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同時に治療することが困難な合併例

 同時に治療することが困難な合併症例を経験することがあります。
 例えば、ニキビと湿疹の合併や、水いぼと湿疹の合併例などです。
 ニキビと湿疹が同時に存在することはしばしば見かけるのですが、ニキビの治療のためディフェリンなどを使うと刺激で湿疹が増悪する可能性がありますし、湿疹の治療のためステロイド剤を使うとニキビが悪化する可能性があります。
 その場合は、どちらから治療すればいいかというと、断然、湿疹の治療から先に行うべきと考えています。なぜなら、湿疹があれば皮膚が乾燥し、さらに掻いたり擦ることによりニキビが悪化している可能性が高いからです。逆にニキビが湿疹を悪化させている可能性はほとんどありません。そのため、多少ニキビが悪化するリスクを考慮したうえで、ステロイド外用による湿疹の治療を先行します。短期間のステロイド外用であれば、それほどニキビを増悪させることもありません。
 水いぼと湿疹が合併している場合なども同様です。湿疹を掻き壊し、その小さな傷から水いぼウイルスが侵入し、水いぼを広げてしまっている可能性が大いにあります。そのため、やはりごく短期間ステロイド外用薬を使い、湿疹を治してしまうようにしています。
 水いぼにステロイド外用薬を使えば、皮膚の免疫が低下し、水いぼが広がってしまうのではないか?と心配される方もいらっしゃるかもしれませんが、短期間であれば皮膚免疫が低下することもありません。むしろ湿疹を放置したほうが皮膚のバリア機能が低下し、水いぼウイルスなどに対する免疫が低下しているのではないかと考えています。湿疹の治療を後回しにした結果、湿疹とともに水いぼが爆発的に増えてしまい、困って来院される方をしばしば診察いたしますが、やはり湿疹を先に治療し、皮膚のバリア機能を回復させるべきなのです。

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粉瘤の病因、治療の補足

 粉瘤は皮膚にできる1cm~5cm程度の袋状の病変で、中には角質物質が充満しています。(よく言われる脂肪の塊というのは誤りです。)袋はかなり正常表皮に近い構造をしており、表皮から角質が作られ、それが袋の内部にたまっていってしまうというイメージです。時に細菌が感染し、腫れて、赤く、痛くなることがあります。(炎症性粉瘤といいます。)
 毛穴の最上部である、毛包漏斗部より粉瘤が発生しているようなのですが、なぜ粉瘤ができるのかは、はっきりしたことは分からっていません。何らかのウイルスの感染によるものなのではないか?という説がもっとも有力なようです。
 (注:今回は粉瘤をepidermal cystに限局し、trichilemmal cystは除外して述べています。)
 さて粉瘤は、炎症を起こして痛くなってから来られる方が非常に多いのですが、その場合はすぐに袋を取り出して根治的に治療を行うということが困難で、まず袋を切り開いて内容物を取り出して、良く洗い、抗生剤を飲んで炎症を抑える必要があります。いきなり根治術を行わないのは、炎症がある場合には、皮膚を縫うことは禁忌に近いからです。
 そしてしっかり炎症をとった段階で、袋を取り出す手術を行います。
 一般的に粉瘤切除の術式は、メスを使った切除、皮膚パンチを使った臍抜き法(小さな穴を開けて、その穴から袋を引きずり出す方法)、炭酸ガスレーザーを使った焼灼法(まず粉瘤に小さな穴をあけ、そこから内容物を取り出し、その穴からレーザー光線を通して、袋をすべて焼切る方法)が一般的で、大きさや位置を考え、最も簡便かつ美しく治る方法を選択するようにしています。

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巻き爪に合併した陥入爪の治療

 巻き爪でお悩みの方のご来院が増えています。
 巻き爪について知りたい方は
https://mitakahifu.com/ingrown/

https://mitakahifu.com/ingrown-nail/
 をご参照ください。
 巻き爪自体は痛みがなければ放置しても構わないと思いますが、巻き爪のため周囲の組織が傷つけられ、時に感染を引き起こす陥入爪になると治療を行わなければいけません。
 最近、2年も陥入爪を繰り返している、3年も陥入爪を繰り返しているという方もしばしばご来院されます。その場合は、あまり保存的に様子を見ずに、フェノール法という根治的手術方法をお勧めすることが多いです。というのも保存的にテーピングやワイヤー、クリッピングなどで治療を行っても結局は再発してしまう可能性が高いでしょうし、何度も通院する時間的な余裕がないという方も多いからです。
 フェノール法というのは、巻いている爪の外側を2mm~4mm程度切除し、フェノールという薬剤で切除した爪の下の爪床、爪母を腐食し、爪が生えてこないようにする方法です。
 フェノール法は慣れれば、フェノールで爪床、爪母を腐食する時間を合わせても10分以内でできますし、患者様もすぐに歩いて帰ることができます。陥入爪の痛みがなくなるため、翌日からむしろ痛みが少なくなったとおっしゃる方が多いのです。
 

