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化膿性汗腺炎の病因と臨床経過

化膿性汗腺炎の病因

化膿性汗腺炎はかつて膿皮症と呼ばれていた疾患です。化膿性汗腺炎の病因は、毛孔の閉塞、毛包破裂、およびその後の変化につながる二次的な炎症です。化膿性汗腺炎は、遺伝的、物理的刺激、ホルモン、およびその他の影響を受けます。いくつかの仮説があり、中にはまだ証明されていないものありますが、以下のような順序で病状が進行して行くと考えられています。化膿性汗腺炎の患者は、皮脂腺と毛孔の管の接合部で弱い構造支持の領域で最初にトラブルが起こると考えられています。ホルモンによる刺激で管のケラチノサイトの生産が過剰に促進されると、ダクト内で表皮層が分厚くなり、毛包が閉塞するようになります。この領域に圧力がかけられ、ダクトの壁が破れ、横に破裂し、内容物が真皮層深くにばら撒かれます。
毛包の内容物が皮内、皮下に漏れると、自然免疫系を刺激し、炎症が起こります。治癒過程は、毛包ユニットの正常な解剖学を修復しようとします。修復が失敗した場合、壊れた毛包ユニットは3つの反応を引き起こします。

・最初の反応は、自然免疫系によって引き起こされる炎症反応です。これは 化膿(かのう)および組織の破壊を引き起こします。
 それは異物の反応および広汎な瘢痕に繋がります。
・第二に、破壊を生き残った幹細胞により瘻孔(トンネル状の構造物)が作られ、皮肉なことに瘻孔があるせいでさらに感染と炎
 症が繰り返されます。
・第三に、ほとんどの場合、炎症細胞と上述の化膿した分子を包埋(ほうまい)したゲル(増殖性ゼラチン状の塊)が生成されま
 す。

増悪を促進するホルモンが増えると、第三で作られた増殖性ゼラチン状の塊があるせいで瘻孔および炎症を永続させ、悪循環のようにこの塊の容積を増加させます。真皮と皮下の炎症は、この物質が除去されるまで落ち着くことはありません。
通常の病変のごく初期の病変は、全く瘢痕を残すことなく完治する可能性があります。化膿性汗腺炎は無秩序に分布する小さく、赤い、硬結性の丘疹、膿疱、または結節として発生します。数週間または数ヶ月に渡り軽度~中等度の痛みに漠然としたかゆみを引き起こします。急性、重度の、深刻な症状は、より広範囲に及ぶ、深い、痛みを伴う病変を示し、活動を制限することがあります。これらは一般的に間擦(かんさつ)部であり、腋窩(えきか)、鼠径部(そけいぶ)、内股(うちまた)、肛門と会陰領域、乳房(ちぶさ)と乳房領域、臀部(でんぶ)、恥骨、陰嚢(いんのう)、外陰部、胸部、頭皮、および耳介後部領域を含みます。女性は脚の付け根、腋窩、乳房の下に発症しやすく、男性は腋窩、鼠径部、肛門領域に発症しやすいです。

結節は、排膿され、痛みが落ち着くまでに7から15日程度かかります。患者様は、ある領域(例えば鼠径部)のアクティブな丘疹、結節、および排膿される瘻孔を提示し、別の時期には他の場所(胸やお尻の周り)にも丘疹、膿疱を提示されます。これらの病変が行き来します。
やや重症化すると、これらの症状が持続的に続くようになります。浸出液が続く瘻孔およびゲル用の増殖病変が皮下に作られ、横方向へ広がります。時に臭気のある、漿液性もしくは化膿したもの、時に血膿が排出されます。そうなると更なる慢性の瘻孔の形成につながる可能性があります。
長く続く潰瘍、赤色肉芽組織が、瘻孔開口部を囲むことがあります。治癒した後も、肥厚性瘢痕と、密なロープのような線維質の組織が作られるようになります。瘻孔からは漿液性の液体を慢性的に排出され、時に炎症を起こし腫れ、排膿し、痛みを伴う非常に炎症の強い複雑な構造物となります。
さらに時間が経つと、異常治癒が見られ、小さな窪み、瘢痕、痛みを伴わない嚢胞、時に肥大し、線維に囲まれたが出来上がります。厚いロープのような細長い帯状の構造物が皮下に認められることもあります。これらは、拘縮、リンパ管閉塞、リンパ管拡張、リンパ浮腫をもたらします。(注:日本人ではここまで悪化することは少ない)。

臨床経過

発症の平均年齢は22.1才です。症状は約19年続き、妊娠と授乳期は完全に又は部分的に症状が消失するが、その後はまた不安定になります。化膿性汗腺炎の多くは、良性、軽度、慢性的だが断続的に痛みを伴う疾患であり、急性増悪、月経前の急性増悪、閉経後の消散、数週間の寛解、または連続/断続的な急性増悪が見られます。結節、瘻孔、および傷痕の硬い瘢痕、臭い分泌物、痛み、萎縮、拘縮が混ざった病変を形成します。新しい皮下の痛みを伴う結節は、10~30日間続きます。日常の運動に大なり小なり支障をきたし、マイナーな痛みから痛みなしに歩行や座ることができないという状態にもなり得ます。排膿の臭気は顕著であり、おむつが必要となることがあります。これは社会的な引きこもり、うつおよび生活の機能不全を引き起こすリスクがあります。

化膿性汗腺炎はハーレーの臨床ステージングを使用して分類することができます。

ハーレーのステージ

Revuzらは、68.2%の患者がハーレーのステージI、27.6%がハーレーのステージ II、そして3.9%がハーレーのステージ IIIであると記載しています。
ハーレーのステージ分類

  • 1.ステージ I-一つもしくは数個の膿瘍形成、瘻孔なし、瘢痕化
  • 2.ステージ II-複数の再発性膿瘍との瘻孔と瘢痕化
  • 3.ステージ III-広範囲におよぶ膿瘍形成が瘻孔にて交通している状態

