗生物質の全身療法も可能です。

眼性酒さ

眼性酒さは、まずは代用涙液の使用、眼瞼縁にテトラサイクリン含有眼軟膏の塗布といった局所療法が行われます。十分な改善が見られない場合、テトラサイクリン系抗生物質の全身療法がすすめられます。テトラサイクリンに対して禁忌がある又は8歳未満の幼児の場合、代替としてマクロライド系抗生物質を処方することができます。
眼性酒さは、低用量のレチノイド治療にも応答します。

幼児の酒さ

幼児における酒さの治療は、成人の治療とほぼ変わりはなく、8歳以上の幼児は、メトロニダゾール含有ゲル(ロゼックス)に加えて、ドキシサイクリンを処方することができます。幼児に対する代替薬としては、マクロライド系抗生物質の投与が考えられます。

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酒さの局所治療

酒さの局所治療 (スキンケア・付け薬による治療)

欧米先進国では酒さに関する研究が過去数十年にわたって行われ多様な異なる原因と要因が多数報告されました。
その中で、酒さを異なる段階およびサブタイプに分類することは重要で、可能な限り正確に分類することに力を注いで参りました。しかし、多くの患者は同時に複数のサブタイプの特性を経験し、そしてサブタイプは、しばしば連続して起こることがあります。酒さは、一サブタイプから他のサブタイプに進行することがあり、個々の兆候や症状が、軽度、中等度、重度と増悪することがあります。 したがって、早期診断と治療が重要となります、 現在、酒さには決定的な治療法はなく、軽度の段階にとどめておくことが強く推奨されます。

そのための主な3つの管理の種類として:生活指導(刺激回避)、スキンケアおよび薬物療法があります。

生活指導 ( 刺激回避 )

生活指導、スキンケア管理をすることが、フラッシングの再燃を抑えることにつながります。
頻繁にフラッシュする患者様または酒さの家族歴を持っている患者様は、慢性的な顔の赤らみを増悪させる可能性があり、下記のような生理的および環境刺激を避けることをお勧めします。

  • 1.環境刺激:極端な温度への曝露(熱いまたは冷たい)、寒い環境から温かいまたは熱い環境に移動し、冷たい風、日光および重度の日焼けをします。
  • 2.感情的刺激:ストレスや不安
  • 3.生理的刺激:いくつかの食品や飲料、アルコール、カフェイン、辛い食べ物、そして激しい運動など
  • 4.外的刺激:皮膚剥離術(日本ではあまり行われていません)、ケミカルピーリング、およびアルコール、メントール、ペパーミント、ユーカリ、クローブ油、および他の刺激物を含む製品

スキンケア

酒さの症状を緩和し寛解を維持するためには、適切なスキンケアと化粧品を選択することが不可欠です。メイク落としが必要なカバー力の高いファンデーションや基礎化粧品は避けるべきです。ウォータープルーフ化粧品と過剰なメイクアップが好ましく、太陽光から保護し、炎症を抑える成分を含有する化粧品をお勧めします。
とにかく、紫外線を遮断することが重要です。日焼け止めは、(例えば、LL-37カテリシジンの活性型)抗菌ペプチド及び酒さを引き起こす反応性活性酸素種(ROS)の生産を減少させます。また、低アレルギー化粧品を使用する必要があります。酒さの患者様の皮膚は経表皮水分蒸発量が高いので、保湿剤は酒さの治療の側面からも重要と言えます。

局所治療 (付け薬による治療)

スキンケアと悪化となる特定の誘因を回避することに加えて、付け薬による治療は酒さの治療において重要な役割を果たします。数ある病因の中で、ROS(活性酸素種)、KLK5(カリクレイン5)及びToll様受容体2(TLR2)は、酒さの発症において重要な役割を果たします。

1.ROS

活性酸素種は、酸化ストレスとして知られて、細胞の損傷を誘導するものです。

2.KLK5(カリクレイン5 )

酒さの患者様では自然免疫系で大きな役割を果たしている抗菌ペプチド・カセリサイディンの発現が増加していることが知られています。カテリシジンを切断し、活性化させるタンパク分解酵素セリンプロテアーゼの一つであるKLK5(カリクレイン5 )は酒さ治療において重要なターゲットとなりえます。

3.Toll様受容体2(TLR2)

免疫細胞の壁に位置するタンパク質のクラス。これら受容体の活性化は、炎症反応を引き起こします。

4.ニキビダニ

顔の毛穴に寄生するニキビダニが、皮膚の過剰な免疫反応を引き起こすことが酒さの原因の一つと考えられています。

下記の薬剤は、影響を与えるターゲットに応じて分類されます。のちに詳細に説明したいと思います。

  • 1.メトロニダゾール:酸化ストレスの進行を食い止め、酸化ストレスを軽減させます。
  • 2.アゼライン酸:局所のセリンプロテアーゼを阻害することで酒さを改善させます。
  • 3.局所αアドレナリン受容体拮抗薬:血管病変がターゲットです。
    (ア)酒石酸ブリモニジン0.5%
    (イ)オキシメタゾリン
  • 4.局所レチノイド(トレチノイン):(UV誘発)酸化ストレスを軽減させます。
  • 5.局所のカルシニューリン阻害剤 – タクロリムスおよびピメクロリムス:炎症を抑えます。
  • 6.メトロニダゾール、イベルメクチン、プラジカンテル, 硫黄スルファセタミド:ニキビダニ(デモデックス)を抑制することで酒さを改善させます。
  • 7.抗ヒスタミン薬:クロモグリク酸ナトリウム(インタール)

