HOME > ブログ > 診療 > 単純ヘルペス感染症に伴う多形紅斑
pagetop

単純ヘルペス感染症に伴う多形紅斑

 単純ヘルペスとは、主に口唇ヘルペスの原因となるウイルスのことで、今までに罹ったことのある人は多いと思われます。口唇ヘルペスに伴って全身に多形紅斑と呼ばれる蕁麻疹様紅斑、あるいは小水疱、標的状紅斑(target lesion)が出現することがあります。
 なぜ、口唇ヘルペスなどの単純ヘルペスに伴ってそのような病変が出現するのか?とよく聞かれますので、ある仮説を紹介しておきます。
 単純ヘルペスにかかると、それを治すために、マクロファージと呼ばれる体内に侵入した外敵を食べる細胞が、単純ヘルペスウイルスを食べてばらばらにしてしまいます。そのバラバラになった単純ヘルペスのDNAの破片が、なぜか遠く離れた皮膚の表皮細胞に堆積します。
 そして単純ヘルペスの感染によって活性化されたT細胞(免疫における司令塔)が、その表皮細胞を標的として攻撃を加えてしまう、という説です。
 この説には、なぜばらばらになった単純ヘルペスのDNAが表皮細胞に堆積するのか?という疑問が生じます。表皮細胞に単純ヘルペスのDNA情報を伝え、ある程度、周囲に活性型T細胞を呼び寄せせることで、単純ヘルペスの拡大を確実に食い止める為でしょうか?そして活性型T細胞が、過剰に表皮を攻撃してしまったときのみ多形紅斑としての症状が出現するのでしょうか?
 そのあたりははっきりとはわかりません。
 そのほか、サイトメガロウイルス、マイコプラズマ、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスの感染に伴って多形紅斑が現れることがあります。

理事長ブログ | 診療 | comments(0) | trackbaks(0)

寒冷蕁麻疹とは

 夕方、寒冷蕁麻疹についての問い合わせがあったので、お答えしておきます。
 電話ではなかなか伝えることが難しく、自分の口下手さが嫌になることがあります。
 寒冷蕁麻疹とは冷水、寒風などの寒冷刺激により誘発される蕁麻疹で、いわゆる物理性蕁麻疹の一つです。寒いところに行くと膨疹(蕁麻疹で特徴的な、蚊に刺された時のようの発疹)が出現します。そのエピソードだけでも診断が可能ですが、さらに氷などを皮膚に10分間当てておけば、そこに蕁麻疹膨疹が現れることで確定診断に至ります。(なかには全身を冷却しないと膨疹が出現しない全身性寒冷蕁麻疹という病気もあります。原因となっている物質が異なるのでしょう)
 では、なぜそのようなことが起こるでしょうか?実は明確な理由は分かっておらず、様々な仮説が提唱されているだけなのです。
 例えば、皮膚を冷やすことで、何らかの抗原が産生され、それにIgEが反応し、そのIgEを介して、肥満細胞がヒスタミンの放出するに至るという説。つまりアレルギーが関与しているという説。(クリオグロブリン血症に関連した寒冷蕁麻疹も、凝縮したクリオグロブリンを抗原として認識することにより、感作が成立し発症するという説があります)。
  また何かの理由により寒冷刺激でIgEが肥満細胞上で凝縮することにより、ヒスタミンが放出されるという、抗原非依存的な機序を提唱している研究者もいます。
 そのほか、寒冷刺激により機能するIgG、IgMがあり、それらが抗IgE抗体として働き、マスト細胞上のIgEを凝縮させることでヒスタミンが放出されるという説を唱える者もいます。
 つまり①寒さにより何らかのアレルギーの原因物質が産生される(アレルギー説)。②寒さ刺激によるなぜかIgEが凝縮してしまう(アレルギーではないとする説)。③寒くなると機能するIgG、IgMなどがあり、それらがIgEと反応しIgEを凝縮させる(自己免疫説)。
 という3つの仮説があります。
 寒冷蕁麻疹は数年にわたって続くことが多く、治療は抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬の内服で、なるべく寒冷刺激をさけていただくことになります。
 やはり機序をすっきり分かりやすく説明できないのが情けないです。

理事長ブログ | 診療 | comments(0) | trackbaks(0)