    罹患率・生活の質

    化膿性汗腺炎(膿皮症)という疾患名を聞いたことがないかたも多いと思いますが、可能性汗腺炎の患者様は、患者の身体的、社会的、経済的生活に非常に悪影響を及ぼし、(欧米では)蕁麻疹(じんましん)、神経線維腫症、乾癬(かんせん)、重度のアトピー性皮膚炎、軽度から中等度の乾癬、または脱毛症よりも高い罹患率があります。日本での罹患率は欧米よりは高くないかもしれませんが、膨大な患者さまがいることは間違いないです。日本ではニキビ、おでき、せつ、よう、粉瘤などと誤診されていることがほとんどです。多くは社会的に隔離されるか、孤立します。これは痛み、悪臭の排出、性器の発疹、誤診による不適当な医療、多数の損傷、長く連続的な持続期間および臀部の痛みにより座れないことの関与によります。化膿性汗腺炎の患者、特に女性は、そのせいで年間あたり平均2〜7日、仕事を休まざるを得ないという報告もあります。

    関連疾患

    化膿性汗腺炎は、重度のにきび(にきび性)、蜂巣炎、および炎症性粉瘤、毛巣洞に関連付けられています。慢性的な炎症は、SAPHO(滑膜炎、にきび、膿疱症、および骨化症、骨炎の症候群)を引き起こす可能性があります。潰瘍性大腸炎とクローン病も化膿性汗腺炎と関連づけられています。クローン病は、重症の化膿性汗腺炎の外観と似て、肛門直腸瘻、その周囲に膿瘍を形成します。
    化膿性汗腺炎は他にも多数の疾患と関連があります。化膿性汗腺炎は、炎症性腸疾患、脊椎関節症、上皮系腫瘍、膿疱症とも関連付けられています。炎症性腸疾患と脊椎関節症は、最も頻繁に関連している、合併していると報告されており、共有病因が何かあるのではないか、との疑いを提起しました。実はその共通病因は腫瘍壊死因子-α(TNF-α)で、実際にTNF-α阻害剤にていずれの疾患も治療する事ができます。

    化膿性汗腺炎の患者は非メラノーマ系の皮膚癌になる可能性が、そうでない人と比べ50%上昇する事がわかっています。また、化膿性汗腺炎の患者様は口腔粘膜の癌、肝癌を発症する可能性が高い事が分かっていますが、化膿性汗腺炎そのものというよりタバコやお酒の影響でしょう。

    その他、HSは壊疽性膿皮症との関連を示し、サイトカイン不全を含む病因を共有することが示されています。

    合併症

    上記通り化膿性汗腺炎と痔瘻と肛門直腸瘻と関節症などは関連がある事がわかっています。化膿性汗腺炎により発症したリンパ浮腫がリンパ管拡張症までに進行し得ます。蜂巣炎の繰り返しはまれであり、敗血症は特にまれであり、骨髄炎は例外的です。稀に大規模な性器浮腫、代謝合併症、貧血、低タンパク血、アミロイドーシスが発生する可能性があります。

    合併症:

    • ・尿道、膀胱、直腸瘻
    • ・関節症
    • ・感染症、蜂巣炎、腰硬膜外膿瘍、仙骨の細菌性骨髄炎
    • ・リンパ浮腫
    • ・慢性炎症性疾患からの合併症
    • ・アミロイドーシス
    • ・皮膚癌(主に扁平上皮癌)
    • ・拘縮と四肢の運動の制限
    • ・倦怠感、うつ、自殺

    上記通り、化膿性汗腺炎のある部位では、皮膚癌(主に扁平上皮癌)が発生しやすいことはよく知られていますが、化膿性汗腺炎から発生したお尻と会陰の扁平上皮癌は幸い進行が遅いのが特徴です。理由ははっきりしませんが、化膿性皮膚癌は男性に顕著です。診断の遅れは予後不良に至ります。化膿性汗腺炎患者様は、頬粘膜の癌と原発性肝悪性腫瘍の発生率が高いことわかっています。これは喫煙や飲酒というライフスタイルによって説明されます。

    そのほかにも化膿性汗腺炎の患者様の腋窩と鼠径部では、厚いプラークとロープのような傷跡ができ、四肢の動きを束縛、制限されてしまうことがあります。会陰の瘢痕化は、肛門、尿道、直腸狭窄を引き起こす可能性があります。そのような患者はネガティブになり、頻繁にうつ状態となり、自殺の危険性があります。

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    化膿性汗腺炎の治療法

    化膿性汗腺炎の治療法

    化膿性感染炎のための単一の効果的な治療や治療法はありません。唯一の評価が確立された方法は重度の化膿性感染炎(ハーレーステージIII)のための外科的手術療法で幅広く行われています。化膿性汗腺炎の治療は、食べ物などの生活習慣、医療、手術の戦略と、創部に対して穏やかで傷つけないケアが必要です。
    化膿性感染炎のケアは、一般的に経験に基づいて行われ、盲検試験の証拠を欠いています。
    まず日常生活においては、病変部は穏やかに洗い衛生的に保つ必要があります。臭気があるところでは、トリクロサン(抗菌剤)が付いている防腐剤の洗剤は使用してもいいでしょう。タオルなどを使わず手だけで病変部を洗う事が大事です。病変部は摩擦や刺激を避けます。
    病変がある部位は、外傷、熱、湿気、発汗および摩擦を避けるといいでしょう。それらにより毛包閉塞と毛包破裂をある程度避ける事ができます。あまりタイトでない風通しの良い衣類を身に着けるようにしましょう。またタイトな衣類または合成線維を使った衣類を避けたほうがいいでしょう。更に病変をつねったり圧迫しないようにしましょう。そして理想的な体重にダイエットすることも大事です。加えて生理用品やタンポンにもこだわり、喫煙を中止しましょう。すべてのタバコ・ニコチン代替品もやめましょう。
    治療は、病変の種類・ハーレーのステージ・フレア(急性増悪)の頻度と患者様の目標によって異なります。新しい病変の予防を目指し、そして病気の活動範囲と進行状況を最小限に食い止める事が重要です。

