アゼライン酸クリーム20%がロート製薬より発売され、日本でも使用しやすくなりました。酒さにも効果的と期待している人は多いのではないでしょうか?このクリームの酒さに対する効果を報告したいと思います。
酒さには複数のタイプがあり、
1期 紅斑毛細血管拡張型(一過性紅斑型、持続紅斑型も含む)
2期 丘疹膿疱型
3期 鼻瘤型
そのほか眼型などもあります。
◼︎2期 丘疹膿疱型酒さに対して
丘疹膿疱型酒さは顔(主に頬)の赤みとニキビのようなブツブツが目立つタイプの酒さです。
アゼライン酸クリームが最も効果的なのはこのタイプの酒さです。
アゼライン酸クリームの酒さに対する効果は古くから知られており、デモデックス(ニキビダニ)に対する殺菌効果、抗炎症作用、抗酸化作用などが関係しているのではないかと考えられています。
Stein Gold L, Kircik L, Fowler J, et al. Long-term safety of ivermectin 1% cream vs azelaic acid 15% gel in treating inflammatory lesions of rosacea: results of two 40-week controlled, investigator-blinded trials. J Drugs Dermatol. 2014;13:1380–1386
によれば
丘疹膿疱型の酒さに対するイベルメクチンクリーム1%とアゼライン酸クリーム15%の比較試験では、40週の治験でイベルメクチンクリーム1%は71%-76%、症状消失、ほぼ消失となっているのに対して、アゼライン酸は60%弱とイベルメクチンクリームの方が効果が高かったと報告しています。これはほかの論文のとも概ね合致するデータです。
ちなみにアゼライン酸(15%もしくは20%)とメトロニダゾールゲルの比較して試験では同等、もしくはアゼライン酸の方が効果は高いというデータが多いです。
別件ですが、
Taieb A, Ortonne JP, Ruzicka T, et al. Superiority of ivermectin 1% cream over metronidazole 0.75% cream in treating inflammatory lesions of rosacea: a randomized, investigator-blinded trial. Br J Dermatol. 2015;172(4):1103–1110. doi: 10.1111/bjd.13408.
によるとイベルメクチンクリーム1%はメトロニダゾールクリーム0.75%よりも効果が高かったと報告されています。
これらの結果より、丘疹膿疱型酒さに対する治療薬として、外用薬ではイベルメクチンクリームが最も優秀で、日本でも早く使用できるようになることが望まれます。
丘疹膿疱型の酒さに対しては日本では抗生剤の内服、外用が保険適応で治療可能ですので、補助的にアゼライン酸クリームを使う、もしくは改善した後の維持期にアゼライン酸クリームを使用するという方法を推奨したいと思います。
◼︎1期 紅斑毛細血管拡張型(一過性紅斑型、持続紅斑型も含む)に対して
酒さの中でも最も治療の難しい紅斑毛細血管拡張型の酒さの場合、アゼライン酸クリームが効果的との報告は少なからず存在し、その赤みを軽減させうる可能性はあります。
ただし、アゼライン酸クリーム単剤で赤みや火照りが十分に消失することはほとんどありません。アゼライン酸が著効しうるのはあくまで丘疹膿疱型のタイプに限られ、紅斑毛細血管拡張型酒さに対してはあくまでマイルドに赤みを軽減させる程度です。
その作用機序ですが、
Effective and evidence-based management strategies for rosacea: summary of a Cochrane systematic review.
van Zuuren EJ, Kramer SF, Carter BR, Graber MA, Fedorowicz Z
Br J Dermatol. 2011 Oct; 165(4):760-81.
