単純ヘルペスとは、主に口唇ヘルペスの原因となるウイルスのことで、今までに罹ったことのある人は多いと思われます。口唇ヘルペスに伴って全身に多形紅斑と呼ばれる蕁麻疹様紅斑、あるいは小水疱、標的状紅斑(target lesion)が出現することがあります。
なぜ、口唇ヘルペスなどの単純ヘルペスに伴ってそのような病変が出現するのか?とよく聞かれますので、ある仮説を紹介しておきます。
単純ヘルペスにかかると、それを治すために、マクロファージと呼ばれる体内に侵入した外敵を食べる細胞が、単純ヘルペスウイルスを食べてばらばらにしてしまいます。そのバラバラになった単純ヘルペスのDNAの破片が、なぜか遠く離れた皮膚の表皮細胞に堆積します。
そして単純ヘルペスの感染によって活性化されたT細胞(免疫における司令塔)が、その表皮細胞を標的として攻撃を加えてしまう、という説です。
この説には、なぜばらばらになった単純ヘルペスのDNAが表皮細胞に堆積するのか?という疑問が生じます。表皮細胞に単純ヘルペスのDNA情報を伝え、ある程度、周囲に活性型T細胞を呼び寄せせることで、単純ヘルペスの拡大を確実に食い止める為でしょうか?そして活性型T細胞が、過剰に表皮を攻撃してしまったときのみ多形紅斑としての症状が出現するのでしょうか?
そのあたりははっきりとはわかりません。
そのほか、サイトメガロウイルス、マイコプラズマ、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスの感染に伴って多形紅斑が現れることがあります。
昨日は母校の皮膚科医局の同窓会でした。
まだ私が三鷹にうつったことを報告をできていない先生も多く、気持ちが引っかかっていたのですが、無事報告ができてほっとした。
偉大な先輩方に激励されて、ますます皮膚科学に打ち込み、そしてなにより診療を頑張っていかなければ、と感じました。今後とも何とぞよろしくお願いいたします。
茶のしずく石鹸に小麦由来成分が入っており、それを使用した方の中にアナフィラキシー反応などの重篤な症状に陥った方がおられました。
被害者の方の一刻も早い回復をお祈りしたいと思います。
なぜ、そのようなことが起こったのかを考察することは、大事なことなので述べさせていただきます。
そもそも小麦に対する食物アレルギーをお持ちの方の場合、茶のしずく石鹸を使えば、皮膚から小麦由来成分が侵入し、それに対してアレルギー反応を示し、最悪の場合、アナフィラキシー反応という強いアレルギー反応を引き起こします。
小麦由来成分が皮膚を通過するのか?と疑問を持たれる方もいらっしゃると思います。確かに健康な皮膚はある程度以上の分子量のものは通過しないようになっておりますが、湿疹あったり、小さな傷があったりすると、かなり大きな分子量のものも通過させてしまうことになります。
さて、今回はもともと小麦に対する食物アレルギーのない方の中にも、茶のしずく石鹸でアレルギー反応が出てしまったということが報道されています。
このことをどう考えればいいのでしょうか?それは皮膚から何度か小麦由来成分が侵入し続けると、いずれそれに対するアレルギー反応を起こすようになりうる、ということなのです。(医学的には経皮感作と呼びます。)そして経皮感作されている状況で、小麦を摂取すると強いアレルギー反応を起こすことがあります。
では、もともと小麦に対するアレルギーを持っていない大人が、小麦を食べ続けていると、小麦に対するアレルギーを持つようになることもあるのではないか?と思う方もいるかも知れません。しかしそういうことは、まずないです。なぜでしょうか?