    一般的な治療方は以下のような方法です。

    教育・支援

    ■環境の改善

    • ・病変部の熱、発汗、肥満、摩擦を減らす。
    • ・ゆるい服、ボクサータイプの下着。
    • ・レーザー脱毛を行う、制汗剤を使う。

    ■乳製品の摂取を控える、低血糖負荷の食事に切り替える、太っている場合は減量する。喫煙をやめる

    医療管理総論

    ダイエットや栄養代謝管理は必須です。治療としては抗生物質の投与、ホルモンの調整、および免疫抑制薬(例えば、コルチコステロイド、シクロスポリン、生物学的製剤)。レチノール誘導体であるAcitretinとイソトレチノイン低用量療法は、穏やかな予防療法として、初期の化膿性汗腺炎の維持療法には検討する価値があります。

    ハーレーステージ I

    ■クリンダマイシン1%ゲルを朝晩塗布

    ■抗生物質の内服の短いコース7–10日

    • ・テトラサイクリン系の場合:ドキシサイクリン(ビブラマイシン)内服, ミノサイクリン(ミノマイシン)内服
    • ・アモキシシリン/クラブラン酸(オーグメンチン)内服
    • ・クリンダマイシン内服

    ■亜鉛内服、病巣内トリアムシノロン(ケナコルト)注入、ミニunroofing(病変部を切開し開放する事)

    ハーレーステージ II

    以下の治療法を組み合わせて行います。

    • ・クリンダマイシン内服 + リファンピシン内服×3ヶ月、またはダプソン(DDS)内服
    • ・-病巣トリアムシノロン(ケナコルト局所注射)

    ■維持療法

    • ・テトラサイクリン系内服またはダプソン(DDS)内服
    • ・亜鉛内服

    ■瘢痕/瘻孔 (外科治療)

    • ・新しい病変に対してはミニunroofing(病変部を切開し開放する事)
    • ・すべてのアクティブな病変に対して広範囲にunroofing

    ハーレーステージ III

    以下の治療法を組み合わせて行います。

    • ・抗炎症剤(NSAIDSなど)の内服
    • ・抗生物質-クリンダマイシン + リファンピン
    • ・ステロイド-プレドニゾンの短期間の内服、トリアムシノロン(ケナコルトの局中)またはシクロスポリン(免疫抑制剤)の内服
    • ・生物製剤-TNF阻害剤(インフリキシマブ、アダリムマブ、エタネルセプト)、ヒト型抗ヒトIL-12/23p40モノクローナル抗体
    •  製剤(ウステキヌマブ)

    ■外科治療: unroofing、病変の完全切除(悪性腫瘍のように完全に取り切る)

    食生活と代謝管理

    乳製品の多量摂取と高血糖負荷の食事によって、遺伝的に毛包ユニットの感受性が高い人では毛包の閉塞が起こり、ニキビの場合と似たような機序で化膿性汗腺炎が発生します。肥満により化膿性汗腺炎が悪化するのは明らかで、減量は化膿性汗腺炎の優れた戦略の一部であると言えます。肥満手術も場合によっては有効です。肥満と化膿性汗腺炎の深い関係のため、医師は化膿性汗腺炎患者に包括的な食事管理をアドバイスする義務があり、乳製品摂取量を減らす事、低血糖負荷の食事、および減量へコミットメントするようにアドバイスするといいでしょう。持続的な栄養カウンセリングが必要になる場合もあります。

    抗生物質

    これらは効果については実は、それほど大規模な研究されていないが、化膿性汗腺炎のために広範囲に使用されています。これらの抗生物質は、化膿性汗腺炎の原因ではなく、あくまで炎症を抑えているに過ぎないとも言えます。日本では化膿性汗腺炎に対して抗生物質の投与のみで治療されている場合が多くありますが、それは明らかな誤りであると言えるでしょう。抗生物質はまた、臭気を軽減し、痛みを抑えることもあります。局所クリンダマイシン1%ゲルや経口抗生物質(ドキシサイクリン、ミノサイクリン、エリスロマイシン、アモキシシリン/プラスクラブ酸、リファンピシン、セファロスポリン、DDSその他)が使用されている。

    アンドロゲン

    酢酸シプロテロン(アンドロゲン受容体拮抗薬) エチニルエストラジオール50μ(エストロゲン受容体作動薬)と組み合わせる6ヶ月間の治療は、19ヶ月で24名のうち7名患者をクリアしたと報告されています。
    フィナステリド5-10 mg/dは、通常、前立腺癌・前立腺肥大症・男性型脱毛症に使用され、海外では化膿性汗腺炎で使用されています。小児の場合は特によく反応しているが日本では使用するのは不可能でしょう。デュタステリドも当然、化膿性汗腺炎の治療に役立っていますが”オフラベル”です。男性と女性どちらも化膿性汗腺炎のクリアに役立っていますが、日本では女性に使用するのはおそらく不可能でしょう。両者は女性には催奇形性であるため、注意して使用する必要があります。経口避妊薬が考えられている場合、エチニルエストラジオールやドロスピレノンを含むものとスピロノラクトン50-100 mgを組み合わせることが好ましいとの報告があります。

