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慢性痒疹診療ガイドラインについての感想②

 慢性痒疹診療ガイドラインについての続きです。
 今回は主に治療についてです。内科的な基礎疾患から慢性痒疹が発症している可能性が高い場合は、基礎疾患の治療が最優先されるのは言うまでもありませんが、まずはアトピー性皮膚炎などと同様にスキンケア、生活指導を行い、ステロイド外用を行うように推奨されています。
 ステロイド外用は、推奨度B(行うように勧められる)となっておりおます。ただ慢性痒疹はなかなかスキンケアとステロイド外用だけでは良くならない症例が多いのが特徴で、その場合にどうすればいいか?というのが最大の問題であります。
 その他の治療についての推奨度ですが、
推奨度C1(行うことを推奨してもいいが、十分な科学的根拠はない)
・ステロイド局所注射、ステロイド内服、亜鉛華軟膏重層
・抗ヒスタミン薬の内服
・液体窒素療法
・活性型ビタミンD3外用薬
・鎮痒性外用薬(オイラックスなど)
・紫外線療法
・免疫抑制薬外用(プロトピックなど)、内服(ネオーラルなど)
・カプサイシン軟膏外用
・保湿剤外用
・漢方薬内服
推奨度C2(科学的根拠がないので、勧められない)
・抗生剤内服、抗不安薬内服
推奨度C1~C2(適応を絞ればC1ということなのでしょうか?)
・サリドマイド内服
・ナリフラフィン塩酸塩(レミッチ)内服
となっております。つまりほとんどの治療は横並びに、十分な科学的根拠がないということになります。そうすれば、副作用少なく、保険適応のものから順番に試していくしかない、ということになり、ややガイドラインとしては味気ない印象をうけてしまいます。それだけ難しい疾患ということもできると思いますが。。。
 推奨度C1~C2といったあいまいな推奨度を作るくらいでしたら、もう少し症例を詳しく分類し、例えば、70歳以上の方で、慢性痒疹を患って3年以上経過している方に対しては、○○治療は推奨度Bというようにしたほうが、臨床には役に立つようにも感じられます。
 当院では、スキンケアの徹底(擦らない、掻かない、洗いすぎない、刺激の強い洋服を着ない、部屋を乾燥させない等)、ステロイド外用、保湿剤の塗布を原則とし、抗ヒスタミン薬も2週間ほど試していただき、効けば継続としていただいています。
 それでもあまりよくならない方がいらっしゃるのも事実で、その場合は、紫外線治療や液体窒素療法などを行っております。紫外線療法の一つであるナローバンドUVBはクリニックに頻繁に通える方であれば、かなり効く印象を持っております。液体窒素療法は、結節性痒疹の数の少ない方であれば、有効なように感じます。逆に結節性痒疹の数の多い患者様には液体窒素療法は苦痛が大きいだけであまり効かない印象を持っております。もともと体力があり、恰幅のいい方には、漢方薬の黄連解毒湯が著効する場合もあります。掻きむしって眠れないという患者様には短期間、抗不安薬や睡眠導入薬をご処方することもあります。

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慢性痒疹診療ガイドラインについての感想①

 今月の日本皮膚科学会雑誌に慢性痒疹診療ガイドラインが掲載されていますので紹介させていただきたいと思います。
 同ガイドラインでは、慢性痒疹を結節性痒疹と多形慢性痒疹に分類しております。当院でもたくさんの結節性痒疹、多形慢性痒疹の患者様がご来院されています。
 同ガイドラインでは、「掻痒が特に強い例、皮疹が広範囲に及ぶ例、治療に抵抗性がある例、きわめて難治で慢性に経過する例では、内科的疾患から皮疹が出ている可能性を考え、全身検索を勧める、詳細な問診、適切な血液検査、画像検査などを行う」と明記されております。
 これまでは治療抵抗性でかつ重度の慢性痒疹の患者様に対しては全身検索を行う、というのが標準的と考えられていたように思うのですが、それから一歩進んで、重度の慢性痒疹の患者様には、初めから全身検索を行うように推奨されています。
 高尿酸血症、糖尿病、甲状腺異常、血液疾患、腎肝機能障害などに伴い慢性痒疹が出現することは有名事実なのですが、どのタイミングで採血を行うかは、かなり微妙なところで、私も悩むことが多かったのです。今後は、重度の慢性痒疹の患者様は、初診時から採血をする必要があるかもしれません。健康診断のデータをお持ちなら、持ってきていただいたほうが便利だと思います。
 治療については、後日紹介したいと思います。

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アレルゲンはなぜアレルゲンになるのか?