それは腸管粘膜では、入ってきた無害な食物に対しては、それを無害なものと認識し、全身的な免疫反応を抑制する機能が備わっているためです。それを経口トレランスと呼びます。
つまり、皮膚と腸管粘膜では、何度も入ってきた食物に対する反応が全く異なり、皮膚ではそれを徐々に敵と認識するようになり、腸管粘膜ではそれを徐々に無害なものと認識するような機能が体が備わっているのです。
今回の茶のしずく石鹸の製作者はそのことを知らなかったのかもしれません。非常に残念です。
ルミキシル(Lumixyl)は新しいシミの外用治療薬です。
ルミキシルは合成オリゴペプチドを含む製剤で、現在、注目されている美白剤です。チロシンキナーゼを阻害することによりシミを薄くします。
シミをとる外用薬というと、ハイドロキノンがすぐに頭に浮かびます。もちろんハイドロキノンも悪い薬ではないのですが、時にその刺激性が問題になります。
つまりハイドロキノンは時に刺激により皮膚に炎症を引き起こし、その結果、炎症後色素沈着という別のシミを作ってしまうことがあります。またそのため、肌がデリケートな方や、かぶれやすい方には使うことができないという限界がありました。
肝斑でお悩みの方は多いと思いますが、肝斑もあまり刺激を与えないほうがいいので、私はハイドロキノンを肝斑の方にお渡しすることはほとんどありませんでした。
その点、ルミキシルは刺激がほとんどなく、肝斑の方も使いやすいと考えられます。シミに対する効果は同濃度のハイドロキノンより強いと報告されています。
以上より、
①今までハイドロキノンを使ってみたが合わなかった。
②肝斑を早く治したい。
③顔全体に淡いしみがたくさんあり、レーザー治療、ハイドロキノンの治療が困難といわれた。
といった方に最適と思われます。
なお、ルミキシルはペプチドでできていますが、アレルギー反応は起こさないのでご安心ください。
シミについて詳しく知りたい方はこちらをご参照ください。
夕方、寒冷蕁麻疹についての問い合わせがあったので、お答えしておきます。
電話ではなかなか伝えることが難しく、自分の口下手さが嫌になることがあります。
寒冷蕁麻疹とは冷水、寒風などの寒冷刺激により誘発される蕁麻疹で、いわゆる物理性蕁麻疹の一つです。寒いところに行くと膨疹(蕁麻疹で特徴的な、蚊に刺された時のようの発疹)が出現します。そのエピソードだけでも診断が可能ですが、さらに氷などを皮膚に10分間当てておけば、そこに蕁麻疹膨疹が現れることで確定診断に至ります。(なかには全身を冷却しないと膨疹が出現しない全身性寒冷蕁麻疹という病気もあります。原因となっている物質が異なるのでしょう)
では、なぜそのようなことが起こるでしょうか?実は明確な理由は分かっておらず、様々な仮説が提唱されているだけなのです。
例えば、皮膚を冷やすことで、何らかの抗原が産生され、それにIgEが反応し、そのIgEを介して、肥満細胞がヒスタミンの放出するに至るという説。つまりアレルギーが関与しているという説。(クリオグロブリン血症に関連した寒冷蕁麻疹も、凝縮したクリオグロブリンを抗原として認識することにより、感作が成立し発症するという説があります)。
また何かの理由により寒冷刺激でIgEが肥満細胞上で凝縮することにより、ヒスタミンが放出されるという、抗原非依存的な機序を提唱している研究者もいます。
そのほか、寒冷刺激により機能するIgG、IgMがあり、それらが抗IgE抗体として働き、マスト細胞上のIgEを凝縮させることでヒスタミンが放出されるという説を唱える者もいます。
つまり①寒さにより何らかのアレルギーの原因物質が産生される(アレルギー説)。②寒さ刺激によるなぜかIgEが凝縮してしまう(アレルギーではないとする説)。③寒くなると機能するIgG、IgMなどがあり、それらがIgEと反応しIgEを凝縮させる(自己免疫説)。
という3つの仮説があります。
寒冷蕁麻疹は数年にわたって続くことが多く、治療は抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬の内服で、なるべく寒冷刺激をさけていただくことになります。
やはり機序をすっきり分かりやすく説明できないのが情けないです。
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