いずれの薬剤も、日本では酒さに対しては、保険適応はありません。

日本で比較的使いやすいのは

  • ・メトロニダゾールゲル(ロゼックス)
  • ・アゼライン酸クリーム、ゲル
  • ・レチノイド(トレチノイン)
  • ・タクロリムス(プロトピック)

です。

メトロニダゾール

メトロニダゾールは、安全で忍容性が良い医薬品です。これは、何十年も酒さのための局所治療薬として使用され、“ゴールドスタンダード:gold standard”とも呼ばれます。メトロニダゾールは、病変(丘疹、膿疱、皮膚浸潤)及び赤みを有意に減少させます。しかし、毛細血管拡張症への効果は低い、または存在しないとみなされます。
正確な機序は知られていませんが、メトロニダソールの効果は、酸化防止(活性酸素種ROSの減少)、抗炎症及び免疫抑制作用、ニキビダニを減少させる作用に基づいていると考えられています。1日1回塗布したときに紅斑、丘疹、膿疱に有効であることが証明されました。
また、治療の中止後に寛解を維持することが示されています。通常、使用後3週間ほどで効果がみられます。

メトロニダゾールの過敏症がある場合には使用は禁忌です。
起こりうる副作用は、過敏性反応、皮膚刺激、皮膚の乾燥、発赤、皮膚病変の悪化、ピリピリ感など希少な局所反応が含まれます。メトロニダゾールの全身的な副作用は通常発症しないが、金属味、吐き気、四肢のしびれなどの症状がごくまれに見られます。

アゼライン酸クリーム

酒さの患者様は、セリンプロテアーゼKLK5の高いレベルを有します。KLK5は、カテリシジン前駆体をその活性形態(LL-37)に変換します。KLK5の異常な高いレベルがLL-37を増加させ、酒さの病因となると考えられています。それゆえ、KLK5を抑制することは、酒さの治療に役立ちます。15%アゼライン酸ゲルは病変酒さの皮膚にKLK5及びLL-37の出現を減少させると研究で確認されています。
アゼライン酸ゲルは、15%(及び20%)が使用可能であり、軽度から中等度の酒さの炎症性丘疹および膿疱の局所治療に適用します。アゼライン酸はやや深刻な副作用を及ぼす可能性があるので、付け薬としては第2選択肢となります(第一選択肢は上記メトロニダゾール)。
アゼライン酸は、ケラチノサイトの増殖を阻害し、弱い抗炎症作用を有します。この抗炎症効果は、上記KLK5及びカテリシジンを抑制することに基づいています。1日に1回のアゼライン酸の塗布を病変部に塗布します。過去にアゼライン酸の過敏症のあった方、妊娠中、授乳中は禁忌です。

治療の最初の4週間以内に、ヒリヒリ感、刺すような感覚が現れる可能性があります。時としてこの感覚は持続し、治療の期間中消失することがありません。
しばしば、かゆみ、発赤、乾燥や落屑などの皮膚の局所炎症が観られますが、これらの症状は主に、治療の開始時に発症します。

メトロニダゾール対アゼライン酸
三つの研究において、アゼライン酸対メトロニダゾールの有効性を評価しました。医師評価結果において、アゼライン酸は、メトロニダゾールよりも効果的であることが示唆されますが、患者の評価としては有意差が見られませんでした。
アゼライン酸は乾燥、刺すような、落屑、かゆみ、およびヒリヒリなどの有害事象の発症率が高いことを示しました。副作用はいずれの群においても軽度から中程度、ならびに一過性でした。メトロニダゾールおよびアゼライン酸はいずれも、毛細血管拡張に対して効果がないことが判明しました。

局所レチノイド(トレチノインなど)

局所レチノイドは、結合組織の修復を促進することにより、光損傷から皮膚を修復に導くことが示されています。したがって、レチノイドは、酒さの病因である紫外線のダメージを軽減させることで酒さの症状を減少させるのに有効である可能性があります。

またオールトランスレチノイン酸のトレチノインは、実験室レベルでのヒト単球においてToll様受容体2(TLR2)の発現を抑制することが示されています。TLR2の過剰な活性化は酒さの大きな要因の一つと思われています。

したがって、トレチノインによる酒さの治療は、TLR2の発現のダウンレギュレーション(抑制)によるものと考えられています。トレチノイン単剤療法として、または他の局所薬との組み合わせとしてのトレチノイン外用療法は、複数の研究で紅斑、丘疹や膿疱、毛細血管拡張症を減少することが報告されています。
トレチノインは日本でもよく使われる薬剤で入手しやすいと思います。