 アレルギーの原因になりやすい物質があることがわかっていますが、なぜアレルギーになりやすい物質があるのかについては、恥ずかしながらあまり意識したことがなかったのですが、面白い文献があったので報告しておきます。(実験医学Vol.27 No.20 アレルギー研究の最前線 高井先生)
 ダニの死骸や排泄物はアレルギーの原因として最重要のものの一つですが、それらは単に人に接する機会が多いために、アレルギーの原因なりやすい、というわけではないようです。それらのアレルギー物質はそれ自体、上皮細胞同士の結合組織を破壊し、皮膚のバリア機能を弱める働きがあるようです。さらにそれらは、角化細胞を刺激し、炎症性サイトカインの産生を促すなどし、免疫系をかく乱したり、好酸球を活性化しアレルギーを起こしやすくする働きもあります。
 思えば、人の皮膚はありとあらゆる物質と接しており(細菌、真菌、ウイルス、汗、水、食材、花粉、線維、金属、ゴム、クリーム、香料、香水、石鹸、空気、薬剤、塗料など)、その中で、構造上アレルギーの原因となりやすいものがあることは知られていますが、それにはそれなりの理由があると考えたほうがいいかもしれません。その理由はそれぞれの物質によって異なるので、いずれまたご紹介したいと思います。

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目の下のクマの治療

 目の下のクマで悩まれている方は非常に多いようです。
 クマは、色素沈着による場合と、皮膚のたるみに伴って影ができている場合、その両方の場合があります。
 すこし皮膚を引っ張り、影がない状態を作り、それでもクマがある場合は色素沈着で、そうでない場合は影によるクマということになります。
 色素沈着の場合は、炎症後色素沈着である場合と、肝斑の類縁疾患である場合があります(後者は日本人には稀ですが)。炎症後色素沈着は擦過による慢性的な刺激によっておこっていることがほとんどなので、擦過をやめ、きちんとスキンケアすることで徐々に良くなっていきます。(少しくどいようですが、眼周囲を擦る癖のある方は非常に多いのです。)肝斑の類縁疾患である場合にはトラネキサム酸の内服と、保存療法を行います。
 皮膚のたるみに伴って影ができている場合は、下眼瞼の余っている皮膚を切り取るか、頬骨直上にヒアルロン酸を注入し、皮膚を膨らませる治療を行います。
 頬骨直上にヒアルロン酸を注入し、そこにボリュームを持たせれば顔全体が若々しくなりますし、侵襲も非常に少なく、簡便なので(数分で治療が終わります)、ヒアルロン酸による治療の機会が増えています。
 症例写真を少し公開していますので、もし宜しければご参照ください。
 https://mitakahifu.com/photo/

クマについて詳しく知りたい方はこちらをご参照ください。

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ストレスと擦過行動

 ストレスがホルモンや白血球の機能に影響を与え、皮膚に影響を与えるということは以前ブログでも紹介しました。しかし臨床的に最も問題になるのはストレスに伴う擦過行動かも知れません。
 ストレス下に置かれていると些細な痒みが気になったりします。私も勤務医時代に当直時に蚊に刺されただけでまともに眠れなくなった経験があります。当直時というストレス下において蚊に刺された程度の痒みでもすごく気になってしまいます。また暇な時間に少しでも眠らなければいけないというプレッシャーのもとでは、睡眠を妨げる痒みがイライラの原因になってしまい、激しく掻いてしまいます。掻いてしまえば表皮細胞からたくさんのサイトカイン(炎症細胞を呼び寄せるなどの機能を持つ伝達物質)が放出され、また神経からサブスタンスP(肥満細胞などに作用し、ヒスタミンなどの痒み物質の遊離を促す)が放出されることにより、痒みが一層ひどくなってしまいます。また掻くことで、角質が痛み、さらに外からの刺激を受けやすくなってしまいます。結果、痒みが増し、イライラの原因になって、さらに掻いてしまうしまうという悪循環に至ってしまいます。そして、ゆっくり寝ることができなければ、翌日さらにストレスが増してしまいます。私もその当直の翌日薬を付けられるまでの間に何度も掻いてしました。
 このような状況はそれほど特殊なものでもなく、かなり多くの患者様が同様のストレスと痒みの伴う皮膚疾患(慢性湿疹、アトピー性皮膚炎、結節性痒疹、慢性単純性苔癬)の悪循環に悩まれているようです。その場合は、すこしでもゆっくりとお休みできるように、軽い睡眠導入剤などを短期間処方されていただくと、症状が著効することがあります。
 
 

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