    免疫抑制薬

    化膿性汗腺炎の患者は、重大な局地的炎症と高い免疫反応を持っています。過剰な免疫反応は、化膿性汗腺炎の病因そのもので、免疫抑制剤により治療を行うのは理にかなっています。これらは、病気そのものを完全に治すことはほとんどないが、障害を制御し、食事療法、代謝管理、抗生物質内服、および手術の補助と考えられています。
    コルチコステロイドは局所と全身の炎症を軽減するため、炎症による症状を改善させるために使用されています。高用量の全身ステロイド投与は急性の化膿性汗腺炎の増悪症状に対して使用した場合、迅速に痛みと炎症を軽減させます。病巣ステロイド(少量のトリアムシノロンアセトニド5–10 mg/mL)は、急性の早期病変に注入することで迅速な解決に効果です。シクロスポリン(4-5mg/kg/day)は、いくつかの症例で役立つことが報告されています。メトトレキサートは、化膿性汗腺炎にうまく機能しないようです。

    レチノイド(acitretinとイソトレチノイン)

    レチノイドは催奇形性があるので注意が必要ですが、低用量で使用することで新しい毛孔閉塞を減らすのに有効です。
    ハーレーのステージIIまたはIIIの化膿性汗腺炎の患者様に9–12ヶ月にわたってacitretin(平均用量0.6 mg/kg毎日)と局所療法のみて治療された12名の患者様すべてで改善が見られました。9名の患者は、治療の終了後6~45ヶ月の間、寛解を維持しました。
    低用量のイソトレチノインによる治療は賛否両論ありますが、いくつかの症例で長期的な予防のために有用である事がわかっています。しかし場合によってはイソトレチノインの使用中にフレア(急性増悪)を引き起こす可能性もあります。
    68症例を対象としたある研究では、23.5%は完全に病変はクリアになり、11症例は改善しましたが、29症例は効果なし、もしくは副作用またはその両方のため研究から脱落しています。

    生物学的製剤

    TNF阻害剤による治療とウステキヌマブは、ハーレーステージIIおよびIIIの化膿性汗腺炎の炎症を減らすのに有効です。HSの一部の患者は、1年間、TNF阻害薬で治療された場合、アダリムマブで平均21.5 ヶ月およびエタネルセプトで平均9.5 ヶ月の再発までの寛解期間が見られました。インフリキシマブは、痛みの強さと病気の重症度を改善させ、生活の質を向上させます。問題点としては、治療をやめるとすべての薬剤で再発が見られ、かつ、費用は高いです。

    化膿性汗腺炎に対するアダリムマブ40mgの隔週投与は、大きな治験が行われており、非常に控えめな結果をもたらしています。ステージ I-III HSを持つ154名の大人がロードとアダリムマブの増加用量で治療された無作為化試験は、プラセボ(偽薬)では4%の臨床的な反応が見られたのに対して、アダリムマブでは58.9%の患者様に臨床的な反応が見られました。

    皮下注射をされたウステキヌマブ、インターロイキン(IL)-12/23阻害剤は、中等度重度の難治性の化膿性汗腺炎のいくつかの患者で臨床的は反応が見られると報告されています。

    生物学的製剤は、腫れ、炎症を減少させ、術前の排膿、unroofingと切除手術を簡素化しますが、瘻孔や、治療に耐性がある侵襲的増殖ゼラチンの量を減らしたりはしません。生物製剤は治療法ではなくあくまで対処療法であるということは知っておいた方がいいでしょう。改善が永続的であることは滅多になく基本的には再発します。そのため、生物学的製剤を使用したからと行って手術療法がなくなるというわけではないです。
    これらの薬のリスク対ベネフィット比は未定です。生物学的製剤には耐性炎外陰膣炎を含む重要な副作用が報告されています。有効性、費用効果、および安全性は、他のHS治療を比較する研究が必要です。

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    化膿性汗腺炎の原因

    化膿性汗腺炎の原因

    化膿性汗腺炎はかつて膿皮症と呼ばれた疾患です。化膿性汗腺炎病因は完全には理解できていません。最近の研究は、病気に関与するメカニズムが少しづつわかりつつあります。HSの病態の主な原因部位は、毛包ユニットです。毛孔閉塞、毛包の破裂と異物型免疫応答は、化膿性汗腺炎の発症の必要条件です。遺伝的要因と喫煙、微生物のコロニー形成、肥満など環境的要因は、すべてに化膿性汗腺炎の発症に貢献しています。この病気に対して新しい治療法の選択肢を開発するために、化膿性汗腺炎に関与する炎症メカニズムに焦点を当てた人種を越えた研究が必要です。

    遺伝的要因

    化膿性汗腺炎は遺伝的傾向が強く、常染色体優性遺伝パターンが指摘されていますが、特に原因遺伝子は発見されていません。おそらくいくつかの遺伝子が関与しているのでしょう。

    毛包閉塞

    HS病因における(ニキビ同様に)毛包漏斗部(毛穴の出口付近)の閉塞は確実です。病気の期間に関係なく、毛包漏斗部の閉塞は、化膿性汗腺炎の初期においてよく見られます。Von Laffertらは、化膿性汗腺炎の標本の大半毛包の出口周辺のの過剰角化と過形成が見られ、その結果毛包が閉塞していると記載している。毛包周囲炎と破裂した毛包も頻繁に観察されました。毛包の閉塞は、毛包の拡張につながると、いずれ毛包が破裂し、細菌や角質を含む内容物が皮内、皮下にばら撒かれます。この過程では、好中球、リンパ球の遊走を含む積極的な炎症反応を誘発します。

    ここで化膿性汗腺炎においてどうして毛包閉塞が発生するのか?ということについては種々なメカニズムが提唱されています。毛包漏斗部(毛孔出口あたり)には多様な細菌そうが生息しているため、毛包・皮膚免疫システムの欠如は、微生物の増殖につながり、その結果、免疫反応が誘導され毛孔の閉塞に繋がるというのが一つの説です。一方で別の説では、化膿性汗腺炎の方では毛孔の微生物が増えすぎるのではなく、無害な微生物に炎症反応をもたらす、すなわち過剰に免疫が誘導された結果、毛穴が閉塞してしまうという説です。2018年現在、過剰な免疫反応を抑制する生物学的製剤の化膿性汗腺炎に対する有効性が確認されており、その結果、後者の説の方が正しいのではないかという風に考えられています。