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食物アレルギーの簡単な分類

 食物アレルギーと一言に行っても少し分類を知っていないと混乱してしまうので少し紹介しておきます
 食物アレルギーは食べて数十分以内にアレルギー反応が起こる即時型アレルギーと、食べて数日でアレルギー反応が起こってくる遅発型アレルギーがあります。
 また、成長とともに減ってくる食材とそうでない食材があります。
成長とともに食物アレルギーが減ってくる食材・・・卵、牛乳、大豆
成長とともにあまり減ってこない食物アレルギーとは、ピーナッツ、ナッツ類、海老、カニ、魚

 さらに、食物アレルギーの原因物質は、完全食物アレルゲン不完全食物アレルゲンに分類されます。
 完全食物アレルゲンとは経口摂取した特殊な蛋白質によって感作が成立し、その後、同じ蛋白質を再度摂取した際にアレルギー反応の誘発に至るもので、卵や牛乳がそれに当たります。それらの食材の中には、熱や消化酵素に対して安定したたんぱく質をもち、とくに小児の未熟な消化管では完全に消化できず、腸管からアレルギーの原因物質となる吸収し感作が成立し、同じ食べ物を食べたときにアレルギー反応が起こるというものです。
 それに対して、非完全食物アレルギーとは、すでにある食材に対してほかの経路から感作が成立しており、たまたまその食材を食べたときにアレルギー反応がおこる食材を言います。
 非常に有名な例としてラクテックスというゴム製品に含まれる可溶性たんぱく質に対するアレルギーを持つ患者様が栗やバナナ、ソバ、アボガド、メロン、トマト、キウイを食べることでアレルギー反応が出やすいという事実があります。ラクテックスとそれらの食材とには似たたんぱく質の構造があり、ラクテックアレルギーを持つ患者様が、栗やアボガドなどを食べると体内の免疫細胞がそれらのたんぱく質を見つけ、アレルギー反応が出てしまうのです。

アレルギー疾患における衛生仮説

 先進国でアレルギー疾患が増えている理由について古くから衛生仮説があります。俗に「生活環境が清潔になり過ぎたためアレルギーの病気が増えた」と言われているものです。
 簡単にそのメカニズムをご説明します。
 体内のT細胞(免疫の司令塔的な細胞)は、感染防御に関与するTh1細胞と、アレルギーを引き起こすTh2細胞のどちらかに分化します。それらは互いに抑制しあい、バランスをとっていますが、清潔にし過ぎると感染源と接触する機会が減り、Th1が弱まり、Th1とTh2のバランスがTh2に偏ってしまった結果、アレルギー疾患が増えたのではないか?とする説です。
 なるほど、と思われるかもしれませんが、もしそうならばTh1優位になると発症してくる自己免疫疾患は先進国では減ってくるはずなのですが、実際にはそれらの病気も先進国で増えているとのデータがあり、すべてTh1/Th2バランスで説明することは困難なようです。
 しかし、ある時期、おそらく幼少期に、原始的な生活と比較しTh2優位になる傾向があり、その時期に大気の乾燥や、体の擦り過ぎなどが加わって、角質がカサカサになり、その本来の防御力が低下し、外からのアレルギー物質の通過を許すようになれば、実際にアレルギーになりやすくなるのではないかと私は思うのです。以前のブログで何度かふれたとおり、腸管からではなく皮膚からアレルギー物質を通過させることでアレルギーが始まることが多いことがわかってきています。
 ある程度、衛生面で清潔になったことはもちろん悪いことではなく、乳児の死亡率が激減させるなど良いことのほうが多いと思いますので、今更、原始的な衛生環境に乳児を置くなど、全くもって現実的ではありません。そのかわりに、なるべく体を擦り過ぎない、部屋を乾燥させすぎない、保湿剤をきちんとつけてあげるなど、アレルギーを防ぐためにできることを地道にやるのがいいのではないかと考えています。

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