によるとアゼライン酸クリームはカリクレイン5とカテリシジンの発現を抑えることで酒さの炎症を抑え、結果的に赤みを抑えると考えられています。
ただ、海外では紅斑毛細血管拡張型酒さに対する外用薬はブリモニジン(Brimonidine)外用薬というアドレナリンα2受容体作動薬がメインになりつつあります。こちらも日本で早く使用できるようになることが望まれます。
例えばオランダではブリモニジンから治療をスタートしそれが無効ならばIPL(フォト)かレーザー、補助的にアゼライン酸などを使うという方法が推奨されています。
日本ではブリモニジンが使えないのでIPL(フォト)かレーザーから治療をスタートし、補助的にアゼライン酸かメトロニダゾールゲルを使うといいでしょう。
◼︎まとめ
アゼライン酸クリームは丘疹膿疱型の酒さに対しては補助的に使うと良い。紅斑毛細血管拡張型酒さに対しては効果が十分と言えず、ほかの治療と組み合わせて用いると良い。
酒さというのは赤ら顔をきたす代表的な疾患で、近年、本邦でも増えてきている、と言われる病気です。
顔の繰り返すほてりが見られます。ほほや鼻、あご、額、眉間に症状が出やすいです。首などにもほてりがでることもあります。
第1病期
紫外線や飲酒、寒暖の差などの刺激で、顔のほてり、赤みが数時間〜数日間持続します。ヒリヒリとした刺激間が出ることも多々あります。
第2病期
ニキビに似た発疹が突然現れ、数週間持続します。
第3病期
鼻が赤く腫れ、ニキビのようなしこりが見られてるようになります。放置した場合、鼻瘤(団子鼻)が見られるようになります。
いずれも以下のような要因で増悪します。
■紫外線熱(急に厚いところに行くことなど)
■寒気(逆に急に寒いところに行くと増悪することもあります)
■アルコール摂取刺激物の摂取
■熱い食べ物の摂取
■激情
■刺激の強い化粧品など
原因ははっきりしていませんが毛穴に生息するニキビダニや慢性的な化粧品かぶれが関係している可能性が指摘されています。MMP-1, -3, and -9 といったタンパク質、抗微生物ペプチドの一つであるLL-37が関与しているとも言われています。
それに伴いアルツハイマー病などの認知症、パーキンソン病といった神経疾患と合併頻度が高いことも指摘されています。
ステロイドを使って、同様の症状が出た場合は酒さ様皮膚炎と呼ぶ場合が多いです。
酒さ様皮膚炎の場合は、ステロイドを中止することで改善していくことが多いのですが、酒さの場合は、ご自宅でのスキンケアだけで改善を見込むことは難しく、医療機関での治療が必要となります。テトラサイクリン系の抗生物質の内服や、外用薬、フォト治療、レーザー治療などが必要となります。
フォトやレーザー治療、一部の外用薬は保険適応外となります。
酒さでお困りの方は当グループにご相談くださいませ。
鼻瘤、酒さ3期とも言われる疾患ですが、酒さ1期、2期とは異なる特徴のある疾患です。
通常、酒さは女性に多く、頬を中心に顔が赤くなったり、ニキビのような発疹ができたり、顔がピリピリしたりするのが特徴ですが、鼻瘤(酒さ3期)だけは異なった特徴があります。
それは
・男性に多い
・鼻、鼻周りのみ症状が強い
・鼻が変形してくる
・ピリピリ感は少ない
といった点です。
それらの相違点から酒さ3期は酒さ1期、酒さ2期とはやや異なった疾患であるという考え方もあります。
治療法は比較的似ており、抗生剤の内服や、外用、レーザー治療といったものを組み合わせて行います。
ただ、鼻瘤(酒さ3期)がその他の酒さと決定的に異なるのは、鼻が変形してしまった場合、外科的治療なしには、治らない、という点が挙げられます。
すなわち、鼻の変形をメス、電気メス、炭酸ガスレーザーなどで切り取ってしまう必要があります。
そのようなことをして、鼻に大きな瘢痕、傷跡ができるのではないかと心配になる方もおられると思うのですが、実はそのリスクは意外に低く、二週間程度で傷が塞がり、通常、想像されるよりも傷が綺麗に治るのが特徴です。
鼻瘤(酒さ3期)の患者様は、鼻に皮脂腺が通常よりもはるかに発達しており、それにより傷の治りが良くなっているためです。
鼻が変形して、困っている、という方は試してみる価値のある治療と考えています。
鼻瘤手術:1回348000円となります(半年間、レーザー治療を何度行なっても追加料金はかかりません)。
お困りの方はお気軽にご相談くださいませ。
瘢痕形成、一時的な痛み、出血、色素沈着
酒さでお悩みの患者様です。フォト治療3回で赤みが顕著に少なくなっています。
ただ単に赤みが取れているだけでなく、お顔のむくみがとれすっきりしてきているのが分かるかと思います。これはダイエットをされたからというのではありません。酒さの方というのは、慢性的な炎症のためむくみが出ており、治療が進んでいくと、ぴりぴりとした違和感や、火照りなどとともにむくみが引いていく事も多いです。
酒さでお困りの方はお気軽にお問い合わせください。
お顔(ときに首まで)に赤み、火照り、ぴりぴり、ニキビ様発疹といった症状を引き起こす酒さという疾患が増えてきているようです。
皮膚科医の集まりでも、「なぜか酒さの患者さんが増えている」と耳にする事が多くなりました。
原因についてははっきりしませんが、酒さという疾患が認知されてきているのが大きいようです。
酒さはすぐには治らない病気で、大いに悩んでいる方が多く、当院でも遠くは盛岡などから受診される方もおられました。ある種の抗生剤の内服やタクロリムス外用で改善が見込めますが、それでも改善が十分でない場合は、色素レーザーや当院で導入しているフォト治療(アイコン)などでさらに改善させる事が可能です。
治療はそれほど難しくはないのですが、なかなか診断にたどり着かない、という問題点があるようです。
脂漏性皮膚炎、化粧品かぶれ、アトピー性皮膚炎、ニキビ、光線過敏症などと間違えやすいといわれています。
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