    感 染

    HSの病因として細菌が何らかの役割を果たしているということは長い間、考えられていることです。一般的に細菌は、HSの病因に直接的に大きな役割を持っていないことが合意されているが、慢性的な再発病変において二次的な細菌感染により破壊的なプロセスを引き起こしうることはよく知られています。ただしこの疾患において二次的な細菌感染に夜、敗血症と全身性疾患は例外的に稀です。

    ホルモン因子

    性ホルモンと化膿性汗腺炎の間に強い関係が存在します。化膿性汗腺炎は女性に多いことは、アンドロゲン(男性ホルモン)に対し女性がより感受性が高いことが示唆されます。大半の化膿性汗腺炎患者の血清アンドロゲン値はそうでない人に比べてには上昇はありません。これはすなわちアンドロゲンに対する末端器官の感受性が化膿性汗腺炎の発症において重要であるこということを示しています。これは、アンドロゲン受容体の抑制において Fox01の役割は大きい。
    アンドロゲン受容体へのアクセスの増加は、インスリンとインスリン様成長因子-1 (IGF-1) によって媒介されますが、いうまでもなくそれらは両方の慢性的な食事の要因によって増加されます。インスリン、IGF-1の分泌を分泌を促す食事、すなわち欧米化され食事は化膿性汗腺炎を発症、悪化させうるということになります。女性では、化膿性汗腺炎は初潮前後に発生し、月経前に悪化し、妊娠とともに改善し、閉経後の消失していきます。抗アンドロゲン療法は、男女両方のHS患者に役立つ。フィナステロイド(AGAの治療で使われる5α-還元酵素タイプ Ⅱ選択的阻害剤)は、5α-DHTのレベルを低減させることで、化膿性汗腺炎を改善させることが知られています。

    免疫因子

    化膿性汗腺炎は通常、熱が出たりショックになったりという全身の炎症反応が出ないことが普通です。敗血症(全身に菌が回った状態)もなく、リンパ管炎は稀で蜂巣炎(ほうそうえん)になる程度です。化膿性汗腺炎の原因が明らかである場合、その問題物質が除去すると、化膿性汗腺炎は抗生物質なしで自然治癒します。これは、化膿性汗腺炎の病変部で起こっていることは、自然免疫システムによって局所レベルで発生する炎症であることを強く示唆しています。免疫システムの過剰な反応が化膿性汗腺炎の症状を悪化させます。早期病変の病理学的検査では、T-リンパ球とサイトカインを中心とした先天的および後天性の免疫応答が多種多様に起こっていることを示しています。残念ながら、炎症を一次的に押さえたところで病気を治すことはできません。

    肥満と物理的な外力

    毛包ユニットの支持構造の弱さのため外的な力により毛包が破裂してしまうという潜在的な可能性はかなり高いです。患者は病変をつまんだりつねったりすることで病変を悪化させてしまいます。肥満は皮膚にかかる圧力および擦れる力を増加させ、症状を悪化させます。血中ブドウ糖およびインシュリンのレベルを上げる食事の習慣と肥満との関係はより重要です。これは、アンドロゲン受容体を過敏にし感受性を高めさせます。毛穴のつまりを悪化させる、インスリン抵抗性を引き起こし更なる肥満を高めるといった困った効果があります。化膿性汗腺炎は細身の人よりも太り気味の患者に発症しやすく、悪化しやすいのはこのためです。

    肥満は皮膚同士そして皮膚と衣類の摩擦の増加によりHSを悪化する可能性があります。これらの機械的ストレスは、毛包閉塞と毛包破裂を増加させることにより、化膿性汗腺炎を発症、悪化させうると考えられます。機械的圧縮、摩擦、左右にねじれる力は、皮膚のいくつかの“mechanotransducer“により感受されます。そこから様々な経路を経由して線維芽細胞、角化細胞のDNAを活性化し、毛穴出口付近の表皮角質を分厚くさせます。その結果毛穴が閉塞しやすくなります。また、肥満している患者は一般的に全身的に炎症レベルが高くなっており、化膿性汗腺炎の病変部皮膚における炎症サイトカインと合わさり病状を悪化させているとも考えられます。

    喫 煙

    化膿性汗腺炎は、疫学的に喫煙に関係していることは非常に有名であり、臨床家にとっては明らかであります。タバコの煙は、何千もので成分で構成されていますが、ニコチン、芳香炭化水素、およびダイオキシンのような化合物が最もよく知られている化学物質です。これらの成分は、ケラチノサイト、線維芽細胞と免疫細胞を少なくとも2種類の受容体(ニコチン性アセチルコリン受容体とアリール炭化水素受容体)を介して活性化しています。

    毛孔のケラチノサイト(角化細胞)では表皮・角質肥厚、毛包漏斗部上皮過形成、過度の角化に繋がります。この結果、毛孔が閉塞しやすくなるというのはいうまでもありません。それだけではく、ニコチンは細胞接着を増強し、バイオフィルム形成を誘導することにより黄色ブドウ球菌の病原性を増加させ、同時に、人間のような抗菌ペプチドの合成を阻害することより細菌の侵入を受けやすい毛包の免疫をさらに弱めます。