タクロリムス(プロトピック)

局所カルシニューリン阻害剤(日本ではほぼプロトピック:タクロリムス)は、炎症性のサイトカインの放出を防止します。それによってT細胞活性化を阻害し酒さの症状を低減できるもの仮定されています。
局所カルシニューリン阻害剤は、丘疹膿疱性酒さと紅斑を治療するために使用されています。様々な研究において、紅斑の有意な改善につながっています。

ピメクロリムス(日本では使用不可)およびタクロリムスは両方とも血管拡張型酒さと丘疹膿疱型酒さを治療するために使用されています。軽度から中等度の炎症性酒さ患者様のための有効かつ安全性の高い治療です。

タクロリムスは日本でもアトピーに使用され、おなじみの薬であり使用しやすいと思われます。

まとめ

この記事では、主に酒さの初期の段階における生活指導、外用療法について解説いたしました、重症の場合、局所治療のみでは不十分となる可能性があります。その場合、局所および全身治療の組み合わせが適応となり、毛細血管拡張症や鼻瘤の治療に対してレーザーまたは光線療法などの治療が必要となります。

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酒さのレーザー治療

酒さのレーザー治療

酒さの治療は様々あり、付け薬、内服薬に加え、ボツリヌス毒素注射、皮膚削皮術、並びにレーザーや光線療法のような様々な治療法が開発されました。ここでは主に、レーザー治療の種類、メカニズム、メリットとデメリット、そして違いについてお話しします。下記のレーザー治療が酒さに使用されることがあります。

  • ・アルゴンレーザー
  • ・PDL レーザー(色素レーザー)
  • ・Long pulsed ND: YAG レーザー (Neodymium-doped Yttrium Aluminum Garnet)
  • ・KTP レーザー – potassium-titanyl phosphate (532 nm)
  • ・Intensed pulse light (IPL)
  • ・Copper Bromide レーザー
  • ・Krypton レーザー
  • ・CO2 レーザー – for phymatous rosacea (鼻瘤向け)
  • ・Er:YAGレーザー (Erbium:yttrium aluminium garnet)(鼻瘤向け)

レーザーの目的は、主に酒さにおいての血管変化の治療です。例えば、酒さ患者における毛細血管拡張症です。顔面毛細血管拡張症は、肌表面からわずかに隆起した細かい血管が異常に広がることで、目に見える状態となります。これらの血管は、直径(0,1-3mm)、部位、色、及びパターンが病変により異なります。

では、どうしてレーザー治療が効果的なのでしょうか。
通常、レーザー治療の標的となる物質は、メラニン、ヘモグロビンおよびシトクロムなどの発色団です。発色団とは光を吸収する粒子です。これらは、異なる組織、深さに、異なる大きさ及びそれぞれの光吸収スペクトルを持っています。治療を成功させるために、波長, パルス長、スポットサイズなどのレーザーのパラメーターを調整し、ターゲットとなる発色団に効率よく吸収されるように調整しないといけません。
酒さによる毛細血管拡張及び紅斑の治療において標的発色団は、血管内にあるヘモグロビンです。ヘモグロビンは、可視光線のスペクトルにおいて吸収されやすい波長が2つあります(542nm及び 577nm)。レーザー光線はヘモグロビンで吸収されます。それによってエネルギー保存の法則に従い熱が発生し、血管の壁が可逆性損傷することによって、破壊されます。

標的に合った正しい波長を選ぶことで、レーザー光線はターゲットで最大限に吸収され、周辺構造では最小限しか吸収されないように調整することで副作用を減らすことが出来ます。それによりターゲットとなった病変のみを破壊し、周囲の組織損傷を減らし、瘢痕形成のリスクを減らします。

アルゴン(Argon)レーザー

アルゴン(Argon)レーザーは、皮膚の血管病変や鼻瘤の治療に使用されていました。
酒さに伴う異常肥大結合組織(主に鼻瘤)の焼灼、並びに鼻の赤みを引き起こす毛細血管に対する治療効果が考えられていました。レーザーの488nm及び514nmの比較的に短い波長は、より深く浸透するために高エネルギーフルエンスが必要とされ、非特異性の熱損傷を招くという欠点があります。すなわち病変ではない組織まで破壊してしまうリスクがかなり高いということになります。さらにアルゴンレーザーはメラニンに対して高親和性を有し、必要以上にメラニン色素を破壊してしまうので、色素脱失(白斑)のリスクもあります。

これらの副作用があるため、現在はより優れたレーザーの登場によりArgonレーザーはほとんど使用されなくなりました。

カッパーブロマイドレーザー

皮膚の処置に使われる様々なレーザーの中でカッパーブロミドレーザーは、顔面、毛細血管拡張症の治療において、安全で効果が高く、十分な安全域を有した治療です。このレーザーの波長は、511nm及び578nmです。パルス状の黄色い及び緑光を使用しています。それによって、カッパーブロミドレーザーは、患部を判別しながら破壊することが出来、覆っている皮膚にはほとんど損傷を与えません。私の知る限り酒さに対してはあまり日本では使われていません。

