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掻くことによる皮膚の影響

 外来中、患者様には「皮膚を掻かないでください、擦らないでください」とよくご説明させていただいておりますが、その理論的根拠を少し述べたいと思います。
 まず掻くことにより角質層が痛み、アレルゲン(アレルギーの原因物質)、微生物の通過を許してしまうことが一つあげられます。それについては何度か書いたことがあるので、今回は割愛させていただきます。
 そのほかにも、掻くことで表皮細胞が傷害され、サイトカインと呼ばれる伝達物質が放出されます。サイトカインによってさまざまな免疫細胞が寄ってきて炎症が起こり、皮膚炎が増悪してしまいます。
 そのほかにも、掻くことにより、末梢神経の求心性C線維と呼ばれる部位からサブスタンスPと呼ばれる物質が放出され、マスト細胞に作用し、ヒスタミンが分泌されます。その結果かゆみが増してしまいます。さらにサブスタンスPは血管拡張作用、血管透過性亢進作用もあり、炎症を悪化させてしまいます。
 それが、よく言われている「掻くことにより痒みが悪化する」ことの病態を表していると思います。
 どうしてもかゆいときは、掻かずに、保冷材などで30秒ほど冷やしていただきたいと思います。そうすればたいていのかゆみは一時的に収まると思います。
 余談になりますが最近、サブスタンスPはストレスにより放出されやすくなるのではないか?といわれるようになりました。それが正しいとすると、「ストレスにより、掻く行動が助長され、結果的に皮膚炎を増悪させる」ことの病態の理解につながります。(もちろんストレスが皮膚に与える影響は、ホルモンの変化など様々な角度から分析しなければならないのですが)。

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