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アレルゲンはなぜアレルゲンになるのか?

 アレルギーの原因になりやすい物質があることがわかっていますが、なぜアレルギーになりやすい物質があるのかについては、恥ずかしながらあまり意識したことがなかったのですが、面白い文献があったので報告しておきます。(実験医学Vol.27 No.20 アレルギー研究の最前線 高井先生)
 ダニの死骸や排泄物はアレルギーの原因として最重要のものの一つですが、それらは単に人に接する機会が多いために、アレルギーの原因なりやすい、というわけではないようです。それらのアレルギー物質はそれ自体、上皮細胞同士の結合組織を破壊し、皮膚のバリア機能を弱める働きがあるようです。さらにそれらは、角化細胞を刺激し、炎症性サイトカインの産生を促すなどし、免疫系をかく乱したり、好酸球を活性化しアレルギーを起こしやすくする働きもあります。
 思えば、人の皮膚はありとあらゆる物質と接しており(細菌、真菌、ウイルス、汗、水、食材、花粉、線維、金属、ゴム、クリーム、香料、香水、石鹸、空気、薬剤、塗料など)、その中で、構造上アレルギーの原因となりやすいものがあることは知られていますが、それにはそれなりの理由があると考えたほうがいいかもしれません。その理由はそれぞれの物質によって異なるので、いずれまたご紹介したいと思います。

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同時に治療することが困難な合併例

 同時に治療することが困難な合併症例を経験することがあります。
 例えば、ニキビと湿疹の合併や、水いぼと湿疹の合併例などです。
 ニキビと湿疹が同時に存在することはしばしば見かけるのですが、ニキビの治療のためディフェリンなどを使うと刺激で湿疹が増悪する可能性がありますし、湿疹の治療のためステロイド剤を使うとニキビが悪化する可能性があります。
 その場合は、どちらから治療すればいいかというと、断然、湿疹の治療から先に行うべきと考えています。なぜなら、湿疹があれば皮膚が乾燥し、さらに掻いたり擦ることによりニキビが悪化している可能性が高いからです。逆にニキビが湿疹を悪化させている可能性はほとんどありません。そのため、多少ニキビが悪化するリスクを考慮したうえで、ステロイド外用による湿疹の治療を先行します。短期間のステロイド外用であれば、それほどニキビを増悪させることもありません。
 水いぼと湿疹が合併している場合なども同様です。湿疹を掻き壊し、その小さな傷から水いぼウイルスが侵入し、水いぼを広げてしまっている可能性が大いにあります。そのため、やはりごく短期間ステロイド外用薬を使い、湿疹を治してしまうようにしています。
 水いぼにステロイド外用薬を使えば、皮膚の免疫が低下し、水いぼが広がってしまうのではないか?と心配される方もいらっしゃるかもしれませんが、短期間であれば皮膚免疫が低下することもありません。むしろ湿疹を放置したほうが皮膚のバリア機能が低下し、水いぼウイルスなどに対する免疫が低下しているのではないかと考えています。湿疹の治療を後回しにした結果、湿疹とともに水いぼが爆発的に増えてしまい、困って来院される方をしばしば診察いたしますが、やはり湿疹を先に治療し、皮膚のバリア機能を回復させるべきなのです。

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粉瘤の病因、治療の補足

 粉瘤は皮膚にできる1cm~5cm程度の袋状の病変で、中には角質物質が充満しています。(よく言われる脂肪の塊というのは誤りです。)袋はかなり正常表皮に近い構造をしており、表皮から角質が作られ、それが袋の内部にたまっていってしまうというイメージです。時に細菌が感染し、腫れて、赤く、痛くなることがあります。(炎症性粉瘤といいます。)
 毛穴の最上部である、毛包漏斗部より粉瘤が発生しているようなのですが、なぜ粉瘤ができるのかは、はっきりしたことは分からっていません。何らかのウイルスの感染によるものなのではないか?という説がもっとも有力なようです。
 (注:今回は粉瘤をepidermal cystに限局し、trichilemmal cystは除外して述べています。)
 さて粉瘤は、炎症を起こして痛くなってから来られる方が非常に多いのですが、その場合はすぐに袋を取り出して根治的に治療を行うということが困難で、まず袋を切り開いて内容物を取り出して、良く洗い、抗生剤を飲んで炎症を抑える必要があります。いきなり根治術を行わないのは、炎症がある場合には、皮膚を縫うことは禁忌に近いからです。
 そしてしっかり炎症をとった段階で、袋を取り出す手術を行います。
 一般的に粉瘤切除の術式は、メスを使った切除、皮膚パンチを使った臍抜き法(小さな穴を開けて、その穴から袋を引きずり出す方法)、炭酸ガスレーザーを使った焼灼法(まず粉瘤に小さな穴をあけ、そこから内容物を取り出し、その穴からレーザー光線を通して、袋をすべて焼切る方法)が一般的で、大きさや位置を考え、最も簡便かつ美しく治る方法を選択するようにしています。

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皮膚を擦る癖に注意してみてください。

 不安やストレスなどを感じていると、無意識のうち首や顔などの皮膚を擦ってしまうという方は意外に多いようです。私も原稿などを書いていてなかなか進まないときは親指の腹で人差し指を擦っているときがあります。
 皮膚を擦る癖は、ニキビやアトピー、湿疹、慢性単純性苔癬などの増悪、発症の原因となりますので注意が必要です。皮膚がかゆいわけではないのに、ついつい皮膚を擦ってしまうという方は、そのことをご自身で自覚し、その背後にある不安やストレスの原因を考え、解決することが大事とされています。
 そのほか、ニキビや湿疹があると気になってついつい擦ってしまうという方も多くおられます。(お子様は特にそうですので、何か本能に根差した行動なのでしょうか?)擦っていれば治療の効果が低下しますので、必要以上に触れないようにしていただきたいと思います。病変部を洗うときは石鹸をしっかり泡立てて撫でるように優しく洗ってみてください。

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掌蹠膿疱症の知見

 掌蹠膿疱症についての最近の知見が学会誌に載っているので引き続きご紹介しておきます。(掌蹠膿疱症研究における最近の話題、村上正基先生)
 まとめますと
・掌蹠膿疱症はエクリン汗腺(汗を分泌する線)で起こっている可能性が高い。
・エクリン汗腺におけるニコチン性アセチルコリン受容体の発現パターンが、掌蹠膿疱症の患者様と、健常人とは異なっている。
 ということが書かれております。
 掌蹠膿疱症と喫煙との関係はかなり以前から指摘されており、それがニコチン性アセチルコリン受容体の発現パターンと関係があるのかどうかはこの記事だけでは判断できませんが、掌蹠膿疱症の患者様で喫煙されている方は、禁煙を心掛けたほうがよさそうだ、というのはこれまでと変わりません。
 私の患者様で、ご家族にヘビースモーカーの方がいらっしゃり、その方に禁煙をしていただいたら、掌蹠膿疱症がよくなったという方もおられました。

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