クリプトンレーザー

クリプトンレーザーは、520nm及び530nmの波長の緑光、並びに568nmの黄色い光を発します。治療を受けた患者のアンケートにおいて、クリプトンレーザーは、カッパーブロミドレーザーと同じぐらい効果的であるとの結果を得られています。このアンケートによって、これらのレーザーを使用した64%の患者は、顔面毛細血管拡張の全体又は大幅な減少が報告されました。私の知る限り酒さに対してはあまり日本では使われていません。

パルス色素[ダイ]レーザー (PDL)

パルス色素レーザーは、酒さの血管変化において効果的な治療の一つです。
PDLの波長は、酸化ヘモグロビンの吸収が最も良い585nm〜595nmのスペクトルの間に調整されています。それによって毛細血管を効率よく破壊することが出来ます。研究では、中等度以上の患者の血管変化が85%までに低下したという良い結果が見られました。
0,45–1,5ミリ秒の短いパルス時間のPDL治療における主な副作用は、内出血です。治療後に7〜14日までに内出血が目立つことが多いです。一般的には、内出血を避けるためには長いパルス時間が必要になります。現在の新しいパルス色素レーザーは、より長いパルス時間(40-50ミリ秒)によって内出血を避けて酒さの改善を図ることが出来ます。

PDLの内出血以外の問題は、レーザーの浸透力です。フラッシュランプ色素レーザー使った研究では、直径0,2mm以上の血管は、一度のレーザー治療では十分な効果が得られず、複数回の処置が必要とされます。さらに直径0,4mm以上の血管は、あまり効果を期待することはできません。

PDLの深達度における最大限の浸透力は1,2mmなのでもっと深い血管にはあまり効果がありません。

PDLによってフラッシング(顔が一時的に赤くなること)の出現が低下するのではないか、と言われていましたが、現在のところ十分なエビデンスはありません。さらに、PDLによる処置は丘疹膿疱酒さを改善するということが、いくつかの研究で示されました。ヒリヒリ感、刺すような痛み、かゆみ及びむくみなど他の症状も、PDL治療によって緩和しました。

PDL治療の副作用として、炎症後色素沈着が15%から40%の患者に起こります。また、逆に色素脱失もあり得る副作用です。

Nd:YAG-レーザー

ND:YAGレーザーの波長のスペクトルは、1064nmです。毛細血管拡張並びに紅斑に対して効果的な治療です。丘疹膿疱性酒さ及び毛細血管拡張性酒さの被験者66名の研究では、患者の50%で酒さの症状の改善が示されました。しかし、66名のうち二人の患者では萎縮性瘢痕を生じました。皮膚の瘢痕は、ND:YAGレーザーの主な問題で、強すぎるNd:YAGレーザーの照射は皮膚の瘢痕を招きます。

KTP-レーザー

Nd:YAGレーザーの仲間に属しています。KTP結晶によってNd:YAGレーザーの元々の波長が半分になり、532nm波長の緑光を発します。Nd:YAGレーザーと比較すると主に毛細血管拡張性酒さにおける毛細血管拡張症に対し、より良い影響を与えるようです。KTPレーザーは安全性の高い治療ですが、治療直後2、3時間は皮膚に発赤が出ることがあります。

Intense Pulsed Light (IPL,フォト治療)

Intense Pulsed Lightとは、いわゆるフォト治療で、レーザー同様に酒さの治療に安全で効果的に使用されています。IPLは様々な波長を含む光線を、フィルターを通じて波長を調整することで様々な治療に使われています。酒さにおける血管病変に影響を与えるフィルターは、510nmから590nmです。いくつか研究によると、IPL治療後に83%患者で赤みの減少、75%患者でフラッシング(一時的な顔の赤み)の減少及び64%の患者でニキビ様病変の減少が示されました。安全性が高いこと、酒さの様々な症状に対して治療可能な点、ダウンタイムが少ないのが特徴です。

レーザーの比較

IPLとレーザー治療、レーザー治療同士の比較に関して、多くの研究が発表されており、効果性、安全性、副作用及び患者の満足度について比較検討されました。

IPL(フォト) 対 PDL

IPL(560nmフィルタ)のフォト治療とPDLの比較試験において、どちらも紅斑及び毛細血管拡張が改善されましたが、PDL(6msec)の方がよりヘモグロビンに対する選択性が高いことがわかっています。比較研究によると毛細血管拡張症に対して、PDLの改善確率(46%)がIPLの改善確率(28%)よりも高く有意でした。

Nd:YAG 対 IPL

酒さの治療を評価するためにNd:YAGとIPLの比較は稀にありますが、存在します。
ある前向き研究の一つによると、毛細血管拡張、下肢静脈瘤又は単純性血管腫を持つ患者を対象とした比較試験が行われています。血管病変が1mmより小さい患者はIPL治療に満足しましたが、血管が1mmより大きい患者は、Nd:YAGによる治療に満足度が高いことが明らかになりました。その反面Nd:YAGレーザー治療はIPLよりも痛み強いことがわかりました。