    食 事

    成長を制御するアンドロゲン受容体は、通常、体内を循環するアンドロゲンに対して必要以上にアクセスできないように閉ざされています。上述した通り上昇したインスリンと IGF-1は、これらの受容体を開き、循環しているアンドロゲンを結合させます。インスリンと IGF-1が上昇することでアンドロゲンは、以前にアクセスできな買ったアンドロゲン受容体を利用することができます。毛包のアンドロゲン受容体を刺激すると、毛孔のケラチノサイトの過剰産生と過角化の保持に至ります。その結果、毛孔が閉塞しやすくなり、化膿性汗腺炎を発症し悪化させます。アンドロゲンは、副腎、卵巣、精巣で作られるほか、乳製品の一部、経口避妊薬、レボノルゲストレル含有子宮内デバイス (IUD)、筋肉内MPA注射(不妊治療で使われる)、および避妊薬インプラントなどがあります。

    リチウムによって発症、または増悪することがあります。

    まとめ

    結論としては、化膿性汗腺炎の患者では、上記したような様々な原因がきっかけで、毛包の常在細菌叢への異常なケラチノサイト応答で始まる無症状の炎症状態があります。その後、異常なサイトカインとAMPの生産が引き起こされます。毛包に集まった免疫細胞は、炎症サイトカインとケモカインを分泌し始めます。毛孔上皮が反応し、角化細胞が過形成になり、毛包漏斗部閉塞、嚢胞形成を促します。

    喫煙と欠陥のあるノッチシグナリング(遺伝子伝達経路)は、表皮過形成、嚢胞形成、および炎症性環境を促進することにより、このプロセスを増悪させます。嚢胞は、破裂し真皮に細菌や角質を追放し、免疫応答を引き起こします。膿瘍の形成は、毛嚢脂腺のユニットと最終的に周囲の皮膚付属器構造の破壊し尽くします。組織学的には、慢性疾患は、高密度の炎症性細胞浸潤、巨大な細胞、瘻孔、皮下膿瘍、およびそれ以降の段階で広範に線維化広がります。瘻孔は、化膿性汗腺炎において最も治療困難な状態です。

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    化膿性汗腺炎の手術および実験的治療

    化膿性汗腺炎の手術および実験的治療

    外科的切除法

    何十年もの間、HSの標準的な外科的管理は、広範囲の切除からなります。悪性腫瘍と同じようにマージン(病変の何mm外側まで切除するか、ということ。取り残しを防ぐために病変より広めにとる場合に使われる用語)を確保し、完全に切除する事が肝心です。マージンは術前に推定し、幅と奥行きはケースによって異なります。結果的に術後の皮膚欠損が大きくなり、単純に縫い合わせるということが困難となります。皮弁、植皮、または二期的な方法で傷を閉鎖します。軟膏処置にて1~数ヶ月かけて傷を上皮化させて行く方法もあります。通常、外科的な完全切除は、化膿性汗腺炎が薬物療法の範囲を超えているハーレーのステージIIIに制限されています。

    Unroofing(天井開放術)

    Unroofingは簡単な手術法であり、古い技法です。何年も見落とされていましたが、近年復活し、大いに見直されている治療です。広く使用される価値がある治療法です。手技的にも容易で、安全性も高く、筆者自身、最も良い治療法と考えています。これは、ステージIの初期の炎症性の結節からステージIIIの複雑に瘻孔が形成された病変まで適応する事ができます。早期病変を除去し、化膿性汗腺炎の深い瘻孔の上の部分を切開し、開放するだけでも非常に重要でかつ効果的です。メスと剪刀だけで簡単に治療を行えます。また、アメリカなどではレーザーが使用されている事が多いです。Unroofingは、長引く抗生物質や抗炎症療法よりもはるかに効果的です。

    Unroofingは技術的には困難ではなく、局所麻酔下で外来で行うことも可能です。この技術は、化膿性汗腺炎の皮下にたまったゲル状の塊を取り出し、完全に瘻孔を解放する技術で、従来の切開とドレナージとは別物の治療です。これは、優れた排膿、排液と痛みの抑制効果があります。切開とドレナージは一時的な「解決」であるが、unroofingはほとんどの場合永続的な効果があります。また、術後のドレッシング(ガーゼなどで保護すること)も非常に簡単で、術後の痛み非常に管理が容易です。エピネフリンを含むリドカイン1〜2%の麻酔が使用されます。
    単一の炎症性毛包ユニットは、緊急のミニunroofingを必要とします。適切な直径(5〜8ミリメートル)の生検パンチは、関連するFPSUを中心にして使用し、周囲も含めて損傷された皮膚をくり抜きます。そして周囲の組織を綺麗に洗浄します。
    皮下のゲル状の病変の固まりはまず切開した後にすぐに、圧力を減らすために排出します。その後、十分に切開を広げ、傷口の中をガーゼでごしごし洗い、壊死組織を綺麗に取り除きます。
    すべての深さとマージンは、デジタルで、もしくは視覚的に、ゾンデやはさみで探ります。あらゆる線維組織は、洞(瘻孔)として疑われ、削除されるべきです。交通する瘻孔は一度検出されたら開放すべきです。これらは驚くほど広範なことがありますが、怖がらずに完全に開放する必要があります。アクティブな病気に関与しているあるいは、陳旧性の病変もすべての組織は取り除くべきです。取り残された場合、治癒を妨げることになるでしょう。電気メスやレーザーが必要になることはほとんどありません。傷跡は、通常、切開開放したラインよりもはるかに小さく収縮し、柔らかくなり、患者も非常に受けやすいかと思います。

    術後、傷はシンプルにワセリンを集めに塗布し、ガーゼで保護します。閉鎖療法はあまり良くないでしょう。流水と通常の石鹸のみで、よく洗浄します。抗菌石鹸、手拭いは使用しない方がいいでしょう。綿または柔らかいガーゼにワセリンの厚く塗布し毎日1回または2回、創部に貼付します。患者(もしくは創傷ケアスタッフ)は傷を余る強くこすらないようにした方がいいです。これらの処置で傷がふさがらない場合のみ、植皮などの外科的な治療を検討すると良いでしょう。化膿性汗腺炎はきちんと開放し、壊死した組織や線維化した組織を取り除いておけば、簡単な抗生剤を数日処方するだけで十分で、長期間の抗生剤の治療を行う必要はありません。感染は壊死した組織や線維化した組織によって引き起こされるからです。抗生剤の投与は酵母や耐性菌の増殖を最小限に抑えるために避けた方がいいです。重度の患者では、すべての領域をクリアするために数度の手術が必要です。

