不安やストレスなどを感じていると、無意識のうち首や顔などの皮膚を擦ってしまうという方は意外に多いようです。私も原稿などを書いていてなかなか進まないときは親指の腹で人差し指を擦っているときがあります。
皮膚を擦る癖は、ニキビやアトピー、湿疹、慢性単純性苔癬などの増悪、発症の原因となりますので注意が必要です。皮膚がかゆいわけではないのに、ついつい皮膚を擦ってしまうという方は、そのことをご自身で自覚し、その背後にある不安やストレスの原因を考え、解決することが大事とされています。
そのほか、ニキビや湿疹があると気になってついつい擦ってしまうという方も多くおられます。(お子様は特にそうですので、何か本能に根差した行動なのでしょうか?)擦っていれば治療の効果が低下しますので、必要以上に触れないようにしていただきたいと思います。病変部を洗うときは石鹸をしっかり泡立てて撫でるように優しく洗ってみてください。
AGA(男性型脱毛)の治療で男性の場合は、プロペシアの内服がもっともすぐれた治療法であるということを以前のブログでご紹介しました。
患者様が医療機関に行くのを躊躇し、インターネットなどで薬剤を購入しトラブルになるケースが増えているとの話を伺ったので、少しコメントを述べさせていただきたいと思います。まず脱毛をきたす疾患というのは、湿疹、円形脱毛症、膠原病、甲状腺異常、産後脱毛症、抜毛症、薬剤性脱毛,、老人性脱毛などたくさんありますので、自己診断でAGAと判断するのは少し危険です。それにインターネットではきちんと認可されていない薬が売られている場合もありますので、注意が必要かと思われます。
医療機関を躊躇される最大の理由は治療費がいくらかかるかわからない、医療機関に行くのが面倒臭いということのようです。
治療費は当院では初診料は270円~2700円程度、プロペシアの費用は7500円/月で、それ以外の費用は一切かかりません。初診時は本当にAGAなのかどうかじっくり診察させていただきますが、それ以降は写真撮影のみなので、それほどお時間はかからないかと思います。
花粉症皮膚炎という病気があります。なんとなく聞いたことがあるような名前ですが、その疾患概念が確立したのは比較的最近のことです。
通常、花粉症といいますと、目や鼻などの粘膜に花粉が付着し、IgEを介して肥満細胞からヒスタミンが分泌されるいわゆる即時型アレルギーのことを言います。
一方、花粉症皮膚炎とは、まさに花粉が皮膚につくことによってかゆみや湿疹が起こり、特にアトピー性皮膚炎の方は症状が増悪します。IgEが関与するいわゆる接触性蕁麻疹の場合(即時型アレルギー)と、感作されたT細胞が関与するアレルギー性接触皮膚炎の場合(遅延型アレルギー)の場合があります。
花粉の季節に皮膚のかゆみが出る方、アトピー性皮膚炎が増悪する方は、花粉症皮膚炎の可能性があります。なるべく皮膚を露出しない、家に帰ればすぐにシャワーを浴びるといった対策が有効です。
少し飛んでいる花粉についてまとめておきます(関東の場合)
スギ:1月下旬~5月上旬
ハンノキ:1月中旬~6月上旬
ケヤキ:3月中旬~6月上旬
ヒノキ:3月下旬~5月中旬
コナラ:3月下旬~6月中旬
クリ:3月下旬~6月中旬
ミズナラ:3月下旬~6月中旬
イチョウ:4月
ポプラ:4月
ヤナギ:4月
マツ:4月上旬~6月下旬
シラカンバ:4月中旬~5月下旬
ギシギシ;4月中旬~6月中旬
クマシデ:4月下旬~6月中旬
カモガヤ:5月上旬~6月下旬
イラクサ:8月上旬~10月上旬
ブタクサ:8月下旬~9月下旬
オオヨモギ:8月下旬~10月中旬
ヨモギ:9月上旬~10月下旬
カナムグラ:9月~10月中旬
そろそろ花粉が気になる季節になりました。
花粉症の方は、早めに治療をしたほうが軽症で済みますので、気になる方はご相談いただければと存じます。
湿疹の症状というと、皮膚がカサカサしていて(鱗屑)、赤みがあり(紅斑)、赤いポチポチがあり(紅色丘疹)、ときに皮膚がごわごわしている(苔癬化)というイメージですが、時に見た目では何にもなくても、「湿疹」として考えたほうがいいことがあります。
それが病理学的湿疹と呼ばれる考え方で、「湿疹に至る少し前」というイメージでいいとか思います。見た目では何にもなくとも、顕微鏡で調べるとリンパ球などの炎症細胞が真皮上層に集まってきている状態です。通常痒みを伴います。