PDL 対 Nd:YAG

PDLとNd:YAG比較する研究では、肌の明るい患者においてPDLレーザーがNd:YAGレーザーより効果が高いのですが、全体的にNd:YAGレーザー治療の方が、苦痛がより少ないことが示されました。

PDLとNd:YAGの組み合わせ

酒さにおける毛細血管拡張の治療としてPDL(595nm)とNd:YAG(1064nm)を組み合わせて使用することが出来ます。このコンビネーションセラピーは、個々に治療するよりもっと効果的なので、個々の治療に抵抗性の患者様に使用することが望ましいです。

PDL 対 KTP

酒さの顔面毛細血管拡張の治療法に関する比較試験は、KTPレーザー及びPDLレーザーどちらもが酒さを改善させることが出来ます。KTPは、副作用が少なく、一方ではPDLレーザーは、成功率がより高いことが分かっています。PDLはダウンタイムが10日程あって、その間の痛みが多いという側面もわかりました。

PDL 紅斑, 毛細血管拡張 メリット IPLより血管を選択的な治療することができる。
Nd:YAGより効果的。
ディメリット 短いパルス時間で内出血のリスクが高く、炎症後色素沈着、および色素脱失のリスクあり。
KTPレーザー 毛細血管拡張(紅斑) メリット ダウンタイムが短い、安全性が良好瘢痕化するリスクが低い、紅斑よりも毛細血管拡張に効果が高い。
ディメリット 日本ではあまり普及していない。
Nd:YAGレーザー 紅斑, 毛細血管拡張 メリット PDLより痛みが少ない。治療抵抗性の場合、PDLと
組み合わせの治療もあり。
ディメリット 萎縮性瘢痕のリスクあり。
IPL 紅斑, 毛細血管拡張丘疹/膿疱 メリット 安全性が高く、ダウンタイムが短い。様々な症状を
治療可能。
ディメリット 選択性が低い、血管病変に関してはPDLに効果が劣る。

上記より、当院では安全性が高く、ダウンタイムが少なく、様々な酒さの症状に対応可能なためIPL治療(フォト治療)を第一選択としてお勧めしております。
当院のIPL治療について詳しく知りたい方はこちらをご参照くださいませ。

鼻瘤 (団子鼻) のレーザー治療

酒さのサブタイプ、鼻瘤(団子鼻)は主に男性に発症します。
鼻瘤は鼻の外観を損なう状態です。鼻瘤の主な病態は皮膚肥厚及び皮脂腺の肥大です。鼻の閉塞の可能性もあります。肌の余分な層を除去するために、外科的治療の選択肢に加えて、CO2レーザーとEr:YAGレーザーが適応されます。

炭酸ガスレーザー(CO2 レーザー)

炭酸ガスレーザー(CO2 レーザー)とは、通常、黒子やいぼの治療、止血に使われるレーザーです。現在、炭酸ガスレーザーによる鼻瘤の治療が一般的に行われております。皮膚肥厚、肥大した皮脂腺の除去の治療において最も一般的に使用されるレーザーです。

炭酸ガスレーザーは細胞内及び細胞外の液体を標的とする10600nmのスペクトルの赤外線の一種を放射しています。レーザーの吸収により組織の蒸散、除去を行います。CO2 レーザーは焦点モード及び非焦点モードがあります。光線と皮膚の表面の間の距離に応じた焦点モードは、組織の切開機能を持ち、非焦点モードは、組織の蒸発を引き起こします。また、直径0,5mm以下の血管に対して凝固を引き起こします。美容上より効果的な結果を得るためには、非焦点モードにて創縁部をよりスムーズにすることができます。

CO2レーザーで鼻瘤の過剰な組織をレーザーで除去した後、傷が上皮化するまで2週間ほどかかる場合があります。副作用は、治療部位の赤み、色素沈着が含まれます。傷の深さ次第で傷の治った後の赤み、色素沈着は4週間から6ヶ月をかかってしまいます。

Erbium:yttrium aluminium garnet (Er:YAG) lasers

Er:YAG レーザーとは、2940nm波長の光線を放射するフラッシュランプ色素レーザーです。液体で吸収されやすく、すなわち組織の蒸散及び焼灼に使われます。CO2レーザーと比較すると、組織の破壊及び損傷の深さをより良く制御することができ、治癒にかかる時間を短縮することができるとされています。傷の治癒後の赤みは1週間から4週間程度と炭酸ガスレーザーと比較すると短縮されます。Er:YAGでも術後の瘢痕形成、及び色素沈着のような副作用が見られます。

上記よりEr:YAGの方がメリットが高いように思えますが、Er:YAGは日本では保険適応がなく、薬事承認も降りていないことがほとんどですので、現実的にはよく普及し、保険適応、薬事承認を通過している炭酸ガスレーザーによる治療がメインとなります。
当院でも鼻瘤の治療は炭酸ガスレーザーによる治療を第一選択としております。