    その他の実験的治療

    ここからは、標準療法ではない実験的に行われている治療について解説したいと思います。

    メトホルミン

    メトホルミン(糖尿病の薬としてよく使われる)は有用であると報告されています。メトホルミンは、インスリンの末梢細胞の感度を向上させ、個々の細胞にグルコースの通過を高め、血漿グルコースレベルを低下させ、循環インスリンのレベルを低減させます。これは、アンドロゲン受容体の感作を減少させる効果があります。メトホルミンは、代謝制御プログラムの重要な一部であり、化膿性汗腺炎の管理に不可欠な部分です。

    亜鉛

    亜鉛は抗炎症作用と抗アンドロゲン作用の両方があり、5α還元酵素の両方のアイソエンザイムを阻害します。とある報告ではグルコン酸亜鉛90 mg/dayの投与により、22名の患者のうち、8名は完全な寛解を、14名には部分寛解をもたらしたとされています。

    光線力学的療法(フォトダイナミックセラピー)

    Manuel Ángel Rodríguez-Prietoらは、病変部にファイバーを挿入し、そこから光線を照射するフォトダイナミックセラピーで瘻孔を含む病変の治療に成功下との報告もあるが、現状では症例報告レベルに留まります。

    ボツリヌス毒素

    これを勧める証拠が不足しています。

    X 線放射線治療

    X線放射は早期病変に有用であると考えられていたが、今は使用されていません。

    凍結手術

    瘻孔内への液体窒素の繰り返し吸入する方法は古典的な方法で炎症を起こし、瘻孔を癒着閉鎖させるという方法ですが、効果が不安定で現在ではまず行われていない方法だと思います。

    まとめ

    化膿性汗腺炎は、原因・病因が理解されつつあり、欧米では費用対効果の高い治療法が患者様にもたらされつつあります。日本ではまだ、化膿性汗腺炎という言葉が紹介されてたばかりで、十分に理解されているとは言えません。今後、日本でも病名が広がるとともに、体系的な治療が行われるようになっていくでしょう。この病気は「ある事を他の後で試みること」は許されません。効果的な管理には、次の3つの領域を同時に行っていく必要があります。

    1. 1. 栄養管理を含むホルモン管理
    2. 2. 毛包閉塞の抑制
    3. 3. 炎症制御

    HS患者は、現実的な期待を高めるためにおよび最良の結果のために、この病気を理解する必要があります。HSは伝染でも不衛生によるものでもありません。栄養管理は手術よりも貴重なものを証明するかもしれません。ホルモンコントロールは抗生物質よりも貴重です。患者様におかれましては手術をできるだけ早く引き受けてる必要があります。手術は高価でもそれほど大変でもありません。化膿性汗腺炎は確かに簡単ではありませんが、管理することができます。現在では「完治」という言葉も、もはや手の届かない範囲ではありません。

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    化膿性汗腺炎

    化膿性汗腺炎(かのうせいかんせんえん)

    化膿性汗腺炎 Hidradenitis suppurativa(HS)の病態を考える上で最も重要な病変部位は、folliculopilosebaceousユニット(FPSUs)です。
    folliculopilosebaceousユニット(FPSUs)は、毛包、その関連皮脂腺、および立毛筋を含む概念です化膿性汗腺炎(HS)は、folliculopilosebaceousユニット(FPSUs)の慢性再発性の障害です。生活の質への悪影響は重大であり、化膿性汗腺炎の増悪は主に早期認識、正確な診断、適切な管理の欠如によります。一般的にFPSUの支持構造はそれほど強固ではありません。生殖ホルモン、 外因性ホルモン、乳製品のアンドロゲンとその前駆体、およびその他の栄養因子の影響下で、毛孔が詰まり、膨張します。摩擦、ずれる力、および圧力により、弱体化したFPSUから管の内容物の破裂や漏出を引き起こします。これが原因で自然免疫系を惹起することで、炎症反応を引き起こします。
    治療は、患者様の理解と協力、相談、ホルモンと食事の積極的な変更、破裂につながる外傷の回避、複数の抗炎症療法、抗生物質の内服、免疫抑制剤、生物学的製剤と早期の外科的切開による創部開放を必要とします。

    化膿性汗腺炎の治療法ついて
    化膿性汗腺炎には、様々な治療法があります。それらを確認して、自分にあった治療法を選びましょう。また、手術や実験的治療についても確認することができます。
    治療法を見る
    実験的治療を見る

    歴史

    パリの外科医Velpeauは、1833年から1839年まで、腋窩、乳腺周囲そして肛門周囲の膿瘍の形状と異常な炎症プロセスを説明しました。Velpeauは、約15年後に、hidrosadénite phlegmoneuseという用語を作りました。ここから化膿性汗腺炎の概念が作られていきました。
    1922年に、Schiefferdeckerは、acne inversa(現在では化膿性汗腺炎と同じ意味)とアポクリン汗腺の関連を疑いました。
    1956年に、ピルスベリーは、にきびの原因が毛孔閉塞である、という仮説を立てました。そしてacne conglobate(集簇性ニキビ)とPerifolliculitis Capitis Abscedens et Suffodiens、化膿性汗腺炎を類似疾患として「にきびトライアド」としてグループ化しました。PlewigそしてKligmanはにきびトライアドに新しく毛巣洞をグループに追加しました。
    1989年にPlewigとスティーガーは、ニキビの異形という意味を現す「acne inversa」という用語を紹介し、「ヴェルヌイユ病」などの古い用語と置き換えました。

