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アレルギー疾患における衛生仮説

 先進国でアレルギー疾患が増えている理由について古くから衛生仮説があります。俗に「生活環境が清潔になり過ぎたためアレルギーの病気が増えた」と言われているものです。
 簡単にそのメカニズムをご説明します。
 体内のT細胞(免疫の司令塔的な細胞)は、感染防御に関与するTh1細胞と、アレルギーを引き起こすTh2細胞のどちらかに分化します。それらは互いに抑制しあい、バランスをとっていますが、清潔にし過ぎると感染源と接触する機会が減り、Th1が弱まり、Th1とTh2のバランスがTh2に偏ってしまった結果、アレルギー疾患が増えたのではないか?とする説です。
 なるほど、と思われるかもしれませんが、もしそうならばTh1優位になると発症してくる自己免疫疾患は先進国では減ってくるはずなのですが、実際にはそれらの病気も先進国で増えているとのデータがあり、すべてTh1/Th2バランスで説明することは困難なようです。
 しかし、ある時期、おそらく幼少期に、原始的な生活と比較しTh2優位になる傾向があり、その時期に大気の乾燥や、体の擦り過ぎなどが加わって、角質がカサカサになり、その本来の防御力が低下し、外からのアレルギー物質の通過を許すようになれば、実際にアレルギーになりやすくなるのではないかと私は思うのです。以前のブログで何度かふれたとおり、腸管からではなく皮膚からアレルギー物質を通過させることでアレルギーが始まることが多いことがわかってきています。
 ある程度、衛生面で清潔になったことはもちろん悪いことではなく、乳児の死亡率が激減させるなど良いことのほうが多いと思いますので、今更、原始的な衛生環境に乳児を置くなど、全くもって現実的ではありません。そのかわりに、なるべく体を擦り過ぎない、部屋を乾燥させすぎない、保湿剤をきちんとつけてあげるなど、アレルギーを防ぐためにできることを地道にやるのがいいのではないかと考えています。

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