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酒さの原因

酒さの原因

酒さのはっきりした病因は未だにわかっていません。いくつかの病因が考えられており、例えば、遺伝的素因、血管反応異常、血管調整機能の変化、ヘリコバクターピロリ菌という細菌の感染及びdemodex folliculorum(毛包虫)という寄生虫の増殖が病気の誘因、発症に影響するものと推定されています。

脂漏(皮脂の過剰な状態)、日光、高血圧、及び心因性の要素も病因として考えられていますが、果たして本当にトリガーとなりうるのかどうかは判明されていません。

遺伝的な病因

酒さは北部ヨーロッパ人あるいはケルト人、青い目を持つ人、及び色白の方によく見られる為、遺伝的な病因は明白です。酒さ患者様は、一般人口と比較すると、酒さを持つ血縁者がいる確率は4倍以上となっています。しかし関与している遺伝子はまだ同定されていません。
現在、酒さは、皮膚表面の細菌そうの乱れ、血管及び神経学的の異常信号、免疫系の調節機能障害の組み合わせによって、皮膚の敏感さや炎症が引き起こされた結果、発症すると考えられています。

血管系の病因

血管系の異常は、顔の紅斑、紅潮を理解するための主要な要因の一つです。

ほとんどの酒さの患者さまは紅潮のエピソードをお持ちです。紫外線などの刺激に対する血管の反応亢進、血流増大傾向にある方が酒さになりやすいという説があります。
この仮定を支持する根拠として、酒さの患者さまでは実際に病変部の血流が増えていることが検証されています。

紅潮を引き起こす要因、例えば感情的なストレス、辛い食べ物、温かい飲み物、高い環境温度や閉経は、酒さを悪化させます. また、α1アドレナリン受容体刺激薬(すなわち血管収縮薬)を酒さの患者さまの皮膚を塗った後に紅斑及び紅潮が消失したという実証研究により血管反応性亢進が酒さの主要な原因であることが示されました。血管反応性亢進は、主に酒さ患者様の皮膚における以下の三つの因子の発現の上昇によって示されています。それは血管内皮増殖因子(VEGF)、CD31、及びリンパ内皮マーカーD2-40です。

血管内皮増殖因子(VEGF)は、血管の形成を刺激する細胞によって産生されるシグナルタンパク質です。VEGFは、血管内皮細胞を増殖させ、血管の透過性の増加させます。後述するように、紫外線照射は、皮膚においてVEGFを誘導します。そして、それは紫外線を浴びた後に、酒さが増悪することの機序に関与しています。

CD31は、血小板、単球、好中球、及びT細胞のいくつかのタイプの表面上に現出され、内皮細胞間結合の大きな割合を占めています。CD31は、白血球の移動、血管新生、インテグリン活性化に関与しています。
D2-40はリンパ管内皮に現れるタンパク質で、それが増えているということはリンパ管がたくさん作られていることを表します。

酒さの患者様の病変部の肌ではVEGF、CD31、D2-40が増えていることがわかっており、それはすなわち、血管やリンパ管がたくさん作られている状況であることが示唆されます。

先天性免疫系

自然免疫系が活性化すると、通常は皮膚中のサイトカインおよび抗菌分子の増加につながります。しかし、酒さ患者において先天性免疫系は正常に働かず、異常な炎症性サイトカインの放出及び抗菌ペプチド(AMP)の応答に繋がります。カテリシジン(白血球及び上皮細胞に発現する抗菌ペプチド)は、重要な細菌防御分子であり、酒さの血管系病因の引き金になるものであると考えられます。カテリシジンを注射した動物の研究は、ウサギにおいて血管新生、ならびにマウスでは血管拡張を示しました。

カテリシジンの中のいくつかは、酒さの患者様において、血管系異常、及び過剰な炎症反応のいずれの引き金にもなり得ることが知られています。
重要なのは、酒さで見つかったカテリシジンペプチドの型は、正常な皮膚より種類が豊富なばかりではなく正常な皮膚の型とは異なっているということです。これらのカテリシジンペプチド型は、白血球遊走、血管新生、及び細胞外マトリックス成分の発現を促進します。カテリシジンは、セリンプロテアーゼカリクレイン5(KLK5)によって、その活性型、LL-37に変更されます。

酒さ患者における、両方のLL-37及びKLK5も、正常な皮膚とは異なっていることがわかっています。
これらの分子が酒さの患者さまの皮膚の過剰な炎症、血管新生に関与していると考えられています。

活性酸素 (ROS)

最近の研究では、酒さが好中球などの炎症性細胞によって放出される活性酸素に関連していることを示唆しています。活性酸素の過剰な産生、もしくは抗酸化物質が十分に作られない状態は、酸化ストレスとして知られている状態を作ります。酸化ストレスは皮膚ガン、皮膚の老化などとも関係し、酒さを含む多くの炎症性皮膚疾患において重要な役割を果たしていると考えられています。
酒さの患者様の皮膚では、健康な皮膚と比べて活性酸素のレベルが高いことがわかっています。テトラサイクリン系抗生物質、アゼライン酸、メトロニダゾール、レチノイド、エリスロマイシン、アジスロマイシンといった薬剤が酒さに効果があるのは好中球から活性酸素が放出されるのを抑制するためだと考えられています。

