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アトピー性皮膚炎の病因論 原因なのか結果なのか?

 今日はアトピー性皮膚炎の病因論について少し述べたいと思います。
現在のところ、病因論として挙げられているのは
角質異常(セラミド、フィラグリンなど)
発汗異常
角質表面の細菌叢の変化
ストレス
T細胞(Th1/Th2バランス変化説)
好酸球
IgE
IgG
自己抗体
アレルゲンの増加説(食事、住環境)
などです。
 多数の説が挙げられていますが、どれが根本的な原因で、どれが二次的な変化(結果)なのかが若干、混乱しているように感じます。
 例えば、アトピー性皮膚炎の患者様の湿疹部にはセラミドと呼ばれる保湿成分が不足していることが分かっていますが、それが発症の原因なのではなく、恐らく湿疹に伴う二次的な変化(結果)のことが多いようです。
 以下、下手な例え話です。
 人の意見を素直に聞けない人がいて、周りの人からあまり好かれていないとします。
 そうすると、つい多くの人が、「あの人は人の意見を素直に聞けないから、周りから疎まれているに違いない」と考えます。
 しかし、もしかすると周りから疎まれていると感じているから、人に意見を素直に聞けないのかもしれません。
 このように、どれが原因で、どれが結果なのかを見極めるのはなかなか難しく、よく整理して考える必要があります。

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アトピー性皮膚炎におけるプロトピック(タクロリムス)軟膏の使用について

 当院におけるプロトピック軟膏処方の方針について少し述べたいと思います。
 プロトピック軟膏はタクロリムスという免疫調整剤が入っており、アトピー性皮膚炎の患者様の湿疹の治療に使われております。
 プロトピック軟膏には0.03%のものと0.1%のものがあり、前者はお子様にも使うことができます。
 ステロイド外用薬と比較した場合の利点と弱点を箇条書きにしたいと思いと思います。
利点
・ステロイド外用薬と違い、皮膚が薄くなりにくい。
・皮膚の血管拡張を来しにくい。
・酒さ様皮膚炎を来しにくい。
弱点
・掻きこわしなどの傷のある部位には使えない。
・それほど効果が強くない。(ステロイドのランクでいうと、中間より少し強い程度と言われています。)
・効いてくるまでに少し時間がかかる。
・使用初期に熱感、ヒリヒリ感が出ることがある。
などがあります。
 上記の利点、弱点を鑑みると、急性増悪している患者様には短期間ステロイドを投与し、ある程度落ち着けば、プロトピック軟膏に切り替えていく方法が合理的と考えます。
 当院でも比較的落ち着いている状態(維持期)の患者様やプロアクティブ療法を行っている患者様にはプロトピック軟膏をお勧めすることが多いです。
 特に顔はステロイド外用薬の副作用が出やすいので、プロトピック軟膏をご処方することが多くなります。

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アトピー性皮膚炎のスキンケアについて

 アトピー性皮膚炎の患者さまではスキンケアが非常に大事と以前書かせていただきましたが、今回は具体的にどのようにすればいいかを少し述べさせていただきます。
 アトピー性皮膚炎の患者さまは、保湿剤(ヘパリン類似物質含有製剤、尿素製剤およびワセリンなど)の塗布により、湿疹の予防になり、再燃が抑えられることがさまざまなデータより示されています。そのため保湿剤の塗布はきっちりと行っていただくことが大事です。
 そのほか、アトピー性皮膚炎のガイドラインでは以下のことが推奨され、三鷹はなふさ皮膚科でもほぼ同じ意見を持っております。
1.入浴,シャワーにより皮膚を清潔に保つ.
2.室内を清潔に保ち,適温・適湿の環境を作る.
3.規則正しい生活をおくり,暴飲・暴食は避ける.
4、刺激の少ない衣服を着用する.
5.爪は短く切り,掻破による皮膚障害を避ける.
 特に夏場は、1.が大事になります。しかし、学校や職場は通常はシャワー室がなく、汗をかいた後に、そのままになっていることがほとんどです。
 特に学校生活においては、体育の授業の後や、運動会の練習の後に、シャワーを浴びることができないのは普通のことです。私もそうでした。しかしそれは皮膚科医にとっては非常に憂慮すべき現状なのです。
 シャワー浴を取り入れた学校ではアトピー性皮膚炎の患者さまの症状が軽快したとの報告がいくつかなされています。
 ただ現状ではそのような学校、職場は少ないので、汗をかいたら、タオルやハンカチで汗をすぐに拭き取り、着替えのシャツを持って行って着替えるようにするのが良いのではないかと思います。そして家に帰ったらすぐにシャワーを浴びるようにしてください。
 4.の刺激の少ない衣服についてですが、肌に直接接触する服は柔らかいコットンでできたものが良いとされています。洗剤のすすぎ残しにも注意が必要です。肌が非常にデリケートな方は、服を通常通り洗った後に、もう一度、洗剤なしで洗うようにしてみてください。