その状態になってしまったら、遅かれ早かれ通常の湿疹に至ってしまうため、速やかにステロイド外用、もしくはプロトピック外用を導入し、早期に治療したほうがいいのではないかという考え方があります。
これまでは、視診上、特に問題のない皮膚にステロイドやプロトピックを付けることは抵抗があったのですが、病理学的湿疹という概念が出てきてからは抵抗が少なくなりました。
ただし、どのように病理学的湿疹と診断すればいいかという問題があります。全員に皮膚生検することなど現実的には不可能ですし、病理結果が出るころにはすでに早期治療が効果を表すゴールデンタイムは過ぎていると思われます。
痒みのある方全員に病理学的湿疹かもしれないと、ステロイドをご処方するのは過剰です。(何度かブログでご紹介したとおり、痒みは炎症によるものとは限らず、ステロイド外用が無効であることもしばしばあるためです)。
やはり、予防的に保湿剤を付けていてもステロイドすぐに湿疹が再発してしまう慢性湿疹の患者様、標準的な治療をしているのに何度も再発を繰り返しているアトピー性皮膚炎の患者様に限られるかと思います。
この概念、治療のいいところは、ほぼ見た目には湿疹のない状態がキープできる点で、患者様も良くなっていると実感しやすい点です。さらに、この治療のいい点は、湿疹のない状態がキープできればできるほど、ステロイド外用薬に対する反応は鋭くなり、結果的に使うステロイドの強さを弱くしたり、少なくすることができる点です。
病理学的湿疹という考え方を有効に利用することは、湿疹やアトピー性皮膚炎の患者様を治療するうえで優れた武器になります。
本日は図書館にて2011年の皮膚科関連、アレルギー関連の雑誌を一通り見てきました。
アトピー性皮膚炎に関しては
完全食物アレルゲンと思われていたものも実は経皮的に感作されているのではないか?
というテーマが印象的でした。完全食物アレルゲンというのは、食べることによって消化管で感作され、再度食べることにより、アレルギー反応を起こすもののことで、卵、牛乳、小麦などが代表です。ピーナッツもそうだと思われていたのですが、実は経皮感作によってアレルギーを引き起こしている可能が高いということが分かりました。それはかなりインパクトのあることなのですが、卵も経皮感作されうるのではないか、という話まで乗っていました。
つまりアトピー性皮膚炎はアレルギーからではなく、角質のなんらかの脆弱性から発症しているということで、数年前から言われていることですが、2011年も大きな話題になっていました。アトピーにおける角質の脆弱性と、アレルギーは互いに卵と鶏の関係で、どちらからスタートしているのかはわからなかったのですが、角質の脆弱性からスタートしている可能性が高まってきたのです。これは我々皮膚科医にとってとても励みになる見解で、乳児期から徹底的にスキンケアを行えば、アトピー性皮膚炎になっていたであろう方のアトピー性皮膚炎を発症させずに済む、もしくはより軽症で抑えることが可能になるということが示唆させるわけです。
そのほかTh17や好塩基球が発症に大きな役割を果たしているかもしれない、という話題も印象的でした。血中TARC値という病勢の測定方法も一般化してきているようです。遺伝子解析も進んできているようです。やはり遺伝子解析がアトピー性皮膚炎という非常に複雑な疾患の病態理解のカギになるのでしょうか?
尋常性乾癬に関しては、やはり生物学的製剤の話題が中心です。生物学的製剤の有効性は私もよく分かっていますが、やはりその費用と、検査の煩雑さはやはりネックになると思います。費用が安く、(副作用がほとんどないため)検査があまり必要ない生物学的製剤が出てきたとき、もしくは尋常性乾癬をコントロールするのではなく、完治させてしまう生物学的製剤が出てきたときはすごいインパクトになると思います。
尋常性ざ瘡に関しては病態の理解がさらに進んだ印象があります。治療方針に関しては特に目新しいものはありません。
明日より診療を開始します。正月気分もすっかり抜け、明日より診療を再開するという緊張感を感じています。全力で頑張りますので、なにとぞよろしくお願いします。
※掲載内容・料金は更新時点での情報の場合がございます。最新の内容、料金は各院へお問合せください。