また紫外線を浴びることで皮膚の活性酸素が発生し、炎症反応を引き起こし、コラーゲンなどの組織を変性させることがわかっています。酒さの患者さまは紫外線を浴びると症状が悪化しやすいことが有名で、それはすなわち上記のような活性酸素を介したメカニズムが想定されています。

プロテアーゼ

プロテアーゼは、タンパク質を分解する酵素であります。プロテアーゼの活性が酒さの原因の一因となっている可能性があります。例えばセリンプロテアーゼカリクレイン5(KLK5)はカテリシジン(LL-37)を活性化する酵素として同定されたます。LL-37は、上記のように酒さの血管系の病因を引き起こす因子としてしれています。またKLK5は皮膚の炎症にも関与している可能性があります。
マトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)はコラーゲン、エラスチンなどの組織を分解するプロテアーゼですが、そのバランスの崩れが、酒さの発症と関係している可能性があります。酒さでよく使われるテトラサイクリン系の抗生物質はMMPsの働きを抑制することで酒さを改善させていることが示唆されています。

細菌

多くの研究で、何らかの細菌が、酒さの原因として重要な役割を果たしていることを示唆しています。毛包、皮脂腺やまぶたのマイボーム腺に寄生存在しているデモデックスという微小なダニが酒さの発症と関係しているのではないかと考えられています。デモデックスは、ほとんどの人では、病気を引き起こさずに人と共生することと考えられています。しかしデモデックスが増えすぎると、毛包の機械的閉塞によって、またはその他の微生物のためのベクターとして作用することにより、炎症やアレルギー反応を引き起こすことで酒さの発症に関与しているのかもしれません。
デモデックスの細胞膜成分は、前述のKLK5発現および活性を増加させるいわゆるトール様受容体2(TLR2)を、活性化すると想定されています。TLR2は、Toll様受容体の一つであり、免疫系における重要な役割を果たしています。TLR2は、膜タンパク質、特定の細胞の表面に発現され、異物を認識し、免疫系の細胞に適切な信号を送る受容体です。すなわちデモデックスが増えすぎると皮膚の免疫系を過活性化させる可能性があるわけです。

デモデックス以外にも、胃炎や胃がんの原因となるヘリコバクター・ピロリ(HPI)と酒さとの関係を示した研究は多く、酒さの患者さま、健常人と比べてHPIに感染している可能性が高いとされています。

どうしてHPIが酒さの発症に関与しているのかは不明ですが、一説には活性酸素との関連が報告されています。HPIに感染している方は、活性酸素のレベルが高まっていることがわかっています。上記のように活性酸素の上昇は酒さの発症と密接な関係があるようです。
しかし、これらの細菌は、酒さの後の段階において役割を果たしていますが、酒さの初期段階で発症を引き起こすという証拠はありません。酒さは単に細菌によって発生するのではなく、複数の要因、複雑に相互作用してる皮膚のシステムの調節不全による先天性免疫応答の亢進によって発症する炎症性疾患であるからです。

環境病因

酒さの患者さまは、多くの色んな環境要因は、たとえば辛い食べ物、運動やストレス、紫外光、風、熱(熱い風呂)、および寒冷への暴露によって悪化することが知られています。

特に紫外線は重要で

  • ・紫外線はカテリシジンを過剰に誘導し、炎症を引き起こす。
  • ・紫外線はFGF2やVEGF2を誘導することで血管、リンパ管の増殖を促す。
  • ・紫外線は皮膚の活性酸素を増やす。

という3つの理由で酒さを悪化させます。

食べ物との関係は、それほどはわかってはいないのですが、

  • ・熱い飲み物、特に熱いコーヒー、お茶
  • ・アルコール飲料
  • ・辛子
  • ・シナモン

が増悪因子として知られています。
これらを避けることで、酒さが改善する例が報告されています。

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酒さの症状

酒さの症状

酒さは、成人において慢性的で一般的な病気であり、顔などの露出度の高い部分に症状が現れる病気です。この症状は、男性よりも女性、さらに若い患者よりも三十歳以上の人によくみられます。酒さは一般的に、色白の人(肌タイプ1やタイプ2)によくみられます。もちろん皮膚の色が濃い方にも発症することもあります。この病気の典型的な症状として、2つのグループに分類されます。

主症状

下記の症状が、1つもしくはそれ以上ある場合、酒さを疑います。

  •  ・顔、首に一時的な赤らみを繰り返す(ほてり、一過性紅斑)
  •  ・顔面の特定の部分の赤らみ、ほてりの症状が続く (持続性紅斑)
  •  ・丘疹や膿疱を反復する
  •  ・毛細血管拡張症

副症状

主症状と合わせて以下の副症状が出現することがしばしばあります。 副症状が単独で発症することもあります。

  •  ・熱感やチクチクとした痛み
  •  ・乾燥肌
  •  ・浮腫
  •  ・眼の症状、例:眼瞼炎など
  •  ・ドライアイ、感光性、反復性麦粒腫
  •  ・顔の周り(頭皮や耳など)にも主症状が現れる
  •  ・皮脂腺の過形成、腫大

