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病理学的湿疹という考え方

 湿疹の症状というと、皮膚がカサカサしていて(鱗屑)、赤みがあり(紅斑)、赤いポチポチがあり(紅色丘疹)、ときに皮膚がごわごわしている(苔癬化)というイメージですが、時に見た目では何にもなくても、「湿疹」として考えたほうがいいことがあります。
 それが病理学的湿疹と呼ばれる考え方で、「湿疹に至る少し前」というイメージでいいとか思います。見た目では何にもなくとも、顕微鏡で調べるとリンパ球などの炎症細胞が真皮上層に集まってきている状態です。通常痒みを伴います。
 その状態になってしまったら、遅かれ早かれ通常の湿疹に至ってしまうため、速やかにステロイド外用、もしくはプロトピック外用を導入し、早期に治療したほうがいいのではないかという考え方があります。
 これまでは、視診上、特に問題のない皮膚にステロイドやプロトピックを付けることは抵抗があったのですが、病理学的湿疹という概念が出てきてからは抵抗が少なくなりました。
 ただし、どのように病理学的湿疹と診断すればいいかという問題があります。全員に皮膚生検することなど現実的には不可能ですし、病理結果が出るころにはすでに早期治療が効果を表すゴールデンタイムは過ぎていると思われます。
 痒みのある方全員に病理学的湿疹かもしれないと、ステロイドをご処方するのは過剰です。(何度かブログでご紹介したとおり、痒みは炎症によるものとは限らず、ステロイド外用が無効であることもしばしばあるためです)。
 やはり、予防的に保湿剤を付けていてもステロイドすぐに湿疹が再発してしまう慢性湿疹の患者様、標準的な治療をしているのに何度も再発を繰り返しているアトピー性皮膚炎の患者様に限られるかと思います。
 この概念、治療のいいところは、ほぼ見た目には湿疹のない状態がキープできる点で、患者様も良くなっていると実感しやすい点です。さらに、この治療のいい点は、湿疹のない状態がキープできればできるほど、ステロイド外用薬に対する反応は鋭くなり、結果的に使うステロイドの強さを弱くしたり、少なくすることができる点です。
 病理学的湿疹という考え方を有効に利用することは、湿疹やアトピー性皮膚炎の患者様を治療するうえで優れた武器になります。

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