    背景

    化膿性汗腺炎(HS) は、慢性、炎症、主に腋窩、鼠径部、乳房、生殖器、および体の会陰領域の皮膚に見られる慢性的な炎症、それに伴う瘢痕状態です。acne inversa(AI)とも呼ばれています。HS/AIはアポクリン汗腺に誤って関連付けられてきましたが、本当は、folliculopilosebaceousユニット(FPSU)から疾患がスタートします。HS/AIは、再発傾向の炎症の強いニキビに似た結節によって特徴付けられます。これは生活に支障を来す障害、外観の損害および瘢痕化につながります。慢性的に膿を排出していることしている瘻孔形成と膿瘍に進行していきます。病変は、典型的にはFPSUsを有する皮膚の領域で発生します。化膿性汗腺炎は、頻繁に「オデキ」「ニキビ」として誤診され、診断が遅れ体系化した治療が行われず、増悪し治療困難な状態に陥ります。

    化膿性汗腺炎の原因ついて
    化膿性汗腺炎には、様々な原因があります。それらを知って、あらかじめ対処していきましょう。また、化膿性汗腺炎に関連した疾患や、合併症が多数あります。それらを確認して、正しい治療をしていきましょう。
    原因について
    病因と臨床経過

    有病率と疫学

    化膿性汗腺炎は決して「珍しい」ものではありません。世界的な有病率は1%〜4%と推定され、徐々に増加してきているとの報告も多いです。また日本では食の欧米化、衣類の変化に伴い急速に増えてきています。女性と男性の比率は3.3:1です。(筆者の見解としては日本人においては男女同数くらいに思われます。)
    女性は 胸部(22%)と鼠径部(93%)に多く、男性は臀部(お尻)(40%)と肛門周囲(51%)に病変ができやすいです。
    発症の平均年齢は23歳と比較的に若いうちに発症することが多いです。また、女性では閉経後の発症は珍しく、女性ホルモンとの関係が疑われています。
    男性では、化膿性汗腺炎が老後にまで続くこともあります。多くの場合より男性の方が重症化しやすいです。
    化膿性汗腺炎から稀に扁平上皮癌が発生することがありますが、それは主に男性で起こります。

    診断基準

    様々なガイドラインがありますが、今回はヨーロッパのガイドラインを紹介いたします。

    主症状

    経過     : 痛みの伴う結節と排膿を半年に2回以上繰り返す。
    典型的な症状 : 腋窩、鼠径部(そけいぶ)、性器、会陰と肛門、臀部(でんぶ)、および乳房間に炎症性/非炎症性結節、
    炎症性/非炎症性瘻孔、膿瘍、瘢痕(萎縮性瘢痕、メッシュ状瘢痕、赤み、肥厚性瘢痕、線状瘢痕を含む)

    副症状

      • ・家族歴
      • ・病変から検出される菌がネガティブもしくは常在菌のみ(解説:HSでは特殊な病原菌より常在菌が検出されることが多いで
      •  す)。

    化膿性汗腺炎は、細菌によって引き起こされる”オデキ=せつ”のような標準的の抗生物質に対応していません。HSの病変は水平方向に広がりにくいという性質があり、せつやニキビと比べて破裂して膿を出しにくく、表面から見ると化膿性汗腺炎の病変が丸みを帯び、破裂しない傾向があります。代わりに、これらは皮膚の下へ水平方向に破裂し、皮下に広がり、すなわち横方向に広がる傾向があります。化膿性汗腺炎は慢性であり、ある研究では患者の90%では、平均すると19年病気を患っていました。非常に長期にわたる疾患であることがわかります。

    化膿性汗腺炎の同義語
    (注意:これらの用語は殆ど使われず、欧米ではHidradenitis suppurativaという用語に統一されつつあります)

    • ・Acne conglobata
    • ・Acne inversa
    • ・アポクリンニキビ
    • ・Velpeau疾患
    • ・ヴェルヌイユ疾患
    • ・apocrinitis
    • ・フォックスデン病
    • ・汗腺炎アキシラリス
    • ・pyodermia sinifica fistulans

    鑑別診断

    化膿性汗腺炎Hidradenitis suppurativaには、様々な鑑別診断があります。見た目、発症年齢、典型的な場所、抗生物質への反応が悪いこと、敗血症の兆候の欠如などが診断の助けになります。これらの兆候より化膿性汗腺炎を他の疾患と区別することができるので、診断はかなり簡単です。肛門クローン病と化膿性汗腺炎は、互いに関連付けられ、混同をする方も多いかもしれません。

    鑑別診断:

    • ・細菌感染症、炎症性粉瘤、ニキビ
    • ・そのほかの感染症
    • ・せつ、膿瘍、坐骨直腸窩膿瘍/肛門周囲膿瘍、バルトリン腺膿瘍
    • ・結核性膿瘍
    • ・性感染症(鼠径リンパ肉芽腫)、リンパ腫、結節性潰瘍性梅毒
    • ・ディープ菌類ブラストミセス症、ノカルジア症
    • ・有棘細胞癌
    • ・多発脂腺嚢腫症
    • ・膿疱性乾癬
    • ・結節性膿皮症
    • ・肛門クローン病または外陰膣フィステル

    最も一般的な鑑別診断は毛嚢炎、せつ、および炎症性粉瘤です。
    疾患部位が様々な点と(なれない医師にとっては)比較的非特異的な病変により、多くの患者が専門医に受診しに行きます。救急部門で見られる患者は、しばしば簡単な切開排膿と抗生物質の「短いコース」で治療終了とされます。これは一般的に、一時的に症状を落ち着かせるだけで、病気を改善させることにならず、患者さまを落胆させることになります。化膿性汗腺炎という病名が一般的でない為か、診断が遅れることが一般的です。

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