進行

酒さは典型的には以下のように進行していくとされています。

ステージ1

酒さの初期において、顔が繰り返し赤くなる、火照るという症状が現れます。急性反復性顔面紅斑と呼ばれています。20代前半の早い時期にこれらの症状が現れることもあります。当たり前ですが、その症状は毛細血管内の血流の増加と関係しているようです。急な皮膚の赤らみは、食事や急な体温変化、温かい飲み物やアルコール類の摂取などの後に起こることが多いです。

ステージ2

ステージ2に進行すると顔が常に赤っている状態となります。
顔の皮膚表面の血管拡張と顔面紅斑が常にみられ、くも状血管腫、毛細血管拡張症と呼ばれてる症状が現れます。

ステージ3

ステージ3は酒さの最も特徴的なものです。患者様は顔、赤みほてりに加え、ニキビに似た紅色丘疹や膿疱を伴うようになります。

ステージ4

ステージ4は主に男性に見られる症状で鼻瘤が特徴です。いわゆる団子鼻です。鼻が赤く膨らみ、腫瘤を作り鼻が変形していきます。病理学的には皮脂腺の肥大増生が見られます。

分類

同時に発症しやすい兆候や症状に合わせて、また次のサブタイプに分類する方法もあります。

  • 1型. 紅斑毛細血管拡張型
  • 2型. 丘疹膿疱型
  • 3型. 瘤腫型
  • 4型. 眼型

紅斑毛細血管拡張型酒さ(1型)

この最もよくある1型酒さは、繰り返すほてり(一過性の赤らみ)や持続的な顔の紅斑が特徴です。2型の丘疹膿疱型酒さのニキビのようなプツプツとした吹き出物が、発症前や同時に症状が出ることがあります。拡張した毛細血管が見えることもよくあります。これらの症状が見られる患者は、強い敏感肌を持っている傾向にあります。そのため紫外線や温度差、刺激のある化粧品、ちょっとした刺激でチクチク・ヒリヒリ感などを感じることになります。

丘疹膿疱型酒さ(2型)

丘疹膿疱型酒さは、持続的なほてりに加え、紅斑や繰り返す丘疹・膿疱が見られ、乾燥感も伴う酒さです。主に顔の中心(鼻周囲)に、かゆみや灼熱感を感じることがあります。 くも状血管腫(皮膚表面の毛細血管拡張症)を引き起こし、紅斑のように見えることもあります。 このサブタイプは、一般的に中高年に発症し、男性より女性に多く見られます。2型の症状として、1型の酒さの顔の赤みやほてりと同時に見られたりすることがあります。2型酒さの丘疹や膿疱は、ニキビにも似ています。ニキビとの違いは、酒さ場合はコメドと呼ばれる毛穴のつまりが見られない点です。

瘤腫型酒さ(3型)

瘤腫型酒さは男性によくみられます。この酒さは、鼻(鼻瘤)が特に有名ですが、その他、顎(顎腫瘤)、額(額腫瘤)、耳(耳腫瘤)そして眼瞼(眼瞼腫瘤)にも症状が出ることがあります。鼻瘤は最もわかりやい典型的で、皮膚が厚くなったり、特に鼻周囲に小結節ができたり、凸凹の表面によって独特の肌質をしています。鼻が凸凹し、膨らみ変形していきます。毛細血管拡張症も見られます。鼻瘤は、多量飲酒によるものだと考えられていましたが、 現在ではその説は否定され、アルコールを摂取しない人々にも多量摂取する人と同様に発症することがわかりました。

眼型酒さ(4型)

眼型酒さは、このサブタイプの中で最も稀少で、眼やその周囲に症状が出ます。4型酒さと診断される患者の多くは、皮膚症状も伴っています。しかしながら、酒さ患者のうち2割の患者には、皮膚症状がないこともあります。また皮膚の症状の前に、眼の兆候や症状が現れることもあります。 眼症状の重症度と顔面酒さの重症度は、相関はないと考えられています。眼のタイプの症状は、軽い炎症症状、異物感、乾燥、目のかすみといった軽症のものから重度の炎症、目の表面の損傷、炎症性角膜炎といったものにまで及びます。酒さ患者さまは、目のゴロゴロした感覚を訴え、眼瞼炎及び結膜炎を発症します。他の目の症状は、眼瞼縁及び結膜の毛細血管拡張、眼瞼の厚み、眼瞼の痂皮や隣接、眼瞼の皮脂腺の閉塞、細菌感染からなる霰粒腫、点状表層角膜症、角膜浸潤、角膜潰瘍、角膜の傷、血管新生など多様な臨床像を呈します。しかしながら、酒さにおいて、視覚障害が現れることは稀です。

酒さには様々な症状がありますが、顔面の赤み、ほてりは最もよくある重要な初期の特徴です。特に1型や2型において診断に重要な特徴です。

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