かぶれについて知っておいてほしいこと

 かぶれのことは皮膚科では接触皮膚炎とよびますが、それは接触皮膚炎には刺激性接触皮膚炎アレルギー性接触皮膚炎に分かれるということを知っておくと便利です。
 刺激性接触皮膚炎は、硫酸、塩酸、ニンニク液、洗剤などが原因であることが多く、それらの化学物質が表皮細胞を直接刺激、傷害して炎症反応を引き起こすことにより発症します。例えば硫酸などは、ある程度の濃度に達すれば誰にでも皮膚炎をおこしますが、それが刺激性接触皮膚の特徴といえます。
 それに対してアレルギー性接触皮膚炎はクロム、ニッケル、コバルトなどの金属、パラベン、チメロサールなどの防腐剤、MBT、TMTDなどのゴム製品加工に用いられる化学物質、漆などが原因で発症し、アレルギー反応が関与して発症します。
 アレルギー性接触皮膚の特徴は、ある物質に対してアレルギーのある方にのみ皮膚炎を引き起こし、そうでない方には皮膚炎を起こさない点です。
 つまり、硫酸などは濃度によっては誰にでも皮膚炎を起こしえます(刺激性接触皮膚)が、ニッケル、パラベンなどは濃度を上げても皮膚炎を起こす人とそうでない人がいる(アレルギー性接触皮膚)、という違いがあります。
 大雑把に言い換えますと、硫酸、塩酸などはある程度以上の濃度になれば、だれの皮膚にとっても有害ですが、ニッケル、パラベンなどはアレルギー反応が起こらなければ必ずしも有害ではないといえます。
 ただし、ニッケルなどはピアスなどに使われていると、いずれそれに対してアレルギー反応を持つようになる(感作される)確率が高いことがわかっており、なるべく避けたほうがいいと思われます。

理事長ブログ | 診療 | comments(0) | trackbaks(0)

手足口病による爪への影響

 手足口病に伴い、爪が脱落したり、爪に横の白い線が出来たりすることが報告されています。(Journal of Pedeatric Dermatology Vol30 No.3手足口病に伴う爪甲脱落症 渡部裕子先生ら)
 爪が脱落するといっても、完全に脱落することは少なく、比較的時間をかけて一部、爪甲と爪床がはがれてしまうことが多いので、それほど痛みないように思われますが、初めて見ると驚いてしまうかもしれません。
 手足口病の発症後、1~2か月後に爪甲脱落症が発症します。ウイルスが直接、爪母を攻撃するからなのか、そのほかのメカニズムがあるのかははっきりしていません。今年の夏に手足口病が大流行したためか、お子さんの爪甲脱落症や爪の横線が増えてきている印象があります。
 特に治療をしなくても爪が生え変われば元に戻りますのであまり心配はいりませんが、もし心配ならご相談いただければと存じます。

理事長ブログ | 診療 | comments(0) | trackbaks(0)

原因不明の皮膚疾患とウイルス感染症の関係

 原因不明の皮膚疾患の発症とウイルス感染症は密接な関係があるようです。
 今週の火曜日に塩原教授の講演会を拝聴し、面白い考え方を聞けたので紹介したいと思います。(もし当ブログに誤りがあったとすれば、すべて花房に責任があります。)
 今回の講演会はDIHSと蕁麻疹の話でした。DIHSというのは重症薬疹の一種で、HHV-6というウイルスの再活性化との関係が指摘されています。臨床像も初期は麻疹と非常によく似ており、ウイルス感染症との関連が常に話題になる疾患です。(中には、DIHSの経過中に免疫が低下するためにHHV-6が再活性化しているに過ぎないと考える医師もいます。)
 蕁麻疹は、7,8割は原因不明で、「ストレス、過労などが原因でないでしょうか?」と原因についてはあいまいに片づけられていることが多いと思いますが、教授によれば、何らかのウイルス感染症が発症の契機になっていることがかなり多いだろうとのことでした。
 その際、EBウイルスやCMVなどが発症の契機になっている場合は、蕁麻疹の経過中に肝障害がみられるとの話がありました。
 私は成人Still病とウイルス感染症の関係について質問しました。成人Still病というのは

  1. 発熱(39℃以上、1週間以上持続)
  2. 関節痛(2週間以上持続)
  3. 定型的皮疹
  4. 白血球増加(10000/μl以上、好中球80%以上)

 を大基準とし、フェリチン高値、肝機能障害などを特徴とする疾患です。成人Still病は感染症を除外しなければ、そう診断することはできない疾患なのですが、教授によれば、やはりウイルス感染症が発症に関係している可能性がかなり高いとのことでした。
 ではなぜ蕁麻疹や成人Still病ではウイルス感染症との関係をはっきりと示せていないかというと、それはウイルス感染症を血液検査でとらえ、証明することはかなり難しく、保険治療の範囲でその血液検査を行うことは不可能であることが関係しています。つまり再活性化したウイルスを、再活性化しているときに採血しなければならず、それがいつなのかわからなければ、何度も採血をしなければなりませんが、それは保険治療では認められていないのです。
 その他、ウイルス感染症が発症の契機になっている可能性のある疾患としては、今、ぱっと思いつくだけでも、多形紅斑、尋常性乾癬、アナフィラクトイド紫斑、膠原病の一部、扁平苔癬、ジベルばら色粃糠疹、など多数あげられます。
 さらにウイルスと免疫に関する研究が進めば、これらの疾患の発症機序がよりはっきりとわかるようになると思われます。そしていつの日か治療にいかせるようになることを期待したいと思います。

理事長ブログ | 診療 | comments(0) | trackbaks(0)
  • おおしま皮膚科
  • 小島内科クリニック

※掲載内容・料金は更新時点での情報の場合がございます。最新の内容、料金は各院へお問合せください。