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乳幼児アトピー性皮膚炎の早期治療について

 三鷹はなふさ皮膚科では乳幼児期のアトピー性皮膚炎の患者さまに早期に治療を開始し、その後も診察のたびにスキンケアの重要性を強調させていただいておりますが、その根拠を少し述べたいと思います。
 アトピー性皮膚炎の診断は、それほど簡単ではないのですが、それについては今回は割愛します。
 アトピー性皮膚炎は、何らかの角質異常による皮膚のバリア機能の低下と、アレルギーになりやすい体質によって発症するとされていますが、近年バリア機能の低下によって、アレルギーが進行するのではないかとういう説が多く提唱されています。
 つまり、まずバリア機能の低下があり、そこから経皮的に感作されて(皮膚からアレルギー物質が吸収されることにより、その物質に対するアレルギー反応がおこって)、食物アレルギーや、気管支喘息に進展するのではないかという説です。その説は非常に説得力のあるデータによって裏づけされています。
 (言葉がやや厳密ではなくなりますが)ごく簡単にいいかえれば、皮膚のバリア機能が低下している状態を放置すれば、その後、アレルギーになりやすくなる可能性がある、といえます。
 アトピー性皮膚炎の方の湿疹部位は極めてバリア機能が低下していますので、アレルギーの進展を防ぐために早期にステロイド外用を行い炎症を抑え、保湿剤にて皮膚を保護する必要があるのです。
 三鷹はなふさ皮膚科で、湿疹の治療と、保湿剤の重要性を何度もお話しする理由はそこにあります。
 

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アトピー性皮膚炎のプロアクティブ療法

 (難治性の)アトピー性皮膚炎の治療でプロアクティブ療法が標準になるつつあるので紹介させていただきます。
 プロアクティブとは「問題が発生してから対応するのでなく、問題が起こる前に率先して行動する、先を見越した行動をとること。」とされています。
 アトピー性皮膚炎の患者さまの湿疹病変を、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬を用いて比較的短期間に抑え込むことは、以前から可能でした。ただ外用薬を止めるとすぐに再燃してしまうのが大きな問題でした。
 湿疹病変が何度もすぐに再燃すると、「やはり良くならない」「治療しても意味がない」と思われてしまう患者さまもいらっしゃいました。そして治療を中断してしまう方もおられたようです。
 そこで、再燃をできるだけ減らすように考えられた治療法がプロアクティブ療法です。具体的には、湿疹病変が良くなっても、すぐにステロイド外用薬やタクロリムス外用薬を止めずに、週に1,2回、それらの外用薬を再燃しやすい部位につけていただく方法です。
 私は非常に優れた治療法と思います。というのも週に1,2回であれば、ステロイドやタクロリムス外用薬の副作用はほぼ無視できますし、患者さまのライフスタイルに合わせて外用を続けることができるからです。(たとえば比較的時間の取れる日曜日のみステロイドを付けるなど治療法が可能になります。)
 以前より私は、何度も増悪を繰り返してしまうアトピー性皮膚炎の患者さまにはステロイド外用薬を急にやめないように御指導させていただいていましたが、これからはそれが標準治療となりそうです。
 現時点ではプロアクティブ療法は小児アトピー性皮膚炎に対して行われていることが多いのですが、おそらく成人のアトピー性皮膚炎の方でも標準治療になっていくと思われます。
 プロアクティブ療法の優位性について、いずれまた取り上げたいと思います。

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